第11話 自己紹介

 適当に座ってくれ、と言われたのでとりあえず壁に寄りかかって座っておく。すすす、とその隣にゆかりが滑らかに座ってくる。


 霧矢や直樹はやはり、俺の読み通りあの一瞬で仲良くなったのか、二人仲良く部屋の真ん中辺りで胡座をかいて座った。


 何故か知らんが、金髪ニンジャ変人の浩紀は、足音を立てないで、俺から2メートルくらい離れたところで、座らずに壁に寄りかかる。最初からいた女の子は、その場から動かずに俺たちとは反対方向に正座で座っている。


「よし、揃ったところで改めて自己紹介だ。俺は今回、お前ら全員の面倒を見ることになった須貝尚久すがいなおひさだ。ここにいる全員、適正検査にて著しい結果を残し、自衛隊最高戦力の俺たち────つまり、自衛隊の中でもレベルが上のやつらを倒した、日本最高戦力の六人だ」


 倒した?と聞いて思わず反対方向にいる女の子へと目が向いてしまう。


 俺達に我関せずといった感じで、目を閉じている少女。顔立ちから、恐らく年齢は大学生くらい。亜麻色の髪をツーサイドアップにしており、こちらもゆかりに劣らず中々の美人顔。到底、あの屈強な自衛隊を倒したとは到底考えられない。


「これからお前達は、この皇居に駐在する自衛隊や、警官と合同で、ダンジョンに挑むためにレベル上げと、スキル強化を行ってもらう。何か質問は?」


「……じゃ、俺から一つ」


 誰も手をあげようとしないので、少し俺から質問────というか、確認事項を一つ。


「御神楽か。いいだろう」


「これからやる自衛隊達との合同レベリングですが、別に俺が全員鍛えてもいいんですよね?」


 流石にメインはこの五人になるだろうが、ある程度の人数であれば、自動的にレベリング作業を行える方法がある。それを知っている霧矢は、「おめぇまじか」みたいな顔をこちらに向けている。


「ふむ、お前が……か?確かに、御神楽の実力はこの中でも一回りも二回りも上だが……」


「なら、一ついい情報を教えましょう。須貝さんを1on1で圧倒した霧矢は、俺が育てあげましたよ」


 現在の霧矢の実力は、異世界基準で考えるとまぁまぁ中堅といったぐらいだが、そのくらいあれば下手に死ぬことはない。


「………それはありがたいが、申し訳ないが俺の一存で今すぐには決められんな。上に話は通しておこう」


「それさえ分かれば充分です」


「すまんな。早ければ明日には返事が帰ってくるだろう。他にいるか?居なければ、部屋の用意が出来次第、お前たちを呼びに来るから、その間に自己紹介でも済ませておけ」


 そう言って、部屋を出ていった須貝さん。その瞬間、ささささと正座中の彼女以外がこちらに寄ってきた。


「なぁなぁ、この間に雉を撃ちに行ってきてもいいかな?」


「なぜ俺に聞く。あとなんでこっち来た」


「某が案内するでござるよ」


「お、サンキューニンジャ」


「にんにん」


 服部が、直樹を連れて部屋を出た。恐らくだけど、アイツら戻ってくる時には仲良くなってるだろうな。問題は────


「……おい、霧矢」


「お、おう」


 ────なんか知らんけど、謎に緊張をし始めた霧矢である。さっきまでは普通だったよな?なら一体何が…………あ(察し)、ふーん。


「お前、あの人に話しかけに行ってくれば?」


「なっ、ばばばば!無理無理無理!!」


 原因判明。そうか、あの女の人、霧矢の好みどストライクなんだわ。


 仕方ねぇなぁ……俺がキューピットになってやんよ!


「ほら行ってこい」


「無理無理!」


「行かないと今日の訓練滅多刺しにするぞ」


「行ってきます!!」


 ヨシ!(現場猫)右手と右足を同時に出して移動する霧矢を後方腕組みキューピット面をしながら見守る。すると、クイクイっと袖を引かれ、何事かと思うとゆかりがぷくーっと頬をこちらを見ていた。


「………どうしたの」


「あまり、放置しないで欲しいのだけれど」


「ゆかりも仲良くすればいいじゃん。良い奴だぞ、霧矢も」


「各務くん以外の下郎は、あまり信用出来ないわ」


 なんでそこまで俺は信用されてるんですかね……?そんなあのチャラ男から庇ったのがクリティカルだったのか……?


「……おい。おい、各務」


「ん、どうした」


「……………」


 こらこら。そんな霧矢の事を睨むでない。会話の邪魔されて不服になるのは分かるけど。


「……あの人、寝てるんだわ」


「「は??」」


 え、ずっと目を閉じてるなーとは思ったが、まさか寝てたのか?この状況で?


「いやいや……そんなまさか……」


 女性に近づき、膝を着いてから少し耳を傾ける。


「……むにゃむにゃ……もう食べられませ~ん……」


「………………」


 な、なんてベタな……。



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