第10話アイエエエエニンジャ

 向こうのやり取りを、耳をぴくぴくさせながら聞くのを辞め、改めてゆかりを見る。


 大胆にも、肩から二の腕までが見えている、少しフリフリ度の高い涼しそうなワンピース。


 凄く凄い似合っていると思う。


「今日はいつにも増して綺麗だな。君に会えて光栄だよ」


「…………………っ」


「え、アイツ今口説いてなかった?」


「でもあいつ、可愛いものにはキチンと可愛いって言うタイプだぞ……でも、なんか余計な一言が追加されてるな」


 あら、顔を真っ赤にして。薄々思っていたけど耐性低いなこの子。言われ慣れてるもんだと思っていたが。


「………あー、そろそろいいか?」


「あ、自衛隊のひと」


 各々が友好を深めていると、見た事のある迷彩服を来た人が、申し訳なさそうにのそのそと現れた。というか、俺たちの適正検査の相手をしていた自衛隊の人である。


「おうお前たち。久しぶりだな」


「一応聞くけど、霧矢もあの人と戦ったのか?」


「おう。あの人だったぜ」


「なんだお前たち、知り合いだったのか」


 俺が霧矢に尋ねると、自衛隊の人は目を見開かせた。


「Fグループの適正検査の相手は、全て俺が担当した。その中でも、とりわけ印象に残ったのはお前さん達だ……一人にも負けない自信があったんだけどなぁ」


「俺と霧矢は完全イレギュラーと捉えても問題ないと思いますけどね」


 俺は異世界勇者だし、霧矢はこの世界で初めて勇者の指導を受けた弟子だし。


 自主練でもレベルが上げられるのは、ゆかりとのメッセージで知ってはいたが、それでも上昇値は低い。今までずっと対人……対物?まぁ相手とやり合っていた霧矢のレベルが高いのは当然だろう。


「お前達がいれば、この日本も安泰だな────ついてこい。他に招集された人も、もう集まっている」


 その後、自衛隊の人に案内され、全員が皇居内にオドオドしながら歩くこと五分ほど、やけにめちゃくちゃ豪華な部屋に案内された。


「ここどこ?」


「ここは、皇居でも御所と呼ばれる場所で、広間だ。これからは、お前達の休憩場所として使われる。よし、これで全員そろ────お?」


「………一人しかいないっすね」


 今回、メールが正しければこの場に呼ばれたのは六名のみ。うち、四人が今しがたここに着いたので、この広間にいるのは必然的に残りの二名となるのだが……一人しかいないな?


 いや、居るにはいるが……これ隠れてんな。気配を消すのが上手いのが────ん?


 違和感。チラリ、と上を向くと、天井に逆さまになって立っている金髪の男と目が合った。


『ちょっと黙っててくれない?OK?』


『OK』


 そんな意味が込められたアイコンタクトで会話。ちょうどいいし、そろそろ霧矢にも気配感知が出来るようになってもらうか。


 というかアレ忍者?あんな状態で立っているシーンとかアニメでしか見たことねぇぞ。


「霧矢。気配感知だ。隠れているもう一人の忍者を見つけてみろ」


「え、この場所で?……てか忍者?」


 アイエエエエと小声で言いながら目を閉じる霧矢。むんむんむん……と眉間に皺を寄せながら、頑張って気配を感じようとしている。


 普段は、霧矢に目を瞑って貰う状態で、真剣白刃取りをしてもらっている。未だに成功例はゼロ回であるが、もうそろそろできそうな気がする。


 だが、ここはいつもと違う環境と条件でやってもらうことにしよう。


「うーん……確かに、気配はする……?だがどこだ……………あ、これか?」


 霧矢が上を向いたら、皆が上を向く。


「お見事でござる!」


「うおっ!ガチの忍者だ!!??」


 とうっ!天井から離れ、空中で一回転した後にスーパーヒーロー着地を決めた忍者。なんかキャラ濃いやつが現れたな……。


「……服部。やるならやるで連絡を入れろ。少し心配したぞ」


「あいや、それは失礼したでござる教官殿」


「……金髪で忍者口調とかそこはかとなく似合わないあれ」


「………フフッ」


 せめて某青の監獄サッカー漫画のキャラのように、挨拶ぐらい見た目通りに「ちゅーす」とかにしとけ。俺以外の男に対してヒエッヒエなゆかりでさえ笑ってんだぞ。


「某、服部浩紀はっとりひろきでござる。よろしく頼むでござるよ。主殿」


「…………………………………え、俺?」


 なんか初対面のやつに主認定されたんだけど。何事???直樹より距離感の詰め方エグイな????


「………ごほん!挨拶は後にしておけ。今からこれからのことを説明する」


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