第9話 皇居へ

 あの後、見ていた人たち全員から拍手を貰った俺たちは、検査終了後近くのファミレスでご飯を食べ、連絡先を交換してから解散した。


 応募者全ての検査が終わり次第、今回の結果に応じた処遇がメールによって知らされるらしい。まぁ間違いなく、自衛隊の人を倒した俺達は最高評価だと思うが。


 ちなみにだが、次の日に行った霧矢は真正面からぶつかり合って圧勝だったらしい。まぁレベル50オーバーで負ける方が難しいがな。


 ウザイくらいに自慢してきたので、その後デコピンだけで叩き潰したのはご愛嬌である。


「準備終わったか?行くぞー」


「おーう」


 そして、検査終了から1週間後────ダンジョン発生5日前に、俺と霧矢は揃って招集されたのであった。


 限界ギリギリまで霧矢のことを追い詰め、現在の霧矢のステータスはこんな感じである。


 名前:片原霧矢

 種族:人間

 レベル:97

 攻撃:105

 防御:159

 魔力:0

 知力:85

 耐性:98

 素早さ:120

 スキル:双剣術レベル5、物理耐性レベル3、氷属性耐性レベル4、体力自然回復、気力集中、魔刃


 魔力は魔法が使えないために永遠に0であるが、それ以外は軒並みに上昇している。若干防御の割合が高いのは、常に格上の相手と戦っているからか。


 とまぁ、明らかに俺を除いた人類では最強と言えるほどの力は持っただろう。これで、余程のことがない限りは安全なはずだ。


「楽しみだなー、


「ホントに、わざわざ場所を貸してくれるなんて、懐が広いお方だわ……」


 そんな俺たちがメールにて呼ばれた場所は、なんと『皇居』である。俺含む6人の選ばれし一般人が、ダンジョンが発生するその日まで、強化合宿を行う予定となっている。


「ま、これから五日間────参加するであろう知り合いの超絶美少女に鼻を伸ばせないくらいしごいでやるから、覚悟しとけ」


「…………………………うへぇ」












「お待ちしておりました、御神楽様、片原様」


「「………………………」」


 俺達が指定された人気のない公園につくと、そこにはテレビでしか見たことがないリムジンが佇んでおり、執事っぽい人が俺達を待っていた。


 流石の俺でも、この光景に思わずぽかんとしてしまい、気付けば促されるままにリムジンへと乗っており、皇居へと出発していた。


「うおっ……ヤベェ!おい各務!シートめっちゃふかふか!」


「おいバカ。あんまはしゃぐなよ」


 しばらくは緊張でガチガチになっていた俺たちだが、時間が経つにつれリラックスしていき、霧矢は靴を脱いで横になり始めた。


「ふわぁ……昨日、緊張してあんま眠れなかったから、少し眠くなってきたな……」


「だったら寝ておけ。予定には、天皇である明久様との会食が予定されている……もし寝たら、末代までの恥だぞ」


「おやすみなさい」


 すやぁ、と速攻で寝息を立て始める霧矢。俺ら以外の唯一の同乗者でありながら、運転手でもある執事さんに「親友がどうもすいません」と言うと、ふぉっふぉっふぉっと返された。


 どうやら許されたようだ。


 少しほっとしたのも束の間、スマホでも弄って時間でも潰そうかなと考えたその時、ポコンと通知が届く。


『わたしは既に皇居に到着したわ。各務くんはあとどれ位でつくかしら?』


『俺らはさっきリムジンに乗ったとこ。後30分くらいで着くよ』


『分かったわ。逢えるのを楽しみに待っているわ』

『違うの』

『会えるのを、楽しみにしているわ』


『ふむ………?』

『まぁ、俺も楽しみにしてるよ。ゆかり』

『また後でな』


『えぇ、また後で』


 どうやら誤字ったようだ。誤字の割には訂正がめちゃくちゃ速かったような気もしたが。


 その後、五分後に直樹からも連絡が来た。『相変わらず、水瀬さんからの下郎呼びキツイぴえん』と若干気色悪いメッセージが届いたため、『しらね』と返しておいた。


 そして三十分後、遂に皇居へと辿り着いた。


「ここからは別の案内人がおりますゆえ、私はここまでです」


「ありがとうございました執事さん」


「いえいえ。それでは、行ってらっしゃいませ」


 ぺこり、ともう一度二人揃って頭を下げる。案内人とはだれかな────っと。


「各務くん!」


 ふわり、と何かが俺に近寄ってくるのを感じ取った瞬間に、花の香りを纏わせながら突進してくる濡れ羽色の少女。


 そこまで何か好感度稼いだことしたっけ……?と思いながらも、美少女からの抱きつきはぶっちゃけご褒美以外何物でもないので、優しく受け止める。


 くるり、と一回ターンしてから地面に下ろした。


「久しぶりだな、ゆかり」


「各務くん……あなたに会えない日々は本当につらかったわ……えぇ……本当に……とっても……」


 おや……?心なしか言葉の節々に何やら恨みのようなものを感じる。


「………ほう?あんなに女っ気がなかった各務に、どこともしれない何故か好感度MAXの超絶美少女……?」


「一応、俺も知り合いのはずなんだけどなぁ……?あ、君が御神楽が言ってた親友?俺、西条直樹。よろしくな」


「え、初対面で肩組んできたんだけどこの人……距離の詰め方エグ……」


 ほら言われてんぞ直樹。あの時俺に言ったのは特大ブーメランだったろ?

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