第7話 適正検査

「いいなー!!!俺もそれ欲しい!!」


「感性が小学生かよ」


 持っていた武器を優しく棚に戻したあと、超高速で俺の元へ戻ってきた直樹。


 あれだ。霧矢と少し似ている気がする。こいつら出会ったら仲良くなりそーだな。


 直樹のスキル『万能装備レベル1』というのに合わせて、氷で武器を作っていく。


 しかし万能装備……万能装備か。一体どういう能力なんだこれ。謎すぎて全くもって想像がつかねぇ。とりあえず、俺の趣味全開でハルバードを作っておく。「ふおおおおお!!」と目を輝かせていたので、どうやら正解だったようだ。


 さてと、俺の武器はどうするかな。いつもは無限の武器庫から適当に射出しながら、俺も近距離戦を仕掛ける『なんちゃってゲートオブバ○ロン戦法』をやっているのだが、今回それをやるのはあまりにもオーバーキルすぎる。


 しょうがない。剣を3つくらい作ってから浮かせておくか。皆の戦闘が優位になれるように、後方支援に徹しよう。


「……一名武器を構えていないやつもいるが……まぁいいだろう。好きなようにかかってこい」


 え、作戦立てる時間も無しで?と思った瞬間、直樹に挨拶されて無視した二人が自衛隊に向かって飛び込んだ。


「あ、おい!あほちん!」


 作戦も連携も無しに突っ込むやつがあるか!


「意気揚々と突っ込んでくる威勢────その意気やよし!むぅん!!」


「邪魔だ陰キャ!どいてろ!」


「うるさいうるさいうるさい!僕は凄い……僕は凄い!」


「っ!援護を────」


「待てゆかり!直樹もステイ!」


「お、おう……て俺は犬か!」


 慌てて飛び込もうとしたゆかりの手を握り止め、直樹には声を掛けて止めさせる。


「あの二人みたいに闇雲に突っ込んじゃダメだ。最低限作戦を共有しないと────あんなふうになるぞ」


 顎で、自衛隊に突貫しに行った二人を指す。考え無しにブンブン振り回すだけじゃほら、味方同士でのフレンドリーファイアだ。


「チッ、邪魔なんだよ!」


「君こそ邪魔だよ!僕の邪魔をしないでくれ!」


 自衛隊の人は、さすがの身のこなしと言うべきか、二対一という状況を全く活かしきれてない二人に対し、自滅するように立ち回っている。それに、時々木刀が当たっても、腕でガードしてるし、人の腕からなっては行けない思い音が鳴っている……なんだろう。硬化系のスキルかな。


「俺たちがやることは、なんでもいいから、連携が上手くいくように方針を立てること。どうせ俺達は今さっき顔を合わせた初対面なんだ。必要最低限でいい」


 しかし、二人の武器は薙刀とハルバード。どっちかというと長物の武器である。


「もうちょっと、あの自衛隊の情報が必要だ────申し訳ないけど、考え無しの二人には犠牲になってもらおう」


「「っ!!」」


 戦場では、協調性のない、自分のことしか考えない馬鹿程、死んでいく。


 足手まといは要らない。この時の俺の目は、さぞ冷たかったことだろう。











 ────純粋に知りたい。男の人にそう思ったのは初めてのことだった。


「本当にカッコつけかどうか────試してみるか?オニーサン?」


 水瀬家。知る人ぞ知る、歴としてはおよそ800年の歴史を持つ古めかしい家。よく言えば趣がある。悪く言えばいつまでも古いしきたりに囚われている家。


 男尊女卑。いつまで経っても男が偉いとかいう、時代遅れの家に産まれ、追いやられるように母親と少ない人数の使用人に囲まれて暮らしてきた。


 女に産まれたからには、どこぞの知らない下卑た金持ちの家に嫁がされ、政略結婚のダシにされる。それが嫌で実家を飛び出し、逃げるようにここに応募した。


「大丈夫だった?」


 私を見る目。それは、今まで出会ってきた男と違い、純粋にわたしを心配する目。


 この人は……少し信じてみてもいいのかな。


「……えぇ。お陰様で助かったわ。ありがとう」


「ん。それなら良かった。それじゃあ────?」


 去っていくあの人に、思わず手が伸びてしまった。わたしでさえ、自身の行動に困惑する。


「どうしたの?」


 優しく、安心させる声。浮かべる笑顔に、思わず胸がとくんと跳ねてしまった。


 ……こんな優しい対応。初めてされる。わたし自身が、どう対応すればいいか分からずに戸惑う。


 気づけばわたしの口は、彼の名前を聞いていた────え、なにこの握手の仕方。わたし、大事にされてる……!そ、それはちょっと反則……かも……。


 御神楽各務……くん。各務……くん。


 ふしぎなおひと。底なしに優しくて、わたしのような男性嫌いでも、惹き付ける魅力がある。


 なのに────


「申し訳ないけど、考え無しの二人には犠牲になってもらおう」


 ────そういった各務くんの目は、思わず背筋から冷や汗が出るほどに冷たくて、容赦の無い目をしていた。


 一体この日本で、どうすればそんな目が出来るようになるのか。


 ………知りたい。もっと仲良くなれば、いつか話してくれるかしら。



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