第6話 準備

 新たな交友を深めていると、残りの二人も合流した……のだが。


「なんだあの二人……いけすかねーの」


 先程のノリで絡みに行こうとした直樹(ちゃんと許可貰った)だったのだが一人には鼻を鳴らされて無視。もう一人はそもそも視線すら合わせなかった。


 というか、ちょっと怖い。髪もボサボサだし、ずっと俯いて何やらブツブツ言ってるし。ゆかりも、流石に恐怖を抱いたのか、俺の背中を少しだけ摘んでいた。


「各務はさ」


「おう?」


「何でこの適正検査に参加しようと思ったんだ?あ!俺はただ単純に、貰ったスキルが戦闘向きだったからだな。それに、両親や、じいちゃんやばあちゃんも怖がってたし、俺が戦うことで少しでも家族を安心させたいからな」


「お前………!」


 え、なんだこいつ。めちゃくちゃ良い奴だな。なんかごめんね!俺そう言った理由無くて!あと、なんかちょっと面白そうだなと思った俺を許してくれ。


「俺は別に、直樹みたいな理由あっての行動じゃないよ────親友がいるんだ」


「へぇ親友……いいな、それ」


「あぁ。小学校一年生の頃からの付き合いでさ……死なせたくないって」


 本人の目の前じゃ、小っ恥ずかしくて言えないが、今だったら言える。


「家族と言えるくらいに、大事な親友なんだ。ダンジョンは間違いなく命に関わるものだからさ……守ってやりたいんだ」


 両親が出張で家にいない時、いつも寂しさを埋めるように、隣には霧矢が居てくれた。アイツは、異世界で共に戦場を駆け回った仲間よりも、大切だと言える唯一の存在だ。


「なるほどなぁ……一応聞くけどそいつ異性?」


「いや?バリバリの男だけど」


 異性、と直樹の口から出た瞬間に、背中の服を掴む力が少し強くなった気がした。


 そのことに疑問を覚え、後ろを振り向いてからゆかりと目を合わせる。それに気づいた彼女は、ゆっくりと顔を横にズラした。


 ……え、何その反応。どういう意味?


「受験番号176番から180番のグループ。入ってください」


「……と、呼ばれたな。行こうぜ各務」


「おう。ゆかり」


「えぇ」


 ついに呼ばれ、別室へと案内される俺達。そこには、迷彩服を着た自衛隊や、警察の人が何人かいた。


 当たりをぐるりと見渡す。大きさとしては、学校にある武道場よりもちょっと広いくらいか。そして、壁側には複数の武器が安置されている。


 武器と言っても、木刀や、棒といった、刃物が付いていないもの。チラッと見えた弓の矢も、鏃ではなく付いていたのは吸盤だった。


 ………え、吸盤?


「よーし来たな。事前にメールでも送られていたように、適正検査は自衛隊────つまりは俺だな。俺とお前らによる五対一の戦闘になる。ハンデとして、そこの壁にある武器を使ってもらっても構わない。何か質問は?」


「んじゃ、俺からいいか?」


 真っ先に手を挙げ、質問権を得る。今回、俺は手加減しないと────手加減しても最悪殺してしまう可能性があるから、これだけは聞いとかないと。


「自分で持ってきた武器は使っても?」


「ん?お前どう見ても後ろの嬢ちゃん以外の手荷物持ってないだろ?」


 手荷物て。あんまり女の子に対してそう言うの、良くないと思います!


 脳内で、両手でバッテン印を作る。気のせいか、ゆかりの雰囲気も少々ムッとしてきた。


「まぁ質問に対してだが、それは構わない。別の会場で、竹刀を持参していたやつがいたらしいからな」


「なるほど」


 となれば、まぁ大丈夫か。無限の武器庫の超劣化版だけど、実力を見せるのならアレでも充分問題ない。


「それ以外に無いか?………無いな。では各自、武器を選びに行ってくれ」


 一目散に武器を選びに行った名前も知らない二人。どうやら二人とも木刀を選んだようである。


「あの……各務くん」


「ん?どうした?」


「んへー!どれにしよっかなー!」と言いながら悩む直樹を横目に、ゆかりの方を見る。


「その……私のスキルにあった武器があの中に無いの?」


「無い?一体どういうスキルだ?」


「薙刀術なのだけれど……」


 薙刀?薙刀ってアレか。


「めちゃくちゃ偏見だけど、古い歴史のある良家のお嬢様とかが習ってそうなあの薙刀か」


「えぇ。とても偏見ではあるけれど、その薙刀であっているわ」


 薙刀……薙刀かぁ……うーん。流石に異世界では薙刀なんて見たことないなぁ……多分だけど、無限の武器庫にも存在しないだろう。


 ……しょうがない。。右手を開き、その上に結構大きめの氷を登場させる。


「長さってどのくらい?」


「………え、えぇ……柄の長さが大体120センチくらいで、刃の長さは90センチくらいよ」


 ふむふむなるほど。氷をにょーんとのばし、そこからは俺の想像で申し訳ないが、アニメで見た感じのをイメージして作っていく。刃の部分は潰して、殴打特化にする。


「重さは?」


「そうね……2キロくらいでお願いできるかしら」


 思っていたよりも軽いのな。氷の薙刀の調整を軽くして、両手で持ってブンブンと見様見真似で回してみる。中々良い出来じゃないか?


「はい」


「……ありがとう、各務くん」


 そう言って微笑むゆかり。それに対してニコりと笑って返答した所、後ろの方から「うっっ!!」と呻き声が聞こえた。


「アオハルだ……アオハルしてる……!」


「いいなぁ……俺もそんな青春時代送りたかったなぁ……」


「あの二人顔面偏差値高すぎる……」


 警察、自衛隊の皆様、いつもお疲れ様です!!!



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