第4話 出会い

 結局、霧矢は五本まで絞り込んだが、それ以上はどうすることも出来なかったので、五本ともあげた。


 念じれば、任意に剣を召喚できるようにネックレスの状態で渡したあと、ちょっとした強くなるためのアドバイスもした。


 どんなに不恰好でもいいから、素振りはやること。双剣術のスキルの恩恵がどれくらいあるかは知らないが、俺も最初は愚直にブンブンと師匠に暖かい目で見られながら剣を振っていたものである。


 それと、高校が半日で終わる間は、放課後俺が訓練を付けるようにした。毎日やってれば、半月後には一端の戦士にはなってるだろう。


 ────俺が地球に帰還してから2日後。政府が、急遽新しく作った『ダンジョン対策省』のホームページにて、一般人の戦闘員を募集するとの発表があった。


 年齢は18歳以上から。尚、今年誕生日を迎えて18歳になる人も対象となっているので、俺や霧矢は条件をクリアしていた。


 但し、高校三年生は親の許可が必要と書いてあったので、直ぐに両親に電話をして許可を貰った。


「おっけー!各務なら大丈夫でしょ!」


 信頼がとても厚かった。


 ホームページの応募フォームから、個人情報を入力していくと、直ぐに自分が使っているメールアドレスに政府からのメッセージが飛んできていた。


 三日後の昼の10時から適正検査を行うらしい。内容は、既にレベルを上げ、一般人としての括りを超えた自衛隊との軽い戦闘訓練。高校生ということもあり、服装は何故か高校の制服指定だった。


 ふーん?と思いつつ、まぁ余裕かと結論付けてスリープモードにした────瞬間、霧矢からメッセージが届いた。


『各務はいつだった?俺は四日後!!』


『あらま。俺は三日後』


『なんだー別々かー。残念』


『負けたら承知しねぇから』


『ヒェッ……』


 とまぁ脅しを掛けたが実際大丈夫だろ。この二日間の訓練で、霧矢のステータスは大分伸びたし、検査前にもっとしごけばいいだろ。


『なんか今すっごい寒気したけど気の所為?』


『気の所為』


 そして、霧矢をビシバシしごきながら、迎えた三日後。俺は、東京都内の某所にあるデッカイ体育館へと足を向けていた。


 受付で、適正検査受験票を見せてから、体育館内に入ると、中には既に人が集まっていた。


 ……広さの割には、結構ガラガラ。土曜だからか、制服を着た高校生の数が多いように見える。


 だけど、それを加味しても人が少ないように見える。中にいるのも……大体200人くらいか?意外と応募者少なかったんだな────



「ねぇねぇ、君どこの高校?すっごい可愛いね。この検査が終わったら俺と食事でもどう?」


「──────」


 ────ある、風景を思い出した。


 それは、俺と彼女が初めて出会った日。彼女が、俺達の仲間となり、世界中を旅する大切な一人となった分岐点。そして、それが運命の特異点となった日。


『なぁなぁヒーラーさんよぉ。俺達とパーティー組もうぜ?ま、その際には俺達の下の世話をしてもらうことになるがな。ギャハハハハ!!』


『あ、あの……だ、誰か……!』


『────みっともないぞ。そこまでにしておけ。師匠?』


『やっちゃいなさい。盛大にね』


 その風景が、今目の前で女子高生をナンパしている光景とダブり、俺の足は自然とそちらに向かっていた。


 彼女は、腕を組んで全く相手にしていないようだが、その態度にキレたチャラ男がいつ手を出すかは分からない。止めるに超したことはないからな。


「────チッ、おい。可愛いからってお高く止まってんじゃねぇぞ。少し下手に出てるからっていい気になりやがって────あ?」


「そこまでにしておけ。女の子との出会いが欲しいのなら、合コンでも参加したらどうだ?」


 彼女に伸ばした手を、既のところで右手で掴む。少し、睨むように俺の姿を見て、制服を着ていると分かると明らかに俺をバカにしたかのような目に変わった。


「おいおい。なんだよ、まだ高校生のガキじゃねぇか。引っ込んでな、これはオトナの話だからよ」


「そんなガキでも、みっともねぇと思ったからこうして止めに来てんだよ。分かんねぇか?」


「このガキっっ……!」


 煽り返したら、分かりやすく青筋を立てる金髪チャラ男。おいおい、そんな簡単にキレて大丈夫かよ。


 あと、俺は異世界で七年旅をしてたから、精神年齢は実質25歳だからな?俺の方が年上だアホンダラ。精神上はだけど。


 睨み合い。パシッ、と俺の手を跳ね除けたチャラ男が、拳をポキポキ鳴らす。フリーになった俺は、彼女をこの男の視線から邪魔するように立ち位置を変え、左手を伸ばして彼女を守る。


「おいガキ。ただのカッコつけなら大人しく引っ込んでな。俺は既にレベル3はあるんだぜ?痛い目を見たくないなら引っ込んでな」


 は?レベル3?ただの雑魚じゃん。


 霧矢を見習え霧矢を。アイツもうレベル50超えてっから。


「本当にただのカッコつけかどうか────試してみるか?オニーサン?」


 同時に魔眼を発動させる。左眼が一瞬だけ冷たくなり、蒼いオーラを撒き散らせながら紋章が飛び出る。




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このシーンがやりたかったがために、この小説を書き始めたと言っても過言では無い。満足です。


魔眼の紋章は、目の中ではなく、目に接続するような感じで顔の横辺りに登場してるイメージ。詳しくイメージしたいなら、魔法使い○黒猫のウィズ覇眼戦線で検索。

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