第3話 無限の武器庫

 無限の武器庫の大きさなのだが、俺ですらハッキリと把握することは出来ないし、どんな武器があるのかもぶっちゃけて言うと覚えてもいないし、なんなら俺の知らないところで勝手に増えている迄ある。


 それがこの武器庫の特性でもある。俺の戦闘スタイルは結構雑に武器を扱っているので、あまり気にしたことは無いが。


「ほら、着いてこい」


「…………お、おう」


 声を掛け、再起動したのを確認してから、入口に設置されている螺旋階段を下る。


「……だ、大丈夫?落ちても死んだりしない?」


「安心しろ。見えないけど、透明な壁があるから。触ってみ?」


「……ほんとだ。めっっっっっちゃ安心した」


 はーーーー、と胸を撫でながら俺に続いて階段を降り始める霧矢。しばらくすると、余裕が出てきたのか透明な壁越しの景色を見てほー、やらへー、やらと声を出していた。


「……本当にくれるの?」


「おう。これから先現れるダンジョンがどんな危険を持っているか分からないからな」


 神託によれば、ダンジョンがこの世界に現れるのは半月後らしい。それまでに、どれだけ自分を鍛えることが出来るのか、どれだけ、国がダンジョンに対する備えを蓄えることができるのか。それが問題だ。


 会話をしている最中で、ついに螺旋階段が終わる。暫く歩き、くるりと後ろにいる霧矢へと振り返った。


「霧矢。俺はお前のことを親友だと思っている────だから、死んで欲しくない」


「え……あ、うん……俺もお前のことは親友だと思ってるけど……え、なんか恥ずいわ」


「選べ」


「どわっ!?」


 今までずっと白かった床が、急に青く発光し始めた。そして、床から金色に輝く片手剣たちが無尽蔵に生えてきた。


「どれも、異世界では名剣と呼ばれるほどのスペックを持つ一振だ。絶対に、お前の役に立つ」


「…………お、オシャ……」









 異世界には、『意思を持つ剣』というものが存在する。いわゆる、『勇者にしか抜けない剣』だとか、『魔剣』だとか。そういったいわく付きのものがそう呼ばれている。


 そういうものは、剣自身が担い手を選び、気に入った人物にしか最大限の力を発揮しない。


 今回、霧矢の周囲に現れた剣は、少しでも霧矢に興味を持った魔剣聖剣名剣達である。この中から相棒を見つけてもらうことになるのだが………。


「え、お前かっこいいな……え、お前もかっこいい……うわ、皆オシャすぎ……」


 選べなーい!!と頭を抱える霧矢。


「良かったら全部貰ってもいいんだぞ?」


「え、マジ────いや!!!そこまで各務に甘える訳にはいかない!!!」


 お、おう。いや、本当に全部貰ってもいいんだけど……。


 あーでもないこーでもない悩む霧矢から、一旦目を離し、他の武器とは違い、しっかりと武器庫らしく保管されている武器群へと目を向ける。


 ────ガラスケースに、厳重に守られるかのように、収納されてある八つの武器。比率としては、片手剣が三本。大剣が一本。杖が一つ。槌が一つ。そして大楯が一つ。


 懐かしむように、ガラスの表面を優しく撫でる。


「………なぁ、その武器のこと聞いてもいいか?」


 暫く撫でていたら、背後から霧矢がそう聞いてきた。


「これは、異世界にいる仲間と友達の武器だ……大事な……な」


「各務…………」


「……………いや、普通に生きてるからな?」


「ズッコー!!!!」


 なんか勝手にしんみりとした雰囲気になったため、誤解がないようにジト目で見ながら言うと、盛大にズッコケる。


「何でだよ!!!いや生きているのならいいけど、さっきの反応からして思いっきり形見だろ!?」


「はぁぁぁぁ???アイツらが死ぬううう???俺含め全員が全員国を一夜にして滅ぼせる超攻撃的戦闘集団だぞ??」


「なにそれこっっっっわ!!!!」


 そのくらいの強さがないと、異世界の魔王は倒せなかったからな。


「コイツ以外、全部レプリカだよ。こっちに帰る前に、仲間や友達にお願いしたんだ。この地球とあの世界が繋がるまで、向こうでの記憶を忘れない為に」


「…………待って。今なんかサラッとすごいこと言わなかった?え?繋がる?」


「多分アイツらだったらそのくらいは軽くやるぞ?」


 半分人間辞めてるヤツらだからな。寿命も相当伸びただろうし、どれだけ時間が掛かっても、再会の約束を果たすために、皆は世界を渡ってくる。


 それに、あっちの女神も最大限協力してるはずだし、絶対に成功する。


「その時は、お前のことも紹介してやるよ────俺の、一番の親友だってな」


「…………きゅんです」

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