第3話 再び

「俺、先輩とヤったのか……」


 昨日、終電を逃した俺たちは、ホテルで身体を重ね合った。

 テクニック、受け方、攻め方、全てが洗練されており、

 男性経験豊富なのが嫌でも伝わってきた。

 

 一度あの快感を味わうと、自慰行為では満足できない。

 もう一度中野先輩とエッチしたいと思ってしまう。

 俺はもう中野先輩の虜だった。


『先輩、気持ちいい?』

『うん……気持ちいいよっ。んっんっ……あっ』


 ふと昨日の出来事が脳裏に浮かび、身体の一部が熱を帯びる。

 もう一回、中野先輩とヤりたいな……。


 なんてこと思っていると、中野先輩が電話をかけてきた。

 とりあえず、俺は電話に出る。


「もしもし先輩ですか?」

『うん、そだよ』


 スマホのスピーカーから中野先輩の声が聞こえてくる。


『南くん、今日の夕方、暇かな?』

「夕方ですか?」

『うん、夕方ヒマ?』

「今日はバイトもないんで、ヒマですけど……」

『なら今日も飲もうよ』

「へ? また飲むんですか?」

『うん、今日も飲もうぜ。いいでしょ?』

「別にいいですけど……」

『まじで? いいの?』

「はい、することないんでいいですよ」

『おっけ、じゃあまた後でね』

「はい」


 今日の夕方、また中野先輩と飲むことになった。

 あの人、本当に飲むの好きだな。

 酒弱いくせに……。



 ◇◇◇




 現在、俺たちはいつもの居酒屋で飲んでいた。

 相変わらず、中野先輩はビール一杯で顔が真っ赤だ。

 ほんと酒弱いな、この人。


「ねぇ南くん」

「はい、なんですか?」

「アタシの身体どうだった?」

「……」


 中野先輩の言葉に黙り込んでしまう。

 なんだこの質問は……。

 どう答えるのが正解なんだ?


「先輩、絶対酔ってますよね?」

「うん、酔ってるよ。だからこんな質問できるの」

「……」

「で、実際どうだったの、私の体は? 気持ちよかった?」


 「はぁ……」とため息を吐いた後、

 俺は素直に返事した。


「……最高でした」

「ふふ、そっか、そっか。まぁ確かに、5回も私のこと求めてくれたもんね」

「5回……? 俺たちそんなにシました?」

「あれ? 覚えてないの?」

「はい、全然覚えてないです。俺達、本当に5回もシたんですか?」

「うん、したよ。あのときは南くんが絶倫すぎてビックリしたよ」

「……」


 俺、5回も中野先輩のこと求めちゃったのか。

 いくらなんでもヤりすぎだろ……。


「先輩は俺とエッチしたこと後悔してませんか?」

「うん、後悔してないよ」


 俺の質問に即答する中野先輩。

 本当に後悔してないんだろう。

 それを知って一安心だ。


「南くんはどうなの? 私とエッチしたこと後悔してない?」

「俺も後悔してないです」

「ふふ、なら良かったよ」

「……」


 にしても謎だ。

 中野先輩はなんで俺とエッチしたんだろう?

 性欲を満たすために俺とヤったのかな?

 それとも、俺のことが好きだからヤッたのかな?

 

 気になるな……。


「ねぇ今日もする?」

「する? 何のことですか?」

「エッチだよ、エッチ。今日もエッチぃことシちゃう?」

「冗談ですか?」

「もうっ、冗談じゃないって。マジだよ、マジ」

「……」


 この人、さっきから何言ってんだ?

 急展開すぎて脳の処理が追いつかない。


「南くんは私とエッチすんの嫌?」

「わかってるくせに……」

「わかんないよ。ちゃんと言ってくれないと……」

「……そりゃシたいに決まってるでしょ。先輩エロいし」

「ふふ、じゃあ決まりだね」

「……」


 また中野先輩とエッチすることになった。


 正直、俺は今日も期待していた。

 この居酒屋で飲んでいる時から、中野先輩とエッチすることを期待していたんだ。

 おそらく、この人も俺とエッチすること期待してたんだろう。


 そっか、先輩も同じ気持ちだったのか……。


「ホテル行きます?」

「ううん、今日は私の家でシよ」

「先輩の家ですか?」

「うん、私一人暮らしだからヤり放題だよ」

「じゃあ先輩の家でシますか」

「うんっ」


 俺たちは居酒屋を出て、中野先輩の家に向かった。

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