第30話 ツラツラ小ネタ 再び

 今週から、日本との時差が二時間になりました。オーストラリアのビクトリア州では、春先から夏の終わりまで「サマータイム(夏時間)」になり、一日が一時間早く始まります。半年後、秋が始まる頃に時計の針をもとに戻します。


 もともとは「日照時間をできるだけ有効活用して、照明を節約しよう」という目的で1916年にドイツとイギリスで導入された制度です。夏時間の話は、すごく前のエッセイでも書いたので、覚えていらっしゃる読者様もいらっしゃるかもしれません。


 今の時代に必要な制度じゃないと思うんですけどね。長い間やってきたので、今さら辞めるほうがいろいろと面倒くさいという一点で、継続されている気がしてなりません。


 クイーンズランド州、西オーストラリア州、ノーザンテリトリーでは、夏時間はやらないので、国内でも時差が変わります。私の会社はブリスベンにも支社があるんですが、先週まではブリスベンの同僚と会議をするにも、時差を気にしなくてよかったのに(時差がないから)、今週からはメルボルンの出社時間がブリスベンより一時間早くなるので、そのへんを考慮しなくてはいけません。


 個人的には意味のない制度と思いますが、春夏に一時間早く一日が始まるおかげで、日が暮れるのが遅いのがうれしいです。仕事が終わってもずっと明るいので、アフターファイブに気分があがります。


 時差と言えば、アデレードとメルボルンでは、三十分の時差があります。ご存じの方もいらっしゃるかもしれません。そこまで細かく時差を設けなくても……と思います。


 逆に、中国はあんなに広いのに、公式には北京時間の一つだけしかないそうです。中国の西の端のほうだと、北京時間の朝十時に夜が明けたりするので、非公式なローカル時計で生活している人も多いのだとか。


 話は変わりますが、昨日の夜、息子が「頭とお腹が痛くて眠れない」と言い始めまして。痛みに鈍感で、普段はあんまり痛いと言わないのと、日中に転んで頭を打っていたので、心配になりました。


 こういう時、日本だったら、夜間もやっている小児科に連れて行けるじゃないですか。


 オーストラリアだと、夜間の病院はどこも救急で、本当に緊急に手当が必要な人しか行かないんです。行ったら行ったで、症状が命にかかわらないと判断された場合は何時間も待たされます。


 そこまでして病院に連れて行かないといけないくらいの症状か? と言われると、そんなことなかったんですが、とりあえず朝まで様子を見ようと放っておいたら、脳内出血してました……なんてことになったらシャレになりません。


 そんな時にとても便利なのが、ビクトリア州で年中無休、無料で利用できる「ナース・オン・コール」というサービス。電話をかけると看護師さんが相談に乗ってくれます。


 数年前に、夜中に息子の鼻血がプシャーっと勢いよく出たまま、二十分くらい止まらなかった時もお世話になったので、利用するのは今回で二度目です。


 夜の九時半ごろに電話をかけたのですが、すぐに看護師さんが出てくれました。看護師さんは、私から息子の症状を一通り聞いた後、息子に向かって、目眩はあるかとか、歩行できるかなど、様々な質問をされ、私にも「普段と比べて顔色はどうですか。イライラした様子はありますか」など質問されました。


 結果、看護師さんも私と同じく「う〜ん。救急に行くほどひどい症状じゃない気がするけど、朝まで放っておくのも心配」という見解。


 ということで、バーチャル救急サービスなるものを手配してくださいました。病院まで行く代わりに、テレビ電話で救急医が診てくれるサービスです。触診や投薬などはできませんが、顔色や舌の色、怪我の場合は患部を見てもらえることができます。


 命が危ない場合は不適切なサービスですが、今回の息子のように「とりあえず様子見」で大丈夫かどうか、判断ができない場合に、お医者さんにリモートで相談できるのはありがたいです。


 看護師さんからスマホに送ってもらったリンクをクリックし、手続きを済ませると、バーチャル待合室に通されます。その時点で待ち時間は三十分〜四十分と表示されました。


 時刻は十時半。普段なら息子は九時までに就寝するので、「痛くて眠れない」と言ってたわりには眠そうになってきました。


 バーチャル待合室で待っている間、息子をリビングのソファに横にならせて毛布をかけてあげたら、三分もしないうちに、スヤスヤと眠りはじめました。


 これで、朝になったら冷たくなってました……なんてことになったら、本気でシャレになりませんが、呼吸もしっかりしているし、見た感じ大丈夫そう。これから三十分後、お医者さんに診てもらうために叩き起こすのもなんだかな。


 ってことで、バーチャル救急サービスはキャンセルしました。息子は朝になったらすっかり元気になり、今日は学校の後にサッカーの練習へ行き、晩御飯のカレーももりもり食べていました。


 バーチャル救急サービス、利用してたらエッセイで書けたんですけどね〜。


 私が日本に住んでいたころは、そんなサービスはなかったんですが、地域によってはあるんですかね。いやはや、画期的なサービスだなと思ったのでした。無料ですしね。


 オーストラリアの医療事情、問題も多くあるのですが、いいサービスもたくさんあるなぁと思います。

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