第4話 偽りの能力
「じゃあ、次は俺の能力を披露しよう。俺の能力は物体を浮かせることが出来る能力だ!!」
歩はそう言った途端テーブルに置いてある4人分のコップを空中に浮かせて見せた。
「どお、すごい?」
歩は自身の能力を褒めてほしそうにこちらを見てくる。
「そうだな、歩の能力も2人と引けを取らず使い方次第だがかなり強力な能力と言えるだろう。」
お世辞なしの俺の率直な感想を歩に聞かせると歩は満足そうな笑みを俺に見せた。
その後もしばらく中身が入っているコップを宙に浮かせている歩を見て俺は少し不安になった。
「歩、お前が今浮かせているコップの中身はまだ入っている、こぼすなよ」
俺がそう言った途端歩はその事実に気づいたのか少しだけ動揺し始めた。
数秒後、俺の不安は現実となり床にお茶がまき散らされた。
「ごめん」
歩は申し訳なさそうに誤ってきた。
「いや、俺が動揺させるようなことを言ったのも悪い、気にするな」
そういいながら俺は床にまき散らされたお茶を雑巾で拭き取った。
「じゃあ、最後は暁の能力だね」
仕切り直しといった感じで晴翔は俺の能力を聞いてくる。
この時俺は悟られないように思考を巡らせる。
本当に自分の能力を教えていいのだろうか?
別に3人が信用できないわけではない。
いや、違うな。信用していたらこんな思考をしていないはずだ。
心の底から沸き上がる俺が努力して捨てたはずの感情が少しの時を経て再び沸き上がった感覚がした。
昔の自分に戻ってしまったらおそらくこの3人とは一緒にいることが出来なくなる。
何より俺は絶対にあの時の自分に戻りたくない
そう思い俺は無理やりこの感情を押し殺した。
しかし、染みついた思考というものは改善できずに結局偽りの能力を教えることにする。
「俺の能力は身体能力が向上する能力だ。」
「あんま、ぱっとしないね」
歩は遠慮の欠片もなく正直に自分の感想を伝えた。
「そういうな、シンプルな能力ほど対策がしづらく大きなアドバンテージを得られる可能性だってある。」
勇人は俺が落ち込んだと思ったのかとっさにフォローをしてくれた。
「とりあえずどのくらい身体能力が向上したのか確かめるために歩と腕相撲してみてはどうかな」
「いいぜ、相手になってやるよ」
晴翔の提案に歩は楽しそうに腕相撲するときの構えを見せて手をこちらに向けてきた。
歩はお世辞にも頭はよくないが運動神経は全国的に見ても高校生の中ではトップクラスといっていいだろう。
したがって、たまに俺たちは腕相撲をするが誰一人として歩に勝ったことはない。
俺は腕相撲の構えをして差し出された歩の手を握った。
その手を晴翔が握ってスタートの合図をする。
始まりと同時に歩の力がこちらに伝わってきたが俺は難なく歩の手を押し返し勝利して見せた。
「負けたー」
「能力を使ったんだから当然だ」
悔しそうにする歩に一応フォローしておいた。
まあ、能力は使ってないけど。
本当の能力はまた別の機会に試してるか。
「これで、全員の能力は共有できたわけだがこれまでの話し合いで不明な点があったら遠慮せず聞いてほしい」
勇人がそう言った途端4人のスマホから一斉に通知音が鳴った。
確認してみると神殺人殺からの通知だった。
内容大体こんな感じだ。
【第一ステージ開催】
ただいまより第一ステージを開催する。
【ルール】
1,第一ステージは様々なゲームが用意されており参加者は任意のゲームをクリアし星を獲得しなければならない。
2,現在時刻から1か月以内に星の獲得数が10個未満の参加者はその時点で脱落とする。
3,星の獲得数はゲームの難易度に比例し増加する。(例:Lv1、獲得星1個・・)
4,ゲームのエントリーは参加者に配布されたスマホですべて行う。
尚ゲームのエントリーが確定したらゲーム会場まで転送される。
5,星の獲得数に比例して各々の能力が強化される。
6,第一ステージで強化された能力は第二ステージ以降でも引き継がれる。
7,ゲームクリア後星以外にもPtやアイテムが与えられる。
以上
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