第5話 お義兄様とお出掛けしました

次の日、私はアリスに珍しくおめかしされて、お出掛けした。お義兄様相手だから適当で良いと私は言ったんだけど、

「何をおっしゃっていらっしゃるんですか? それでなくても、レオンハルト様は見目麗しいんですから、お嬢様も、化粧くらいしないと」

なんか訳のわからない理由でおめかしされたんですけど。まあ、私はそんなに美人でもないし、イケメンのお義兄様の横にいると、見劣りするから、化粧しろってことだろうか?

平民の格好して化粧するのもなんだかな、と思ったけれど、折角おめかししてくれるんだからと、アリスに任せた。


でも、私を見て、お義兄様が固まったのだ。


「お義兄様、やっぱり変ですよね。化粧を落としてきます」

私は慌てて、アリスの所に戻ろうとして、お義兄様に手を引かれたのだ。


「……」

お義兄様がなんか言ったけれど良く聞こえなかった。

「えっ? 何か言われましたか?」

私が聞くと、真っ赤になって

「あまりに可愛いから、驚いた」

って言われたんだけど!


これって、嫌みじゃないよね? お義兄様に可愛いなんて初めて言われた。小さいときは、お子ちゃまとか、出るところがまだ出ていないとか、散々言われていたから、貶される事にはなれていたけど、褒められたことなんてなかったから、本当に驚いた。


驚いている私を

「時間がないから行くぞ」

って、手を引っ張ってぐんぐん歩き出したお義兄様に慌ててついて行く。


「お義兄様、ちょっと早過ぎ」

私が文句を言って、

「あっ、すまん」

慌てて、謝って歩くスピードを落としてくれた。


「もう、お義兄様ったら、私が余りにも可愛くなっていたからって、何も照れなくても良いのに!」

私は冗談で言ったのだ。冗談で! 


その後、「バーカ、お前風情の女なんか、掃いて捨てるほどいるぞ!」

って頭を軽く叩かれて、注意されるかと思ったんだけど……


「まあ、そうだな」

なんて、赤くなって頷いてくれたんだど……熱でもあるんだろうか?

私は心配して、お義兄様を見てしまった。


だって、お義兄様って、本当に女の子に人気があるのだ。見目麗しいし、イケメンだし、格好いいし……。

学園祭の時なんかに一緒に行っても、女たちが寄ってきてうるさいのなんのって無かった。


私なんか一緒にいる金魚のフン扱いだったし。当然寄ってくる女の人も美人ぞろいで、私なんて彼女達から見たら本当に地味で平凡だった。

さんざんお義兄様からもそう言われてからかわれてきたし。そんな私に可愛いって言うなんて絶対に変だ。


そうか、しばらく会わないうちにヨイショすることを覚えたんだろうか?


そうこう私が考えているうちに、お目当てのカップル限定喫茶『ヘモジ亭』に到着した。


「あれ、やっぱり列になっている」

私はがっかりした。


せっかく朝早くから来て入ろうとしたのに、アリスがお化粧をしてくれるから並ぶ羽目になってしまった。私は食べられたらそれでいいから化粧なんて良かったのに!


まあ、珍しくお義兄様が褒めてくれたから許すけど……


「ごめんなさい。お義兄様。並ぶ羽目になってしまって」

私が謝った。確か、時間のない御兄様は時間が取られるのが大嫌いなはずだった。


「いや、別に。エリと並ぶなら、構わない。それよりも最近のエリの話を聞けたら嬉しいんだが……アンドレとは上手くいっているのか?」

お義兄様が怒っていないとホッとしたら、今度は触れてほしくない話題に触れられた。

ここはまずい。お義兄様を怒らせたら下手したらこの国の存亡に関わる。

私は慌てて話題を変えることにした。


「まあ、殿下とは程々にしていますよ。

それよりも友達のシャロットが、この前帝国の詩人ハーゲッツ・ルーピンを授業でハゲツルピンって答えたのよ」

「それはないだろう」

お義兄様も思わず吹き出してくれた。やった!これで王子の事も忘れてくれたら良いのに!

と思った時だ。


「エリーゼ、何を人をだしに笑ってくれているのよ」

私はその声に驚いて後ろを見た。そこには怒髪天のクラスメイトのシャロットがいたのだ。


「えっ、シャロット、どうしたの?」

私は驚いて後ろを見ると同じクラスのミシェルと一緒にいるんだけど……


「嘘っ! あなた達付き合っていたの?」

私が驚いて聞くと


「違うわよ。ミシェルがどうしても来たいって言うから、私も食べてみたかったし一緒に来たのよ。エリーゼの方こそ、そちらはどなたなの?」

興味津々で二人は私達を見てくる。


「こちらは私の義兄のレオンハルトよ。お義兄様。こちらがクラスメイトのシャロットとミシェル」

「やあ、妹がお世話になっているね」

「こちらこそ」

「エリーゼさんにはいつもお世話になっています」

二人がいきなり、敬語モードになっているんだけど。


「エリーゼ、あなたのお兄様ということは、帝国のお貴族様なのよね」

「まあ、そうね」

私が誤魔化そうとすると


「今はテルナン伯爵位を継承させてもらっている」

お義兄様が言ってくれた。

「えっ、じゃあ、帝国の伯爵様なんですか?」

ミシェルが固まっているし、

「凄いです。帝国の伯爵様なんて初めてお話させて頂きました」

シャロットも感激していた。


「何言っているんだよ。それ言うなら、エリーゼはアルマン子爵本人だよ」

お義兄様が言ってくれるんだけど。

「えっ、エリーゼって子爵様御本人だったの」

シャロットは思わず固まっていた。

「えっ、言っていなかったっけ」

「アルマン子爵家の令嬢だとは聞いたけれど、子爵位を継いでいるなんて聞いてもいなかったわよ」

私の言葉にシャロットは驚いて言って来た。


「いや、エリはこの国の王子の婚約者なんだろう。それくらいは当然だと思うが」

お義兄様はいけしゃあしゃあと言ってくれるんだけど。


「それはそうですけれど、エリーゼさんは中々自分のことは話してくれなくて」

「そうだよね。俺にもこの国でのことを中々話してくれないんだけど」

なんか二人して盛り上がり始めたんだけど、これは良くない。


「ああ、それだったらお兄さん、エリーゼったらこの前試食用に作ったコロッケを10個も食べてしまってお腹いた起こしてましたよ」

シャロットが話さなくていいのに私の黒歴史を話してくれた。


「ああ、エリは昔から良く食べ過ぎるんだ。昔、おやつにアイスクリームが出てきて俺達兄弟の分4っつももらってお腹痛を起こしていたよ」

「お義兄様。いくら私でも、弟の分までは取っていません」

「気にするのはそこかよ」

お義兄様は言うんだけど、元々食い意地はっているのは事実だし、この二人もそれは良く知っているはずだ。でも、弟の分まで取ったって言ったら本当にどうしようもない姉じゃない! 優しいお義兄様にもらって食べたんなら判るけれど。まあ、3人の義兄には本当に良くしてもらったのだ。


私達が楽しげに話している時だ。


「ちょっと、いつまで私達を待たせるつもりなのよ」

女のキイキイ声が聞こえた。


げっ、口うるさいと有名なアナベル・ロデス伯爵令嬢だ。

彼女はいつも私に絡んでくるのだ。


「申し訳ございません。順番にお並びいただいておりまして」

店員が頭を下げていた。

「我々はこの後王宮に行かねばならないのだ。なんとかならないのか」

その横にいのはロベール・ブラスク侯爵令息だ。こいつは王子の側近でその事を鼻にかけているいけ好かない男なのだ。


王宮に行く用があるなら、こんな所に並ぶなよと私は思ったし、皆心の中で思ったのだ。


「そんなに急いでいるなら、こんな所で並んでいないでさっさと行けよ!」

私の横で大声で叫んだ奴がいたのだ。


そうだった。お義兄様は曲がったことが大嫌いだった……

私は頭を抱えたくなった。

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ここまで読んで頂いてありがとうございます。

黙っていられないお義兄様。他の貴族とは絡みたくないのにエリーゼはどうする?


続きは明日です


フォロー、☆☆☆を★★★にして頂けたら嬉しいです(*ᴗ͈ˬᴗ͈)⁾⁾






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