第4話 行きたかったカップル限定のお店にお義兄様が連れて行ってくれることになりました
その後、レオンお義兄様はお義父様に今回の件は報告すると言いだしたのだ。
お義兄様は何を言ってくれるのだ。私は母が気にしていた母の母国のこのサンタル王国をなんとか存続の方向で持っていこうとしているのに!
お義父様に私が王子にないがしろにされているなんて知れたら、親バカ丸出しで勝手に帝国軍を動かしかねない。
そんな事したらこんなちっぽけなサンタル国なんて一瞬でこの世から消えてしまうではないか!
それだけはなんとか阻止したかった。
「お義兄様、お義兄様はお母様が愛したこの国が無くなって、お母様がお墓の中で悲しまれて良いと思われるのですか?」
私は最後の手段に出たのだ。母が泣くと言われれば義兄も黙ると思ったのだ。
「いや、俺は母上はむしろこの国のボケ王子にないがしろにされている、エリの事を嘆き悲しんでいると思うぞ」
レオン義兄様は負けていなかった。それを言われると反論できない。
でも、
「それはないわよ。私は今の生活を楽しんでいるもの」
私は断言したのだ。
お義兄様には言っていないけれど、私が給仕していたあの店はレオンお義兄様からもらった資金を元にしてC組の皆でお金を出し合って作ったお店なのだ。
料理は私が前世で母から習った家庭料理を中心に出していて、珍しい薄味が受けたのか大好評なのだ。夕食時なんて大混雑して下手したら1時間待ちもザラだ。流石にお昼時に全員が学園を抜け出してお店に出る訳にもいかないので、交代で学園を抜け出して、足りない人材はアリスを中心にバイトを雇って運営しており、午後の放課後からは私達学生が全面に入って夜まで運営しているのだ。
仕入れから調理、給仕まで全て私達が考えて運営していた。
まあ、ラノベ小説みたいに店を大成功して大儲けするほどまでは繁盛していなかったが、クラスの皆で食堂を運営するというのがとても楽しかった。
皆も、卒業したら、親の商売を継いだり、貴族の元に嫁いだり、王宮で働いたりするんだけど、絶対にこのレストランでやったことは今後の人生にとってプラスになるはずだった。
「まあ、王子のエリに対する扱いが親父にバレるのも時間の問題だとは思うのだが……
と言うか、今までバレなかったのが奇跡だ。アリスとセドリックがちゃんと報告していなかったからな」
氷の目線で二人を見るんだけど。二人共とても気まずそうにしている。
「私がお願いしたんだから、これ以上その件で二人を虐めたら絶交だからね」
私がムッとして言うと、
「ほおう、俺としては黙ってやっても良いと思ったんだが……」
お義兄様が胡散臭い笑みを浮かべて言ってくれたんだけど、この笑みは絶対に何か裏がある。安易に受けてはいけないのだ。
「何をすればいいの?」
私は取り敢えず聞いてみた。
前の時は確かお義兄様の学園の卒業パーティーで、御兄様の傍にいて、見目麗しいお義兄様目当てに寄ってくる公爵令嬢とか侯爵令嬢、果ては他国の王女様をはじき飛ばせとかいうとんでもないものだった。
私は甘味処として帝都で有名だったカフェギャオスのチョコレートパフェにつられて、我儘妹の振り全開で御兄様に纏わりつかされたのだ。あの時の隣国の王女様の怖い視線がいまだに忘れられない。
本当にあの時は最悪だった。
まあ、お義兄様と踊らされて一応社交界デビューできたけれど、周りの令嬢方の突き刺さるような視線がいまだに忘れられない。だってその後お義兄様は私以外とは踊らなかったのだ。何をしてくれるのだ。いくら面倒くさいからってちゃんと社交してくれないと困る。
周りから私が睨まれたではないか!
お義兄様の事だから私が我儘で私以外の人と踊ってはいけないって煩いんだとかなんとか絶対に言っているに違いない! その後会った令嬢方がとても冷たかったから。
まあ、私はお母様ほどきれいでもないから、その後も出たパーティーでは誘ってくれる人もお義兄様たち以外はいなかったし、一応デビューで誰も相手はしてくれなかったというレッテル張られることだけは無かったんだけれど……私の黒歴史には違いない。あんなことは二度としたくなかった。
「お、エリも物わかりが良くなってきたじゃないか」
「出来ることしかやらないからね」
私はお義兄様に釘を刺したのだ。二度とあんな悲惨なことはお断りだ。
「明日1日俺を連れてこの王都を案内してほしいんだ」
「えっ、そんな事で本当に良いの?」
私は驚いた。
もっとひどい事だと思っていたのだが、この国にはまだ見目麗しいお義兄様の事は良く知られていないからお義兄目当ての女もいないはずだ。だから私と一緒にいても、私が睨まれることは無いだろうと思う。多少は何でこんな地味な女が見目麗しいお義兄の横にいるのだとみられるかもしれないけれど……
それに、お義兄様の申し出は私にとって渡りに船だった。
「ああ、かかった費用はすべて俺が持つから」
「本当に! 私、一度で良いから行ってみたいお店があるの。でもそこはカップル限定だから私一人では行けなくて。お義兄様お願い。そこに連れて行って!」
私はお願いしたのだ。
そこは甘味処で、前世にあったようなフルーツパフェを売っているのだ。
クラスの中でもカップルの大半は行っているのだが、王族でもあり、私に関心のないアンドレ殿下が連れて行ってくれるわけはないし、それ以外の男連中は流石に殿下の手前私を誘えなかったのだ。
でも、お義兄様相手なら良いはずだ。最悪、殿下にバレた所で実の兄だと言えば良いだけだし、お義兄様は格好良いし、女の子にモテモテなのだが、私が聞く所はまだ彼女はいないはずだ。まあ、居たところで私は義理とはいえ実の妹だし、十二分に言い訳できる。
カップルの奴らがいかに美味しかったか、自慢してくれたその巨大パフェを本当に私は食べたかったのだ。
帝都ならば父達が煩くて行けなかったと思うが、ここはサンタル王国、御兄様の知り合いも少ないだろう。
私は断然やる気になったのだ。
「エリとカップル!」
なんかお義兄様は変な所で赤くなっているんだけど……
なんでだろう? 別に兄妹なんだから、問題ないはずなのに……
不思議そうに見ている私のことをアリスとセドリックが残念なものを見るように見てくれるんだけど……
「お義兄様。今日の部屋なんだけど、空いている部屋がなくて、なんだったら昔みたいに私と一緒に寝る?」
お母様が死んですぐに私が夜寝られなくて困っている時に時たまレオンお義兄様は私と一緒のベッドで寝てくれたのだ。
「今日だけだぞ、他の者に言うなよ」
と釘を刺してきたけれど、私を抱き締めて寝てくれたのだ。
私はその時のことが忘れられなかった。
いつもは意地悪してくれるお義兄様だったけれど、涙を流している私の背中を優しく抱き締めてくれたのだ。
「いくら妹とはいえ、流石にまずいだろう」
お義兄様がそう言うとアリスとセドリックが大きく頷いてくれた。
この国の王子とのことでいろいろ相談したいこともあったんだけど、仕方がなかった。
結局お義兄様はセドリックと一緒に寝ることになって、私は明日のことを考えると嬉しくて中々寝れなかったのだ。
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ここまで読んで頂いて有難うございます。
婚約破棄目前で悲惨なエリのはずが、義兄の登場で……
続きは今夜です。
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