クリスマス・イブ

 1963年 12月24日


 その日、クリスマス公演が千秋楽を迎えた後、シャーロットは先日結婚したばかりのガブリエルとノーラの家に泊まりに行った。

 2人は、オーガストもジェラルドもいないクリスマスを過ごすシャーロットを気遣ってくれたのだ。


 ガブリエルの両親、ジェラルドの父も加わってご馳走を食べていると、玄関のドアがノックされた。


 ノーラが玄関に出て対応する。

 聞こえてきた会話から推測するに、訪ねてきたのは電報の配達員らしかった。

 ジェラルドの父に宛てられたものだが、彼が留守だったので、近所の人に彼の居場所を聞いてここに来たそうだ。


 嫌な予感がした。


「ミス・ゴライトリー、私は恐ろしくて読めません。あなたが、読んでください」


 ジェラルドの父は言った。


 シャーロットは恐る恐る電報を受け取った。


 手が震えて、紙を持つこともままならなかった。


 ノーラが優しくシャーロットの手を掴んで、電報を広げた。


<ゴ子息、戦死ス>

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