セレナーデ

※※※


 第1幕が始まった時と同じ構成で、舞台セットが組まれていた。


 舞台中央に立つジェラルドが上手かみてのセットに向かい、『君に捧げる小夜曲』を歌っている。

 歌声を聞いてバルコニーに出てきたシャーロットが、彼の姿を見てはっと息を吞んだ。


 セレナーデを歌い終えると、ジェラルドは壁に絡んだ蔦を足場にしてシャーロットの部屋のバルコニーによじ登った。


「愛しいシャーロット、君にどれほど会いたかったことか。顔を上げて、その美しい顔を見せてくれ」


「その前に、どうか私を強く抱きしめてください。これが夢でないことを示すために」


 ジェラルドは、言われた通りにした。


「ジェラルド、ジェラルド、あなたなのね。戻って来られたのね」


 2人は、歓喜に溢れたデュエットを歌った。湖畔で歌ったデュエットのリプライズだ。


 あの日から10日間、あまりに多くのことが起こったので、2人で歌った日々が遠い昔に思えた。


※※※

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る