ワルツ
2人は顔を見合わせて笑い出した。
何が面白いわけでもないのに、なぜか笑いが止まらない。
ジェラルドは、シャーロットが笑うのを初めて見た。
あの美しい声が笑うと、鈴が鳴るように明るかった。
目をキュッと閉じて、口元に小さなえくぼを作って笑うのが、少女みたいで可愛らしい。
「さあ、ダンスを踊ったんだから、何を隠しているのか見せてよ」
「ダメよ、ワルツじゃないもの」
ジェラルドがシャーロットに1歩近づくと、シャーロットも1歩下がった。
今度は隠しているものを取り上げようと手を伸ばすと、シャーロットは自分の体を盾にするように、くるりと向きを変えて応戦する。
「それよ!」
「え?」
「この動き、ワルツと同じだわ」
シャーロットは微笑んだ。
そうやって、2人は向かい合ったまま、クルクル回って部屋中を動いた。
殺風景な屋根裏部屋の西の窓から差し込む光の上に、踊る2人がシルエットを伸ばす。
ふいに、シャーロットの背中が壁に達した。狭い部屋だから無理もない。
突然、ワルツは静止した。
ジェラルドは勢い余って半歩前に出てしまったので、2人の距離は深く息を吸えばお互いの身体が触れ合うほど、近かった。
「どうだい? ワルツを踊ったよ。何を持ってるのか見せてくれるかい? それとも……」
シャーロットが
ジェラルドはシャーロットを見つめた。
薔薇色の頬、空色の瞳、花びらのようなまつ毛。そして、木苺のように紅い唇……。
ジェラルドは少しだけ、シャーロットに顔を近づけた。
彼女も、自分と同じことを考えているだろうか……?
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます