第5話 スッペスッペインベインベ

ファミレスにて。高校の同級生女子三人の会話。

「…ところでさ、変な噂、知ってる?」

「何それ?」

「夏休みになってから、夜な夜な川上の幽霊が中学の同級生にひとりずつ

会いに来るって、噂。」

「は?なにそれ?冗談でしょ?」

「本当らしいよ…田中、吉田、さきちゃんも会ったって…」

「さすがにギャグでしょ!みんなでドッキリ仕掛けてるんだって。」

「でも、冗談にしてはちょっとネタにできなくね?あの子の話題、

あたしらの中ではタブーっしょ?」

「…まぁ、確かに。」

テーブルに流れる沈黙。

「ま、まぁいいや!そういう噂があるってだけ!あたしドリンクおかわりしてくるね!」

そう言って、かがりは椅子から立ち上がった。

「川上…」

春田はそう、ひとり呟いた。

ファミレスでの食事も終わった頃、「会」はお開きになった。近くの公園にて。

「それじゃ、撮るよ~!」

「うい~。」

「はい、チーズ!」

携帯のフラッシュ。三人の自撮りが撮影される。

「それじゃ、気を付けて帰ってね。」

「うん。かがりもね~。」

城山、春田、かがりの三人は十字路で別れた。

ひとりきりの夜の帰路。といっても、家はそこまで遠くない。

暗澹たる水面を映す川沿いを歩く。さっきの噂…まさかね。

と。

「はるちゃん。」

背後から、声がする。その声はどこか聞き覚えのある声だった。

まさか…?

「まさかと思うけど、あんた?」

「え?わかるの?覚えててくれてありがとう。はるちゃん。」

あたしは振り返る。

「うっそ…」

「驚かせてごめんね。そ。あたし。」

あたしは顔を強張らせて言う。

「今さらなに?化けて出たって言うことないよ。」

「え?そんなぁ…」

「あたしあんたのこといじめてた張本人だよ?当たり前じゃん。

まだやられ足りないの?」

「そんな…」

「あんたの両親が裁判に持ってこうと色々嗅ぎまわってんの、

ほんとウザいんだけど。」

「はるちゃん…」

「呼ぶな、キモい。」

「うう…」

「今さら出しゃばんな、っつーの。」

「相変わらず、ひどいね。」

川上は俯きながら歩いてくると、急にその速度を早めた。

なに…?

避ける間もなく、抱きしめられる。

「なにすんの、離せよ…!」

「はるちゃん、友達だと思ってたはるちゃん。はるちゃんはるちゃん。」

「やめろ!」

川上は信じられないくらいの剛力で、あたしはまるで金縛りにあったかのように動けない。

「鬱にしてあげる。」

そう、川上が耳元で囁いたと思ったら、途端…あたしの意識はブラックアウトした。

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