第15話 限定メニュー②
A「ごめん。ちょっと……っていうか、かなり、言ってる意味が分かんないんだけど……」
B「あら、そう? まあ、政治色の強い話題は、人を選ぶからね」
A「今の話が、政治……だと?」
B「じゃあ、もう少し女子のあなたが興味を持ちそうな話題として、クリスマススイーツのことを考えてみましょうか」
A「……はあ」
B「クリスマスに、イチゴとか生クリーム使ったケーキを食べるのって、当たり前だと思われてるけど……それって、実は日本だけらしいのよね」
A「あ、それは私も知ってる」
B「フランスだと、丸太みたいなロールケーキの『ブッシュ・ド・ノエル』。ドイツだと、レーズンとかドライフルーツが入った甘いパンの『シュトーレン』を食べるのが、一般的らしいわ」
A「どっちもキリスト教に関連してるっぽいから、クリスマスに食べるケーキとしては、本来はそっちのほうが正しいのかもね」
B「でも……嫌じゃない?」
A「……ん?」
B「ギリ、フランスのロールケーキの方はまだいいわよ? でも……ドイツの『シュトーレン』は……絶対嫌じゃない? 正しいとか間違ってるとか、歴史があるとかないとかどうでもよく……普通に、クリスマスにはクリームのケーキ食べたくない?」
A「おい、ドイツにケンカを売るな」
B「もしも私がドイツのキリスト教徒で、クリスマスに自分がレーズンパン食べてるときに、別の国のやつが隣でクリスマスに全然関係ないクリームケーキ食べてたら……嫉妬で、血の涙を流すと思う。っていうか、それを理由にキリスト教もやめるわ」
A「ただの、あなたの好みの問題じゃん……っていうか、シュトーレンのことレーズンパン言うな。あと、多分ドイツの人たちは、その程度の信仰心でキリスト信じてないから」
B「でもドイツ人も、絶対クリームケーキ食べれるほうがいいでしょ? 宗教のしがらみがなく、クリスマスに好きなケーキが食べられる私たちのことを、羨ましがってるでしょ?」
A「いやあ……シュトーレン食べつつ、食べたかったら追加でクリームケーキも食べればいいだけだと思うけどー……」
B「よく、クリスマスにケーキを食べたり、バレンタインにチョコを食べたりする日本人のことを、そういうイベントのもともとの発祥の国の人が笑ってる、なんて聞くけど……それってきっと、全部嫉妬よね? ことあるごとに言い訳をつけて、スイーツを食べている日本人のことを、内心は羨ましがってるのよ」
A「すごい新解釈だ……」
B「だから私……今度そういうふうに日本人のイベントをバカにする人に出会ったら、ケーキやチョコを食べながら言ってやろうと思ってるの。
『……それで?』って。『じゃあ、あなたの言う歴史的に正しいイベントでは、どれだけ美味しいスイーツが食べられるのかしらね?』、って」
A「それでマウントを取ってくる人、嫌いだわー」
B「結局のところ、人類の歴史っていうのは……『どうやって罪悪感なく糖分を摂取するか』ってことを考えてきた歴史なのかもしれないわね……」
A「うん、絶対違うよ?」
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