第16話

A(一年前)「……ふ、ふふ。……ふふふ」

B(一年前)「それから……クリスマスと言えば私、サンタについてもちょっと考えていることがあって……」

A(一年前)「ま、待って……」

B(一年前)「え?」

A(一年前)「ちょ、ちょっと待って……」



A(一年前)「はは……ははは……あははははー!」

B(一年前)「ど、どうしたの?」

A(一年前)「どうしたの……じゃないよー! も、もーうっ! 何、それ⁉ 最初からずっと、意味わかんないんだけど⁉」

B(一年前)「い、意味がわからない、って言われても……ただ私は、普段から思っていたことを話しただけで……」

A(一年前)「だとしたら、あなたすごい変だから! あ、もちろんいい意味でね⁉ 普段からそんな変なことばっか考えてるとか、面白すぎ! お笑い芸人のネタみたいじゃん⁉」

B(一年前)「そ、そんなつもりは……」


A(一年前)「つーかさ! 思い返してみると、あなたって今日、クリスマスバーレル買いに来たんだよね⁉ もしもマックにそれが売ってたら、今みたいにイートインしようとしてたってこと⁉ あれ、パーティー用だよ⁉ 一人で食べるもんじゃないよ⁉」

B(一年前)「え……そ、そうなの?」

A(一年前)「もーう! 間違えられるとこ、全部間違ってるじゃん⁉ そこまでくると、逆にすごいな!」

B(一年前)「だ、だって……誰にも相談とか、出来なかったから……」



A(一年前)「……ん? あれ? つーか……これから家族とか友だちのとこに行く、とかではないんだね? パーティーがあるから、おつかいでバーレル買いに来た、とかではなく? ってか、こんなとこで一人で夕食済ませちゃってるってことは、家に帰っても一人、とか……?」

B(一年前)「ええ。うちは母子家庭で……お母さんは今日だけじゃなく、いつも夜に出勤して、帰ってくるのは朝だから……」

A(一年前)「あ、ごめん。あんま、聞かないほうがいい話題だったね?」

B(一年前)「いえ、別に。それは私を養うためにお母さんが頑張ってくれてるってことで、恥ずかしいことじゃないから。それに……」

A(一年前)「……それに?」

B(一年前)「あなたも、そうなのかな……って思ってたんだけど……」

A(一年前)「え? あ……ああー」


A(一年前)「いやー、こんな日に一人でマック食べてたから、そう思わせちゃった? でも……うちは、むしろ真逆かな。親は一応両方揃ってるんだけど、顔を合わせればいっつもケンカばっかしてて。しかも、どっちもいろいろとだらしなくて、今もきっと、お互いに別の相手と一緒にいると思う。普通に、人様に見せるのが恥ずかしい感じの両親」

B(一年前)「そ、それは、何ていうか……ごめんなさい」

A(一年前)「あ、全然全然気にしないでー? どんだけ親が最悪でも、それで私の価値が下がるとか思ってないしー? つーか、むしろ反面教師としていろいろと学ばせてもらったお陰で、結構いま、面白おかしく生きてるしー」

B(一年前)「……強いのね」

A(一年前)「まあ、ねー。つーか……そうじゃないと潰れちゃう環境にいたから、仕方なく、って感じかなー」

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る