第14話 限定メニュー①
B「そもそも、クリスマスに食べるのは七面鳥でしょう? どうしてフライドチキンを食べなくちゃいけないのよ?」
A「知らないっすよ。……っていうか、食べなくちゃいけないことはないでしょ」
B「どうせ、土用丑の日にウナギを食べるようにしたみたいに、裏で手を引くコンサル的なやつがいて、無理矢理チキンを食べるように誘導したのよ! なんか……そういうのに踊らされるのって嫌じゃない⁉」
A「嫌なら食べなきゃいいじゃないっすか……」
B「だから私も、クリスマスに食べる新しいメニューを考えて、チキンの代わりに流行らせたいと思ったのよね」
A「あ、そっち側をやりたがるんだ? 意外と野心家なんすね」
B「まず……クリスマス=チキンという強固な構図がある現状を崩すには、それをよく思っていない人たちを味方につける必要があると思うの。現体制に不満を持つ集団を取り込んで、数で負けている分をカバーしなくてはいけないわけよ」
A「……ケンタに、
B「そこで私が選んだのは、クリスマスだからってチキンのメニューしか売れないことに日頃から不満を持っている連中……つまり、寿司屋ね」
A「そうなの?」
B「全国に数万店はあると言われている寿司屋チェーン店に働きかけて、反乱軍を結成するのよ」
A「うわー、物騒。軍とか言っちゃってるし」
B「そして、『クリスマスにはチキンではなく巻き寿司を食べよう』というスローガンを掲げて、全国のケンタッキーにやってきた客の口に、強引に巻き寿司を詰め込む!」
A「もはや、タチの悪いテロリストじゃん!」
B「当然、その巻き寿司にはクリスマスカラーを意識して赤と緑……つまり、赤身のマグロとキュウリを入れるでしょうね。きっと最初は、チキンを食べようと思っていた客たちは私たちの活動に抵抗するでしょうけど……やがてその巻き寿司の美味しさに気づいて、言葉を忘れて無言で巻き寿司を食べ進める」
A「ご都合主義だな……」
B「クリスマスにとって大事な存在、プレゼントをくれる幸運の象徴であるサンタクロースがやってくる方向――すなわちフィンランドの方角を向きながら、無言で巻き寿司を食べることで、その年の幸福を願って……」
A「っていうか……それ、あるよ? その年の恵方を見ながら巻き寿司食べるイベント、もうあるよ? ニ月ごろに、昔のコンサルが仕掛けたイベントとして、すでに定着しつつあるやつだから。
あと、十二月にその年の幸福願っても、もうだいぶ手遅れじゃね?」
B「そして、寿司によって世界統一を果たした私たちは、それを祝うパーティーを始めるのよ」
A「こっちの話聞いてないな」
B「そのパーティーを彩るのは、美しいイナリネーション……」
A「イルミじゃなくてイナリ? ……いなり寿司ってこと?」
B「アイナメントで飾り付けられた甘酸っぱいクリスマスガリーを囲んで……」
A「アイナメ? ガリ?」
B「そして、みんなで声を揃えて……ノリー、シャリ酢飯!」
A「メリークリスマスみたいに言うな!」
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