第2話
B「『お盆』って行事、意味わかんなくない?」
A「いや、分からないことないでしょ……。ご先祖様をお迎えする、大事なやつですよ?」
B「キュウリとナスで馬と牛をつくって置いておくと、それに乗って先祖の霊が帰ってきてくれるのよね? 来るときは早くきてほしいからキュウリの馬で、帰りはゆっくり帰れるようにナスの牛で、って」
A「地域によっては逆のパターンもあるっぽいけどねー」
B「でも……仏教って、死んだら輪廻転生するんじゃなかった?」
A「え」
B「四十九日に審判が下って、故人の生前の罪によって魂の行く先が決まる。もう一度人間に生まれ変わったり、動物になったり……。でもどれになるにせよ、一回転生しちゃった人の魂って、帰ってこれるものなの?」
A「そ、それはー……」
B「もし、あなたが前世で作った子供……あなたの前世の子孫が、お盆にキュウリの馬を作ったら、転生したあなたの魂がそれに乗って子孫のところ行かないとじゃない? お盆の間、魂が抜けたあなたは死んでしまうんじゃないの?」
A「い、いやいや……」
A「た、多分あれだよ、宗派的なやつが違うんだよ。お盆をやる宗派は、転生しないんだよ。ご先祖様は四十九日に速攻で極楽浄土に行けちゃって、みんなずっとそこにいるから、お盆でも気軽に戻ってこれるー、的な……」
B「でも……極楽浄土って、この世のあらゆる苦痛とか煩悩から解放された場所じゃなかった? 子孫に会いたいって煩悩もなくなっちゃってたら、帰ってきてくれなそうな気もするけど?」
A「い、いや、だから、その……」
B「あ、もしかして。お盆に帰ってきてくれる先祖って、四十九日になっても輪廻転生できなくて、極楽浄土に行けるほどの悟りも開けてないような……。『大学デビューに失敗して居場所がないからって、ちょくちょく後輩に会いに来る部活のOB』のような存在で……」
A「おおーいっ⁉ 絶対違うから! 日本の伝統行事を、残念な先輩扱いするんじゃねーよ!」
B「あと精霊馬も、実はナスの牛っていらなくない? 普通に、どっちも馬で最速で移動したほうが時短になって便利でしょう? 旅行するのに、行きは新幹線で帰りだけ普通電車に乗る人、あんまりいないと思うのだけど?」
A「っていうかこの話題、もうやめよう⁉ バチ当たり過ぎるって! 絶対どっかから怒られるって!」
B「そうなの? 私はただ、自分が疑問に思ったことを口にしただけなのだけど?」
A「く、詳しくは知らないけど、全部きっと、なんかいい感じの理屈があるんだよ! 宗教やる人って、そういう設定考えるの上手そうでしょっ⁉」
B「……あなたのそれも、なかなかのバチ当たりな気がするけどね」
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