第3話

B「もっと意味が分からないと思ってるのが……夏になるとテレビとかの特集で、怪談が増えることね」

A「それは、あれでしょー? 身の毛もよだつような怖い話で、夏の暑さを乗り切りましょう、的なやつでしょー? ……ってか」

B「一応、科学的な根拠もあるっぽいけど……正直全然信じられないわ。だって私、それで涼しさ感じたことないんだけど? うっかり怖い話聞いちゃっても、ただ暑い状態に怖い状態がプラスされるだけで、余計不快になるんだけど?」

A「あれ? あれれー? もしかしてだけどー……Bちゃんって、怖い話が苦手、的なー?」

B「だいたい、それで暑さをしのいでたのって、大昔の話でしょっ⁉ 今はエアコンがあるんだから、そんな方法で涼む必要ないわよね⁉」

A「お、無視した。これ、絶対怖い話嫌いじゃんっ」


B「そうよ、悪い⁉ っていうか、怖い話が好きっていう人のほうがどうかしてるのよ! まして、夏だからって怖い話を聞かせようとするのなんて、絶対何らかのハラスメントでしょっ⁉ あと五年もしたら、きっと法律で禁止されてるわよ!」

A「残念ながら、江戸時代からずっと続いてる風習なんよね」

B「で、もっと腹立たしいのが……夏に涼むために怪談するっていうんだったら、じゃあもともと涼しい季節には怪談しないのか、って言ったら……別にそんなことはないの! 夏に怪談するやつは、秋にも冬にも怪談するのよ!」

A「ま、まあ、一番多いのは夏だろうけど……」

B「何が、『これは、ある人が雪山で遭難して、無人の山小屋で一泊したときの話なんだけど……』よ⁉ 何が、『秋の夜長にピッタリの恐怖話……』よっ⁉ 結局オールシーズン怪談するじゃないの! その、怪談への異常な執着はなんなのっ⁉」



A「わ、分かったよ、分かったから。とりあえず、Bちゃんの前では怖い話とかはしないようにするから」

B「本当に、お願いよ⁉ 今日のあなたの友だちたちにも、よく言っておいてよね⁉」

A「はいはい…………って、ん? 友だち、たち?」

B「……え?」

A「今日お祭りに一緒にきた友だちは、一人だけだったと思うんだけど……」

B「そ、それって…………ひっ⁉」


A「えっと、ごめんなさい……冗談、です」

B「……っ⁉ ……! ……!」

A「ご、ごめん……ほんと、ごめん。……ま、まさか、ここまでとは」

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