第2章
第24話 属性チェック
★三行で分かる(?)第1章
・転生したらゲーム世界で、ざまぁキャラ、ゲイルの召喚獣だった
・そのゲームでの主人公キャラは、とある理由で臆病な性格となっていた
・ゲイルは原作通り嫌われてはいるが、色々な事情から慕ってくれる人もいる
☆花
「バァァァァカヤロォォォォォォォォォ!!」
「そうか。まぁ、そういうこともあるよな」
ゲイルの通うスキハ学園には、生徒達が暮らす寮がある。
基本的には実家が近くとも、この学園の生徒はこの寮で暮らす規則となっている。
そんな寮の一室。ゲイルの部屋で、花は愚痴を聞いている。
いきなり叫ばれると驚きはするのだが、以前よりはこちらの方が良い。
以前までのゲイルは、ストレスが溜まるからという理由で、思ったことを表に出していた。そんなゲイルに、気に入らないことがあれば表に出すのではなく、後で自分に愚痴って欲しいと花が言ったのだ。
そのおかげか、口の悪さはほぼ変わらないが、誰かを傷付けるような危ない発言は少なくなった。ちなみに召喚獣と召喚主は脳内で会話ができるので、その場で愚痴を言われる時はある。
「そろそろ寝るか」
怒りが収まったのか、ボサボサ銀髪ヘアのゲイルはスッキリとした表情で言った。
「そうだな。僕もそろそろ眠くなってきたし、それに明日は……」
ゲイルは邪悪な笑みを浮かべながら、花の発言に続く。
「アーツの授業だからなぁ!」
◇
翌日。
「では今回は待ちに待った、アーツの授業です」
アーツの授業は校庭で行うようだ。
確かに、室内では危険だろう。
アーツについて教えるのは、眼鏡をかけた優しそうな担任の先生であった。
どうやら、アーツの授業も担当しているようだ。
「アーツというのは、技のことです。基本的には【魔力】を消費して使うことになります。ですが、発動にはコツがいります。今日はそれを学びながら簡単なアーツの練習をしてみましょう」
この世界では魔法のようなものも、アーツとして扱われている。
ただ武器や物体を使用しないアーツは、魔法系アーツと呼ばれていることもある。場合によっては魔法と呼ぶ者もいるが、設定的には全てアーツである。
「今回は、属性ボールアーツについて教えます。例えば、炎属性でしたらファイアボールですね。その前に、今回の授業で使うこれをプレゼントします。順番に取りに来てください」
先生がダンボールを開けると、その中にはビー玉くらいの大きさの水晶玉が沢山入っていた。生徒は皆先生の指示通りそれを取る。
「属性アーツは、残念ながら生まれ持った才能が無ければ使うことはできません。もっとも、どれか1つの属性は誰しも持つので、心配は要りません」
この世界では、“基本的には”電気・水・炎・風・地の5つの属性に分けられる。
「そのミニ水晶玉を1分くらい握ってください。すると色が変わるハズです。黄色なら電気属性、青なら水属性、赤なら炎属性、茶色なら地属性、緑なら風属性になります。どの属性も素晴らしいので、どれが出ても当たりですよ」
と、先生は言うのだが……
『俺は炎属性がいいな! 地属性はなんかダセーから嫌だな!』
ゲイルが脳内で花に向かってそう言ったが、残念ながらゲイルはそのダセー属性だ。
ちなみに花自身、別に地属性はダサいとは思わない。
(ああ……これはゲイルキレるだろうな……)
主人公補正という言葉をご存知だろうか?
この世界はSHFというゲームが元となっており、その主人公はミストだ。
そんな彼は、何属性の才能を持っているのか?
それは……
「あ、あの先生! なんか全部の色にランダムで光って、後は白とか黒にも変わるんですけど、これって……」
1分後、ミストは自信なさげに先生に言った。
すると先生は目を見開いて驚いた。
「そ、それは……ぜ、全属性ってことじゃないですか!? そんな方、今までに1人しか見たことありません!!」
全属性。その名の通り全ての属性の才能を持っているということだ。
そう、ミストは全ての属性アーツを使えるようになる天才なのだ。
先生だけでなく、ゲイル以外の生徒はミストに注目する。中には「すげー」などと、声に出している生徒もいる。それはそうだろう。
『っざっけんじゃねぇぞ、クソガキがぁ!!!!』
『ま、まぁまぁ。あ、ほら! ゲイルの水晶玉も光ってるぞ!』
ゲイルの手の平には、茶色に光っているミニ水晶玉があった。
『茶色だと……? クソダサ属性じゃねーか!』
繰り返すが、地属性はダサくない。
(原作のゲイルは、属性アーツを使わないんだよな。そんなに地属性嫌か?)
と、ここで金髪ツインテールのローナが手を挙げて発言する。
「先生! ミストが全属性を持っているのは分かりましたが、白とか黒ってなんなんですか?」
「いい質問ですね。一言で言うのならば、光属性と闇属性です」
光属性と闇属性はかなりの激レア属性だ。
激レア属性なハズなのだが、この世界はSHFが元になっている。
ということは……
「先生! 私も白と黒です! お揃い!」
天真爛漫な少女メグが手を挙げる。
そう。メグも光属性と闇属性の才能を持っているのだ。
もっとも、メグは闇属性を使いこなすことはできなかった為、闇属性の才能があるのは死に設定と化してしまっている。それもあり、実質的には光属性だけである。それでも十分過ぎる程に天才なのだが。
「ええ!? 本当ですか!? ど、どうなってるんだ今年は!」
「あ、でも、白と黒だけだからそんなに凄くないですよね……」
「それでも十分凄いんですよ!!」
普段は大人しい先生であったが、メグの無自覚っぷりに思わずツッコミを入れてしまったようだ。まぁ、今聞いたばかりでは無自覚なのは仕方がないと言えば仕方がないのだが。
『俺のパーティーおかしいだろ! ざけんな!』
口は悪いが、ゲイルの言うことはもっともである。
ゲームだからと言えば仕方ないが、主人公のパーティーは色々と凄い。
「はぁ……私のパーティーどうなってるのよ」
声がした方向に花とゲイルは顔を向けると、ローナの手の平にあるミニ水晶玉が、黄色・赤色・青色に光り輝いていた。
それを見た先生がローナに言う。
「ローナさんも十分凄いですよ。3属性の才能を持っているのは、100人に1人と言われていますからね。もっとも、属性の数や種類で全てが決まる訳ではありません。それだけは忘れないでくださいね」
と先生は言うが、実際にネットではゲイルを笑う者も多かった。
まぁ、SHFのゲイルはざまぁキャラとして生み出されたキャラなので、わざとゲイルだけ地属性オンリーに設定したのだろう。かわいそうではあるが、流行的には仕方がないのかもしれない。ゲームは商品だ。作った物を多く売り、金銭を得なくてはならないからだ。
「では、皆さん。私がこれから教えますので、実際に属性ボールアーツを発動させてみましょう。その後は……」
先生はゲイルをチラリと見る。
「地属性の素晴らしさを語りましょう」
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