第15話 屋上で昼食

 花とゲイルは、昼食を食べに屋上へとやって来た。

 ちなみにゲイルの手には、彼自作の弁当がある。


「なんかすみません……」

「お前には、秘密をはいてもらわないと困るからな」

「えっと、ですから僕は特に何もしていなくてですね……あ、でもありがとうございます! 実は一緒に食べる人がいなくて……」


 男の娘であるリアも一緒だ。

 何やらゲイルはリアが自分より目立っていたことが気に入らないと思いつつも、一体なぜあんなに目立っていたのかの秘密を探ろうとしているようだ。もっとも、リアの言ったことが全てで、秘密などないとは思うのだが。


「お! 来たな!」


 本来であれば屋上は進入禁止の場所であることが多いのだが、流石ファンタジー世界。屋上は解放されている。

 先に待っていたミストが手を振るが、隣にいた人物を見て花とゲイルは驚いた。


「アミル!?」

「アミルちゃん!?」


 メイド服を着た少女アミルが、兄であるミストの隣に座っていた。

 彼女はまだ10歳だ。当然ここの学校の生徒ではないハズなのだが、なぜここにいるのだろうか? 確かに、彼女の家から30分もあればここへ来ることは可能なのだが。


「こんにちはです! 驚きましたか? ふふん! 実は私、ここで働くことになったのですよ!」

「立派なメイドになる為か? つーか、どうやってここで働けるようになったんだ?」

「必死にお願いしました! まぁ、ほとんど無理やりって感じでしたけど……いいですよね!」


 それに対し、ゲイルは感心したかのように首を何回も盾に振る。


「ああ! 夢を叶える為には手段を選ぶな! これは俺の人生で会った中で一番素敵な人間が言っていた言葉だ」

「素敵な人ですか……もしかして、好きな人ですか?」


 アミルはシュンと下を向いた後に、困ったような表情でゲイルを見た。


「ああ、俺の大好きで大切な人だ」

「そ、そうですか……」


 なぜここまでがっかりしているのだろうか?


(というか、ゲイルは好きな人いたんだな)


「誰のことか教えて欲しいか?」

「は、はい……」


 ゲイルはドヤ顔で、その大好きで大切な人について答える。


「俺自身だよ!」

(うわ)


 ナルシスト過ぎる発言だ。


「まぁ!」


 だが、アミルはその発言にドン引きすることなく、パァッと顔を明るくさせながら両手を合わせた。


「あの……時間無くなっちゃうから食おうぜ?」


 呆れた顔でミストが言うと、「それもそうだなぁ!」とゲイルは元気よく答えて弁当を広げる。


「あれ? その子は新しい友達?」


 ミストがリアを見ながら言う。


「あ、はい」

「へぇ、違うクラスの子と友達になったのか! 名前は? 俺はミスト!」

「リアです」

「おう、そうか! 一緒に食おうぜ!」

「迷惑じゃないですか?」

「別に?」


 ということで、4人と1匹で食べることになった。


「ヘッヘッヘ!」


 ゲイルは自分の弁当から茶色い卵焼きを取り出して笑う。


「なんだかお菓子みたいな匂いがしますね!」

「だろうなぁ! こいつにはチョコレートが混ぜ込んであるからな!」

「美味しそうですね! 実は私も卵焼きを作って来たんですよ!」


「僕のお弁当にもあります」

「ボクのにもあるな」


 花は水のみなので除くとして、全員のお弁当に卵焼きが入っているようであった。

 それを聞いたアミルの提案により、卵焼き食べ比べ会が始まった。


(さてと、僕は今の内に状況を整理しておこうかな?)


 ゲイルの口の前にアミルとリアが卵焼きを持って行き、食べるのを急かされゲイルがキレそうになるが、気にしないで状況の整理をする。


 まず今のゲイルの仲間についてである。

 パーティーメンバーかどうかは関係無しに、今ここにいるメンバーを仲間としておこう。


 (アミルは勿論のこと、リアも結果的にとはいえ、ゲイルに助けられているからな。おそらくこれからもゲイルが余程変なことをしない限りは仲良くしてくれるハズだ。ミストに関しても妹を助けられた恩があるからまぁ、ゲイルがパーティー追放をしようとしない限りは大丈夫だろう)


 改めてそれぞれについておさらいをする。


 【ミスト・ラシル】。この世界の元となったSHFの主人公だが、妹を失っていない為か、臆病な性格のままだ。特にモンスターが怖くて仕方がないようだ。また、花が人間の言葉を話すことを知る数少ない人間である。性格のせいもあるが本編の覇気もない。本来の年齢よりも幼い外見と合わさり、もし今の彼がSHFに出ていたら、ショタキャラだろう。


 【アミル・ラシル】。こう言っては失礼だが、本来のSHFでは物語開始時点で既に亡くなっているキャラである。だが、花とゲイルのコンビネーションによりモンスターを撃退したことにより、今も元気だ。ゲイルの一言により、メイド服を着るようになる。また、アミルも花が話せることを知る数少ない人間である。10歳の女の子なのでSHFに出ていたとしたら、ロリキャラだろう。


 【リア】。フルネーム不明。どう見ても女の子だが、実は男らしい。女子生徒の制服を着ているということもあり、完全に少女である。リアに関しては本編に出て来ていない為、モブキャラだったと考えられる。強さは未知数なので、もしかすると強力なスキルを取得するかもしれない。SHFに出ていたとしたら、男の娘キャラだろう。


(こんな感じか。あ、そうだ)


 一応ミストに、なぜローナ達を誘わなかったのかをいておこう。

 特にメグに関してはスキルの取得にミストの存在が大きく関わっているからだ。


(スキルが覚醒する時に、メグの言った言葉を聞く限り、誰かをラブ的な意味で好きにならないと駄目っぽいんだよなぁ)


~「私も一緒に戦いたい! ミスト君の力になりたい! だって……私、ミスト君のことが好きだから!」~


 ミスト本人は肝心な所が聞き取れなかったようであったが、プレイヤーはここでメグがミストのことを好きだということを確信することになる。


(つまり、覚醒に必要なのは好きな人……ライクじゃなくてラブ。え? これミストの性格も変わってるし、もしかしたらマズいんじゃないの?)


 メグまでスキルを取得しないのだとしたら、更に厳しくなる。

 なぜかと言うと、メグのサポートスキルは強力だからである。


 効果の方は、相手のスキルやアーツを解析し、その効果を知ることである。


(待てよ……? これならなんとかなるんじゃないか?)


 簡単に言うと、メグのスキルは知識を得る為のスキルだ。

 描写があるシーンに関しては、メグが分かりやすく敵の能力を解析して伝えているシーンが多い。メタ的に言うと、プレイヤーへの能力の説明だろう。敵に能力を喋らせることなく自然にプレイヤーに伝えるすべは、流石だと言いたい。


(知識なら、僕にもある!)


 これなら、メグが覚醒しなくともなんとかなるかもしれない。

 でも、一応訊いておこう。


「なぁミスト。どうしてローナとメグを誘わなかったんだ?」


 リアには聴こえないように、ボソッとミストの耳元で言った。

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