第14話 制服

『他のパーティーの宝石をぶっ壊してもかまわねーんだな?』

『ああ。一応ルール違反じゃないし、ある程度はシナリオ通りじゃないと狂いが出るからな。ただ、間違ってでも怪我だけはさせないでくれ。後殺すのだけは、何があっても絶対駄目だ』

『わーってるって。つーか、殺しは趣味じゃねーし』

(確かに、ゲイルは直接ミストを殺そうとしなかったもんな)


 翌日、登校しながら明日のオリエンテーションについて、花はゲイルと脳内で会話をしていた。


『ただ黒板の内容をノートに写すだけだと、あんまり覚えないらしいぞ』

『ああ!? だったら、どうすりゃいいんだ』

『僕もそうやっていたからね。正解は分からない』


 授業中、ゲイルは意外と真面目に授業を受けていた。

 そして昼休み。


『ちっ、面倒だ』

『まぁ、たまにはいいじゃないか』


 ゲイルはミストに一緒に昼食を食べないかと誘いを受けていた。

 原作であれば、ミストはローナとメグを誘っていたハズだったのだが……。


(どうしてゲイルを誘ったんだ?)


 そんなことを考えながら、花はゲイルと一緒に屋上に向かうが、その途中でとある光景を目撃してしまう。


「お前だけだぞ、そんなの着てるの!」

「お前男だろ?」


「い、いや……その……」


 1人の少女……に見えるが、肉体的にはおそらく少年なのだろう。

 制服も女子生徒用の物を着ており、どう見ても少女にしか見えないのだが。


 その人物は2人の少年に、馬鹿にするようにからかわれていた。


(見ていて気分が良い光景じゃないな)


 花がそう考えていると、ゲイルはニヤリとしながら歩き続ける。

 ゲイルはマントをバサッと、手でなびかせながら廊下を歩く。


 そして、その少年達の隣を通り過ぎる。

 だが、少年達はゲイルを見ようともしなかった。


 ゲイルはドヤ顔で下手なムーンウォークを披露すると、もう一度少年達の隣を通り過ぎる。

 するとゲイルはの顔はどんどん不機嫌になっていき、彼らに対して叫んだ。


「おい!」


 ゲイルの体は小刻みに震えていた。

 この震え方は、おそらく怒りだろう。


『ゲイル……そうだよな』


 感心した花は、ゲイルの脳内に語り掛けた。


『ああ、ふざけてる!』


 ゲイルは意外にも優しいのだ。

 きっと今の行為を見て、怒りを感じているに違いない。


「なぜ俺を見ない?」

(え?)


 予想外の言葉がゲイルの口から飛び出した。


「他の奴らは俺を見ている……! なぜなら俺は特別な存在だからだ!!」

「な……!?」


 少年達は振り返り、ゲイルの姿を目に入れると、固まってしまう。

 どうやら、先程まではゲイルに気が付かなかったようだ。


「お前らはそいつしか見てねぇ……!」


 ちなみになぜ皆がゲイルを見ているかと言うと、おそらく服装のせいだ。

 この学園の制服は白を基調としたものなのだが、黒を基調とした制服を選ぶこともできる。それを着ているのはゲイルのみだ。黒を基調とした制服の場合は、赤いマントと金のゴツイ肩当てをセットで装着しなくてはならない。その為、明らかに浮いてしまう黒の制服を選ぶ者は、ゲイル以外いなかった。


「あ……あの制服を選ぶ奴がいたのか!?」

「そ、そういえば……確かクラスで噂になってたな……。別なクラスで黒の制服を選んだやばい奴がいるって……」


 少年達2人がゲイルについて話し始めた途端、ゲイルは少し機嫌が良くなったようで、「フッ!」と笑っていた。


「ま、俺は英雄だからな! 普通の奴には真似できねぇ!」

「英雄……? そ、そうなのか……?」


 少年の一人が困惑しながら、ゲイルにいた。

 確かにアミルを救ったことは事実であるが、自分からそのようなことを言う者はあまりいないだろう。


「ああ! モンスターからガキを守った最強の英雄だ!」

「モンスター? どうせスライムとかだろ?」


 2人目の少年が笑いながらゲイルに言うが、ゲイルは、「待ってました」とでも言いたげな表情で言い放つ。


「デスドラゴンだ!」

「「嘘だろ!?」」


 ゲイルは格好をつける為だろうか? 剣を引き抜いて、刀身を白目になりながら舐めた。

 だが、正直ただ怖いだけである。


 それを見た少年2人はドン引きしたような表情をすると、どこかへと去っていった。

 ゲイルは刀を鞘に納める。


「あの……助けてくれてありがとうございます。あ、僕リアって言います! この御恩は忘れません!」

「あ? 助けてねぇよ」

「え?」

「俺より目立ちやがって……!」

「目立つ……?」

「ああ。お前何したらあんなに目立ったんだ? 言え!」

「目立った理由ですか……」


 リアは目立った理由を少し怯えながら、ゲイルに話した。

 その理由とは、リアが女子生徒の制服を着ているからというシンプルなものであった。どう見ても少女……主に二次元では男のと呼ばれるような存在であるリアだが、肉体的には男性の為、それをからかわれていたという訳であった。


 だが、ゲイルはそれを聞いて軽くキレる。


「ざけんじゃねぇぞ!」

「ひっ……!」

「んな少し違う服着ただけで、目立つわきゃねーだろうが!」

「え?」


 怯えていたリアであったが、真顔になったかと思うと、少し表情が柔らかくなった。


「他に何をしたんだ?」


 どうやらゲイルにとっては大した問題じゃないように感じたらしく、何か他に目立つような行動をしたのだと思ったのだろう。


「え……本当に何もしてないんですけど……やっぱり、ほら僕男ですし……」

「俺も男だ!」


 言葉の意味を理解していないのか、自信満々にゲイルは即答した。


「それかあれか? 無自覚に何かやっちまったってことか?」

「そうでもないと思います……」

「けっ……! まぁいい。いずれお前の秘密を暴いてやる」


 ゲイルはそのまま立ち去ろうとするが、リアはゲイルを呼び止める。


「あの、今からどこに?」

「ガキと飯だ」

「ガキ……?」


 ミストのことだが、当然リアがそれを分かるハズもなく、首を傾げていた。


(そういえば……メインキャラにこんなキャラいたっけ?)


 花もまた、頭を悩ませていた。





★★★★★

タイトル・あらすじを変更いたしました。

ヒロインと名前が微妙に被る為、今回出てきた新キャラの名前を調整しました。

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