第10話 入学式

 そして数日が経過した。

 花達は特訓を続ける日々を過ごしたが、花に関しては相変わらず、低威力のリーフカッターしか出せないでいた。対するゲイルはと言うと元が中々に強い為、どのくらい強くなったかは分からないが、アーツに関しては獲得できないでいた。


 アーツに関しては基本的に取得が難しいので、学園などで力を付けていき身に着ける者も多い。

 花に関してはモンスターなので、おそらく最初から取得状態だったのだろう。それにしても、威力が弱すぎるので、学園での強化を望む。


「それにしても……ゲイルって努力家なんだな」

「当たり前じゃねぇか! 最強でいる為には必要なことだっつーの!」


 意外であった。ゲイルは自分より優秀な者をよく妬んでいた。そして、周囲を見下し他責思考だ。おまけにそれを内にとどめておかずに、表に出す。

 こういったキャラクター性から、努力をせずに才能だけで天狗になっているキャラだと思っていたのだが、実際はかなりの努力家であった。


「お前も、もっと強くなってもいーのにな」

「どうした急に」

「いや、お前も中々に頑張ってるじゃねぇか! だったら、後少し強くなんなきゃおかしいと思うんだよな」

「なんか、ごめんな。一応君の召喚獣なのに」

「ちげーよ! お前は悪くねぇ。ただ理不尽だと思っただけだ」


 ゲイルは優しい所もある。


「ま、頑張っても駄目なことなんて色々あるさ」

「そうか? 頑張ったんならそれなりの結果が出ねぇと、ムカついて来ねぇか?」

「どうだろう」


 今はムカつかないが、人間時代そういった感情を抱くことは多々あった。

 ただ、悪役にだけはなりたくなかったので、それは決して表に出さなかった。


 結果が全てなのだ。だから、そういった感情を表に出してはいけない。周りから見たらただ能力が低い者がワガママを言っているように感じるだろうから。

 花が今までゲイルを努力をしない人間だと思い込んでいたように周囲からすれば、能力がなく周囲に迷惑をかけていた人間時代の花も、そういう人間だと思われていた可能性は高い。だから、これは正しいことなのだ。悪役は出しゃばらない。きっとそれは正しいことだ。


「急にどうしたんだ? やっぱムカついたのか? ムカついた時は叫ぶといいぞ!」

「いや、ちょっと懐かしいことを思い出していてね」

「そうか。それにしても、明日は入学しだぜぇ! ヒャハハハハ! 俺の力を見せ付ける時がようやく来たって訳だぁ!」


 ゲイルは白目になりながら刀身を舐めると、ニヤリと笑った。



 白い校舎、まるでお城のようだ。

 本日から、花達はここに通うことになる。


「ヒャハハハハハハ! 皆普通の制服を着てやがる!」


 制服は基本的に男子生徒がズボン。女子生徒がスカートだ。

 白を基調とした制服は、高級感をただよわせていた。


 ちなみに一応裏設定で、逆の制服を選ぶこともできることにはなっている。


「皆、俺を見ているなぁ!」

(は、恥ずかしい。いや、別に個人の自由だけどさ!)


 ゲイルが着ている制服は、皆とは違う。

 黒を基調とした制服に、ゴツイ金色の肩当てに赤いマントを羽織っている。


 ゲイルは原作でも一人だけこのような制服を着て登校している。

 別に校則違反という訳ではない。実はこのように黒の制服を選ぶこともできるのだが、ゲイル以外誰も黒を選んではいない。なぜなら黒い制服を選ぶと、肩当てやマントも制服の一部としてセットで装着しなくてはならないからだ。


「ここが俺のクラスかぁ!」


 舌をペロリと出し、口の周囲を舐めまわしながら、ゲイルはニヤリと笑った。

 教室に入り席に座ると、腕を組む。


『ゲイル、聴こえるか?』

『ああ、ばっちりだ!』


 召喚主と召喚獣は、召喚石内外に関わらず、心の中で会話ができる。

 最も、召喚石を身に着けていなかったり、距離が離れすぎるとそれはできないのだが、


『ったく、本当は他の奴らに自慢してやりてぇんだが……つーか、お前も自慢していいって言ってたじゃねぇか!』

『それはごめん。ただ、やっぱり本来のストーリーから外れすぎると、僕は君を助けることが今より更に難しくなってしまう』

『けっ! まぁいい! それにしても、武器を装備してる奴は少ねぇなぁ!』

『まぁ、武器は学園から無料で支給されるし、学園に来るまで戦闘経験が無い人もいるからな』


 SHFは入学式から物語が始まる。

 確か、この時点でミストはゲイルの恰好を見て、なぜ違う制服なのかをプレイヤーに説明するように語るのだ。


『ミストはどこにいるんだ?』

『どいつがミストだ?』


 ゲイルは花を召喚石から出す。

 花は教室を見渡すと、ゲームと同じく後ろの方に彼はいた。


「モンスター!?」

「いや、モンスターはモンスターでも、あれ召喚獣じゃないか?」

「すげぇ!」


 皆は花を見ると、ヒソヒソと噂話をする。ゲイルはそれを聴いて、かなりご機嫌のようであった。


(ミスト、大丈夫かな?)


 他人の心配ばかりしていられないが、臆病なミストがやっていけるか個人的に心配だ。


『あの子がミストだ』

『あいつが……!? 見るからに雑魚そうじゃねぇか!』

『本当だったら、キリっとしていて雰囲気もどこか大人っぽいんだけどね』


 その後入学式を終えると、クラス内でパーティーを組むシナリオが始まる。

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