第5話 死の理由を語る

 花の召喚主である【ゲイル・ユグド】は、スキルを持たない主人公をパーティーから追放した後に、酷い目に合って死ぬキャラクターだ。

 スキハ学園に入学してしばらくすると、クラス内で4人パーティーを組むことになる。この組み合わせは先生が決め、そこでゲイルは主人公と同じパーティーになる。


 そのパーティーで様々なことをし、更にはパーティー毎に順位が付けられる。

 この時点では、まだゲイルは主人公を追放しない。だが、いくつか課題をこなしていくと、自分達のパーティーの順位がクラスで最下位になってしまう。学年終了時点でクラス最下位だったパーティーは、2年生に上がることが出来ず、退学となってしまう。このままではマズいと考えたゲイルは、クラスで唯一スキルを持たない主人公に対し、退学をうながす。


 それはなぜか? パーティーメンバーが退学となった場合、代わりのメンバーが他パーティーから補充されるからである。

 だが、当然主人公はそれを断る。そこでゲイルは提案をする「模擬戦をして負けた方が退学だ!」と。主人公は最初それを受けなかったのだが、ゲイルの「お前が弱いせいで、これから死ぬ奴もわんさか出てくるんだろうなぁ!」の一言で、決闘を受けてしまう。


(ゲイルは主人公が妹を失っていることを知らなかったとはいえ、主人公やプレイヤー目線だと中々に酷い発言だったな)


 模擬戦では、主人公のスキルが覚醒する。主人公のスキルは自身の能力を全体的に強化するスキルだ。シンプルながらに強く、更にはそれが数十年前に首席で学園を卒業した伝説の生徒と同じスキルだったのだ。

 当然、ゲイルはボロボロに負けてしまう。


「あ? で、俺は退学したのか? 情けねぇ!」

「いや、この時点じゃまだ退学はしなかったよ」


 ゲイルはその後主人公を罠にはめ、モンスターの群れまで誘導し放置。ゲイルは飛行スキルを持っている為、無事に生還。

 これで主人公を殺そうとするが、主人公が生還したことによりゲイルの悪事がバレ、退学となるのだ。


「ったく、俺ってば随分とひでぇことするんだな!」

「まぁ、そういうキャラだし……(この時点ではこういう考えってことは、描写されてないだけで色々とあったんだろうなぁ)」


 その後のゲイルは、退学となり実家に帰ることになるのだが、親から家を追い出されて泣きながら走る。気が付くと、モンスターの群れに囲まれており、そこで少しずつ食われながら死ぬことになる。


「というのが、君の死の理由だ」

「ったく、なんでそんなヘマをするのかねぇ。今ここにいる俺ならもっと上手くやれるし、大体モンスターに囲まれようが、俺の力でボッコボコだぜ!」

「ああ。だから、上手く……仲良くやってくれよ?」

「しゃあねぇなぁ! ま、要するにそいつとパーティーが一緒にならなきゃいいんだろ? 今からでも入学キャンセルするようにでも言いに行くか?」

「いや! 普通に仲良くしてくれ! パーティーメンバーで協力するんだ!」

「考えておいてやるぜ! もっとも、最強であるこの俺の足を引っ張ることだけは許さねぇけどなぁ! ……それにしても」


 ゲイルは落ち着くと、言う。


「俺のスキルは飛行スキルか……その世界では強いのか?」

「弱くはないかな? けど、正直僕は当たりだと思っている。攻撃面はアーツでどうにでもなるしな!」


 この世界にあるのは、スキルとアーツだ。

 魔法らしきものや、攻撃系の技など、色々な種類があるが、SHFでは全てアーツと呼ばれている。


「だが、僕はゲイルじゃないけど、正直戦力面に関しては心配なことがある」


 ゲイルが主人公を追放しなかった場合、主人公は覚醒するのだろうか?

 もししなかった場合、その後の戦いがかなり厳しくなることは確かだった。


「つまり、やっぱ追放しねぇと駄目ってことか?」

「それは駄目だけど、何かしらをして覚醒をさせるか、その分僕達が強くなる必要はあるな」

「くそがっ! そんだったらデスドラゴンを召喚獣にした方が良かったっつーの!」

「そこは、なんと言うか済まない」


召喚石はかなり貴重なアイテムだっただけに、正直申し訳無さは感じている。


「なぜ謝った?」

「え?」

「いや、どうして謝ったんだ? 「俺は悪くない! 俺は強い……俺は強いんだあああああああ!」とか思わないのか?」

「別に? (まぁ、人間時代は謝ってばっかりだったし)」

「そうか。まぁいい。だが、俺の召喚獣なんだ。もっとこう、「俺は強い!」って自信を持て! いいか? 自信は力だ! 覚えておけ!」

「ああ……うん」


 とは言っても、人間時代怒られてばかりの花は、あまり自分に自信を持てないのであった。


「とにかく! 入学式まで修行だ! いいか? お前も頑張るんだぞ?」

「ああ! そこは勿論!」



「ヒャハハハハハハ! 必殺! 英雄斬りぃぃぃぃぃぃ!」


 次の日。同じ森で、オーガを叫びながら倒すゲイル。


「体当たり! ……ぐはーっ!」


 スライムに体当たりをして、はじき返される花。


「お前! 何やってんだ! いいか! 弱かったら捨てられんだぞ! スライムくらい5秒で倒せ! スターフラワーなんだろ? アーツとか使えば余裕だろうが!」

「そんなことを言われても……」


 アーツとは、どうやって使うのだろうか?

 それに……。


「スライムって食べられるのか……?」


 できれば、殺したモンスターは食糧にしたい。


「そういえば、この世界はどうやって食糧を調達してるんだ?」

「あ? そりゃモンスターを倒して肉とかをドロップさせてるに決まってるだろ!」

「なるほどね……それって食糧をドロップしやすいモンスターとか、しにくいモンスターとかってあるのか?」

「ああ! 大体強いモンスターってのは、基本的に食えるもんはドロップしにくいな!」

「ってことは、スライムは食糧が出やすいってことか?」

「確かにスライムは弱いが、そうでもねぇな。だが、ドロップする【スライムエキス】は健康にいいみたいでな。料理をする時によく混ぜ込んでいるとは聞くな」

「スライムエキスねぇ……」


 体に悪そうな色の液体を想像してしまった。

 というか、実際にそうなのだろうが。


「あの!」

「あ?」


 女の子がこっちに向かって走って来る。


「アミルちゃん!?」

「昨日のガキか」


 またモンスターに襲われたらどうするんだ! と、花は言いたそうにしていたが、笑顔のアミルを見ると言いにくかった。


「お疲れ様です! こちらを差し入れに来ました!」


 アミルは鞄の中から、手作りの弁当を取り出すとそれをゲイルに渡す。


「なんのつもりだ?」

「いえ、昨日もここにいましたので、今日もいるかなと思いまして」

「いるかも分からねぇのに、よく来たこったな」

「えへへ」


 それにしても。


「あまりここには来ない方がいいぞ。モンスターがいて危ない」

「す、すみません」

「あ、別に怒っている訳じゃないんだ。ただ小さい女の子が1人で来る場所じゃないかなって……」


 アミルは確か、この時点だと10歳だ。1人で来るのは危なすぎる。なぜここに来るのだろうか?


(この世界がアミルちゃんを消そうとしているんだろうな。勿論、そうはさせないけど。こんないい子を死なせたくない)


「さ、食うぞ!」


 ゲイルは弁当を開けると、それを1人で食し始めた。


「中々美味ぇな!」

「ありがとうございます!」

「いいメイドになれるぞ」

「メイドですか?」

「ああ!」

「な、なんだか照れます! なるほど、メイドさんですか!」

「似合うと思うぜ! ……って、そうだ!」


 ゲイルは花にこそこそと話す。


「こいつの兄を俺が追放すんだろ?」

「うん」

「だったら……!」


 ゲイルは口角を上げながらニヤリと笑う。


「おい! いいか兄貴に伝えておけ! 覚醒しておけとな!」

「覚醒ですか……?」

「ああ! お前の兄貴はスキハ学園に入学して、しばらくしてもスキルが開花しねぇみてぇだ!」

「ど、どういうことですか?」

「俺の隠しスキルで未来が分かるんだが、どうやらお前の兄貴は俺の足を引っ張るらしい。だから、覚醒しろと伝えておけ! 分かったな?」

「す、凄い! 強いだけじゃなくて、未来のことまで分かるのですね! 分かりました! 伝えておきます!」


(な、何バラしちゃってんの!?)

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