第4話 早めに話しておいた方がいいよね

「そうなのですね! 世の中まだまだ私が知らないモンスターがいるのですね!」

「そんな所かな!」


 実際の所、花自身も自分自身について良く分かっていない。

 なぜこの世界に転生したのか? なぜゲイルの召喚獣に転生したのか?


 そもそも、この世界はなんなのだろうか?

 とにかく、分からないことだらけであった。


「このご恩は一生忘れません! よろしければ、お名前をお聞かせいただきたいです!」


 すると、ゲイルが答える。


「俺の名前は、ゲイル・ユグド! 超最強の男だ!」

「おお! それは凄いですね!」

「ヒャハハハハ! ありがとよ! 来月からはあのスキハ学園に通うからな! そこで他の奴らに俺の強さをもっと見せつけてやるんだ!」

「スキハ学園ですか! お兄ちゃんもそこに通うんです! よろしくお願いします!」

「あ? そうなのか? だったら、そいつに伝えておけ! 最強は俺だ! とな!」

「え!? 分かりました! 強力なライバルが出現したとも伝えておきます!」

「おうおう! 伝えておけ! 後は俺に助けられたことも、しっかりと家族に話しておくように! それと礼の品はスキハ学園に送ってくれると助かる。まだ入学前だが、そこの寮で一足早く生活してっからよ!」

「やる気満々ですね! 分かりました! 何かお礼を用意させていただきますね!」


 なんだろうか。ゲイルはテンプレ小物キャラといった発言を繰り返しているのだが、アミルはそれに対して笑顔で対応している。


(いい子だな)


 この体になってからは、元々疎うとかった恋愛感情などがほぼ消え去っていた為、恋愛的な意味では惚れなかった花だが、人間としては凄くしっかりとした強い子だなと感じていた。


「お花さんは、お礼の品は何がいいですか? モンスターなので、食べられるものがいいですか?」

「僕!? いや、お礼はいいよ! この姿じゃ、なんか全然お腹空かないし!」

「この姿?」

「あ、いや、なんでもない」


 マズい。これではまるで、違う姿で生活していた時があったと言っているようなものである。

 ゲイルも一瞬花をチラッと睨んだ。



「おい、どういうことだ?」

「何がだ?」


 その後、花はゲイルの住んでいる寮の部屋に入ると、お互い向き合っていた。


「お前……何者だ?」

「えっと、怒っている?」

「いや、怒ってはいねぇ! むしろ、なんかヤバイ存在だとしたら、それこそ俺の召喚獣に相応しいからな! ただ、お前がこのまま真実を話さないのだとしたら、キレるかもしれねぇ!」

(ですよねー)


 正直焦った花であったが、冷静になって考えてみると、別にここで話してしまってもいいのではないかということに気が付く。

 ここで話してしまえば、それこそゲイルも主人公を追放しないで済む。つまりは死亡フラグを回避することに繋がる。


(話さないデメリットなくない?)


 そう考えた花は、真実を話すことにした。

 花が人間時代に読んでいたネット小説だと、こういうのは隠しておくパターンが多かったのだが、実際そういう目にあった身になると、話さないデメリットはほぼないだろう。


「分かった! ゲイル、落ち着いて聞いてくれるか?」

「おう! どんどん話せ!」


 花はゲイルに話した。この世界が自分がプレイしたゲームの世界そっくりだということ、自分が別な世界で人間だったこと。気が付いたらスターフラワーになっていたことを話した。


「で、そのなんだ……ゲーム? の世界がここなんだな?」

「ああ」


 ゲームはこの世界には存在しないので、説明するのが難しかった。

 とりあえず、小説ならばこの世界にもあるようなので、小説を遊べるようにしたものと説明した。


「ただ、ゲームそのものの世界かどうかは僕にも分からない」

「どういうことだ?」

「例えば、さっき話したように、アミルちゃんは本来死ぬ予定だった。けど、今回僕達の活躍でそれは阻止できた。この時点で本来のストーリーとは違って来てるんだよ」

「つまりだ! 未来は何が起こるか分からねぇってことだな!」

「そうとも考えられるけど……」


 ニヤリと勝ち誇った笑みを浮かべるゲイル。

 なんだか、嫌な予感がした。


「ヒャハハハハ! だったらビビるこたぁねぇ! そんな確定していない未来なんて、未来でもなんでもねぇ!」

「いや! その考えは危険過ぎる! あの時ゲイルは動けなかっただろ!? つまり、ある程度元のストーリーに引き寄せられはするんだ! だからこそ、聞いて欲しい!」

「あ?」

「正直これを言うのはかなり迷った。けど、短い時間だけど、こう一緒に居てゲイルが悪い人だとは思えないんだ。だから、生きて欲しい! いやまぁ、君が死んだら僕も死ぬっていうのもあるんだけどさ」


 実はまだゲイル自身のポジションや、未来の話をしていない。

 ゲイルがどう暴走するか分からなかったというのもあるが、いわゆるやられ役として登場して、ヒドイ死を迎えるということを話すのは抵抗があったのだ。


 ゲイルの態度は良くないが、どんな理由だろうと人を助けようとした。

 それに、ゲイルはまだ15歳だ。30歳の花から見たらまだ子供だ。十分にやり直せる。それに、実際にまだ悪事を働いてはいない。だから、なんとかなる。そう思った。


「よく聞いてくれ! ゲイルはその……ゲームでは悪役として登場したんだ」

「俺は善人だぞ? 俺より善人な奴は、まずいない! 本来は悪役だとしても俺は善行を続けるだけだ! 一応聞いておくが、俺はどんな悪役だったんだ?」

「とりあえず、色々と突っ込まずに続けるぞ? ゲイルの場合はただの悪役じゃない。プレイヤーにイライラを溜めさせ、無残に死ぬ。言い方は悪いけど、プレイヤーをスカッとさせる為に用意されたキャラなんだ」

「あ? そりゃ最悪だな! つーか、お前はそれをプレイして楽しんでいたっつーのか?」

「いや、僕はどっちかと言うと、そういったのは苦手だ」


 花がこのゲームを好きな理由は、キャラクターだったり、全体的なストーリーだったりだ。

 むしろ自分に能力がなく、悪気はなくだが周囲に迷惑をかけ続けていた花にとって、こういった展開は自分が否定されているみたいで、苦手であった。


「まぁいい。で? そのゲームでの俺は何をやって死ぬんだ? 教えろ!」

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