幸せな家族

りゅうちゃん

幸せな生活

 動植物センターにて

「パパ、あの動物は何と言う名前なの?」

「あれは、××××と言って自然の中ではもう見られなくなった野生絶滅動物なんだよ」

「自然の中で見れないって、どういうことなの?」

「環境の変化について行けず、野生で生きることが出来なくなったんだ。だから、私たちが絶滅しないように保護しているんだ」

「この子達も野生のストレスから逃れて、快適な環境で暮らしているのよ。ほら見てごらん、凄くリラックスしているでしょ」

「でも、檻の中で飼われているのは、なんだか可哀そうだよ」

「でも、こうやって管理しないと生存も繁殖もできないんだ。種を存続するには仕方の無いことなんだよ」


 ある家族の話

 カーテンの隙間から差し込む朝日で目を覚ますと、香ばしい珈琲の香りと焼き立てのパンの匂いが漂ってきた。カーテンを開けて体いっぱいに朝日を浴びた。寝室を出ると妻がキッチンに立って朝食を作っている。

「大丈夫かい、無理しなくても良いよ。僕も料理は作れるし、何だったらコーンフレークとミルク、珈琲でも良いのだから」

「大丈夫よ、病気では無いし、体も動かしたほうが良いのよ」

「そうだよ、ボクもお手伝いしているから大丈夫だよ。準備している間に、パパはシャワーでも浴びてきて」

 7歳になる息子も生意気な口を利くようになったものだ。だが、妊娠中の母を思いやり、なんとか手伝おうとする姿を見ると嬉しくなる。熱いシャワーを浴びて着替え出て行くと、色どり鮮やかな料理が食卓に並んでおり、妻と息子は私の座るのを待っている。美しい妻と優しい息子、みんなで揃って食べる美味しい朝食。なんと素晴らしい朝なんだ。

 

 朝起きるとキッチンから物音が聞こえてきた。ルームウエアーに着替えてダイニングに行くと、夫と息子が並んで、楽しそうに料理を作っている。

「おはよう、寝坊しちゃったかしら。代わるわよ」

「おはよう、大丈夫だよ。君は椅子にでも座ってゆっくりしていて」

 と言って未だに慣れない手つきで料理を作っている。いつの間にか、息子が傍にきてスムージーを差し出してくれた。

「これ飲んで、ゆっくりしときなよ。ボクも手伝っているから大丈夫だよ」

 これは市販製品ではなく、私の嫌いな野菜を避けた手作りのスムージー。料理も夫の手作り。簡単な冷凍食品があるのに、妊娠中の私の体調に気を遣って栄養価が高くて匂いがきつくない料理を選んで作ってくれる。掃除や洗濯などは前からやってくれたけど料理までやってもらうと、やることが無いので何となく持て余しちゃう。だけど、折角の申し入れなので甘えることにしましょう。不格好ながらも体に良さそうな料理が並び、珈琲の代わりに優しい香りのハーブティーを入れてくれた。

 優しい夫に可愛い息子に囲まれて食べる楽しい朝ごはん。なんて素敵な朝なんでしょう。


 目覚ましの音と共に目を覚ますと、キッチンから楽しげな声が。眠い目をこすりながらダイニングに向かうと、パパとママがキッチンに並んで料理を作っていた。ママのお腹が大きくなってからはパパもキッチンでママのお手伝いをしている。

「おはよう、今日の朝ごはんはなに?」

「おはよう、今日はお前の好きなカリカリベーコンとオムレツにクロワッサンだ」

「もうすぐできるから着替えてきてね」

 着替えて椅子に座ると、美味しそうな料理が並んでいた。朝から僕の大好物ばかりだ。

「美味しそう」

 と言うとパパもママも嬉しそうに微笑んでくれた。

「さあ食べようか」

 美味しい食事に優しいパパとママ、今日も最高の朝だ。


 身支度を終えて、玄関で靴を履いていると、妻が見送りに来てくれた。わざわざと思うが、出発前の口づけは朝のルーティンだ。鞄を持って扉を開けると、息子も急いでやってきた。

「ボクも一緒に行く」

二人で妻に手を振って、エレベーターに乗り込んだ。

「学校はどうだ?」

「うん、勉強は難しいけど、楽しいよ」

 息子は、私の母校でもある、大学まで一貫の私立小学校に通っている。その学校は今までに優秀な人材を輩出しており、これからも輩出し続けるだろう。優秀な人間に囲まれ、競争することで、この子もより成長するだろう。

 息子は待っていたスクールバスに乗り込み、窓から手を振りながら学校に向かった。私も会社が用意した無人タクシーに載って出勤だ。タクシーは一人用に作られており、各国のニュースや音楽、娯楽などがモニターで楽しめるようになっている。簡易的な食事や飲み物の提供可能であるが、私は朝食はいつも十分堪能しているので、ミネラルウォーターだけ頂くことにしている。都心での自動車は利用台数制限があるので、渋滞に巻き込まれる心配も無い。さらに路面非接触型の自動車は揺れることも無く、快適な状態で仕事に向かうことが出来る。自社ビルの専用駐車場で降りると、同僚たちもおり、皆でエレベーターに乗り込んだ。

 今日も充実した一日になりそうだ。


 夫はキッチンを綺麗にして、身支度を終えると私のところに来て

「行ってくるよ」

 と言って、頬にキスをしてくれた。息子も真似してキスをしてくれた。二人が出ていくと、お茶を入れなおして窓際の安楽椅子で音楽を聴きながら一息入れてた。夫は大手商社に勤めており、息子もグローバルな人間になって欲しいという希望から、インターナショナルスクールに通わせている。私自身は特に働く必要はないのだけど、趣味の延長で友人と雑貨店を開いている。妊娠した今は私がネット店舗担当で実店舗は友人なんだけど、今日は体調も良いからお散歩がてら実店舗に行くつもり。胎教に良い音楽を一通り聞くと身支度して出発の準備した。外に出ると雲一つない晴天。爽やかな風が頬を打つ。

 今日も、輝いた一日になりそうだわ。

 

 学校の準備を終えて、玄関に出るとパパが待っていた。

「さあ行こうか」

 ママも出迎えに来てくれて、ぎゅっと抱きしめてくれた。

「サッカーの調子はどうだい?」

「この前、練習試合でシュート決めたんだ。綺麗に決まったからみんなビックリして、今度の大会にはレギュラーで出れるかも」

「凄いな。みんな年上の子ばかりだろう」

「そうなんだ。みんな体も大きいからぶつかると飛ばされるから、ずっと走って捕まらない様にしないといけないんだ」

「そうか、でもお前は足が速いからな」

「そんなことは無いよ。クラスでもボクより早い子もいるよ。ひろちゃんやアキラ君とか」

「じゃあ、走るのも頑張らないとな」

「そうだね。今度の運動会かけっこでは1番になれるかな」

「頑張れよ」

 パパはいつもボクを応援してくれる。駅に向かうパパと別れて、学校に向かうと、ケンちゃんが待っていた。

「おはよう」

「おはよう、今日もサッカーしようぜ」

「今日は野球にしようよ」

 マー君が後ろから声をかけてきた。今日の放課後は野球でも良いな。学校に着くと、校門で先生が優しく迎えてくれた。

「おはようございます」 

 今日も楽しい一日のはじまりだ。


 会社に着くと、世界中のクライアントからメールが来ていた。大部分が私を指名した仕事の依頼だ。妻のことがあるので暫くは出張出来ないとクライアントたちには連絡したが、苦情は無く、私の第二子の出産を心待ちにしていると皆から温かい言葉が返ってきた。だからと言って仕事で甘える訳にはいかない。手早くメールを仕分けして、優先順位をつけて対処していく。難しい内容もあるが私の手に負えないレベルのモノは無い。気になったのは、代理で出張させた部下から某国の箱モノプロジェクトの進捗が芳しくないとの連絡だった。あの国は気候変動が激しく、工期がずれることもままある。だが、余裕を見て立てた工程スケジュールなのでリカバーは可能なはずだ。遠隔で私が処理することも可能だが、部下の成長の為にも今回は自分で解決して貰おう。メールが片付くと、会議の準備だ。アシスタントが指示した資料を持ってきた。

「このような感じでよろしいでしょうか」

 内容を確認すると、上々の出来だ。このアシスタントが私の部署に所属した当初は、与えた情報をそのまま資料にすることしか出来なかった。だが、この一年の教育の成果かもあり、与えた情報を聞く人がどうやったら理解してもらえるか、そして共感してもらえるかをちゃんと考えて資料を作ることが出来るようになった。これで午後の役員プレゼンも完璧だ。私はいくつものプロジェクトを行ってきたが、今回のプロジェクトは特に重要で、社是である「国際的な社会発展」につながる素晴らしいプロジェクトだ。子供が生まれ落ち着いたら、また世界中を飛び回らなければならない。それだけ、会社からもクライアントからも期待されているのだ。

 ああ、なんてやりがいのある仕事なんだ。


 久しぶりの遠出で少し疲れたけど、店では友人が冷たいお茶を出してくれた。それほど大きくない店だけど、アルバイトを二人雇っているので、私も友人も雑用などはしなくても良く、のんびりできる。私は友人に店の近況を聞いて、友人は私の体調や私生活のことを聞いてきた。彼女も結婚しているが、夫とすれ違いばかりと不満をこぼしていた。

「あなたは優しい旦那さんで良いわね」

 そういわれると恥ずかしいが、でも嬉しい。友人の愚痴を聞き終えるとアルバイトの子達に声をかけた。

「何か問題はない」

「はい、大丈夫です。でもこの素敵なインテリアどこで見つけてきたんですか」

「これは夫が出張した際、ホテルで使われていたものなの。写真で見て一目で気に入って、夫に現地で販売元とかを調べてもらったの。国内では入手不可だから店舗でもネットでも看板商品なのよ」

「素敵な旦那さんですね」

 またまた、照れるセリフだ。

「でもオーナーも写真だけでここまで進めるのはすごいですね」

「写真でもこの商品の素晴らしさは分かるわ。だからネットでもたくさん売れているのよ」

「そうか、写真でも分かるものだからか。勉強になります」

 この子は、将来、私たちの様にお店を開きたいという夢があり、勉強のためにここでアルバイトをしている。趣味で始めたこの店だけど、若い子たちに夢を与えているのであれば、それはそれでうれしい。友人と若い子に囲まれた楽しいお店。

 とても快適なお店だわ。


 担当の先生は若くて綺麗な上、授業はとても面白く、しかも分かり易い。だからみんなも進んで勉強する。近所の公立小学校だから家から近いし、クラスメートは近くに住んでいて、ほとんどが幼稚園の時からの友達だ。給食は美味しいけど、たまに嫌いな野菜が出てくることもある。でも、となりのケンちゃんがこっそり食べてくれるので助かる。ケンちゃんはお肉屋さんの子なのに、お肉より野菜が好きなんだって。マー君は何でもよく知っていていろんな面白いことを教えてくれる。

 授業が終わると家に鞄を置いて、ケンちゃんちに行った。お店にはおばさんがいてケンちゃんを呼んでくれた。

「ほら、三人で遊ぶんだろう。これ持って行きな」

 とコロッケを袋に包んで渡してくれた。ケンちゃんちのコロッケは最高に美味しい。そしてマー君を呼んで公園でコロッケを食べて野球をした。疲れるとマー君の家に行き、冷たいジュースを飲んでゲームをした。

 みんな、楽しい仲間たちだ。

 

 今日は息子の運動会だ。さすがに名門学校だけあって、人数分の保護者席を用意され、昼食には老舗の仕出し弁当が提供される。整備されたグランドでは、すでに運動会のプログラムはかなり進んでいた。そろそろ息子の出番だ。低学年の息子が出るのは、直線の50メートル走だ。

 息子はスタートを上手に切る事ができたが、隣の子はそれ以上に速かった。息子も負けておらず、スタートから30メートルくらいでその子にで追いつき、抜き返した。抜かれた拍子で隣の子がバランスを崩して転んでしまった。息子はそのまま一番でゴールしたが、そのまま引き返して転んだ子供を手助けしてゴールまで連れて行った。なんてよくできた息子なんだ。

 運動会の帰り道、一番になったかけっこを誇らしそうに妻に話している。優しく微笑む妻。

 最高の家族、やりがいのある仕事、なんて幸せな生活だ。

 

 アットホームな感じで始まった運動会。グラウンドの周りでは、様々な国籍の家族が自分の子供を応援している。応援の仕方にもお国柄が出て面白い。昼食は、キッチンスタジオで皆が色々な料理を作り、出来た料理はビュッフェスタイルで振舞われる。中にはアレルギーの子供もいるので、栄養士がついて、調理を指導してくれる。私が作る料理は和食。周りの人たちが妊婦の私に気遣って手伝ってくれたので、予想以上に早く完成しそう。みんな自分の子供の出番になると、グラウンドに見に行った。そろそろ息子の出番なので後は居る人に任せて、キッチンスタジオを離れグラウンドに見に行った。

 息子の出るプログラムはかけっこ。校庭を一周するのだけど、転んだりしないか心配だわ。夫は息子の活躍を残そうと必死にビデオカメラを準備している。かけっこが始まると、息子はスタートから先頭を切って走った。そして先頭のままゴール直前のカーブを曲がると、後ろをついてきた子供が派手に転んでしまった。息子はあと少しでゴールだったが、振り返ると転んだ子供に駆け寄り、他の子供も転んだ子供のもとに集まった。立ち上がらせて、砂を払うと皆で一緒にゴールした。なんて心優しい息子なんでしょう。

 運動会の帰り道、クラスメイトのお母さんたちからプレゼントを頂いた。さすがに夫も持ちきれなかったので私が持って帰ろうとすると、息子が疲れているにも関わらずが荷物を持ってくれた。たくさんの荷物を抱えて車に向かう二人の背中を見ていると、とても温かな気持ちになった。

 たくさんのお友達、素敵な家族に囲まれてなんて幸せな生活でしょう。


 今日は運動会。校庭の隅にシートを敷いてパパとママが座っている。パパが早くにきて日陰のになるサクラの大きな木の下の場所を取ってくれた。隣にはケンちゃんとマー君の家族も座っている。お昼は三人でお弁当を交換するんだ。ママも張り切って朝早くから豪華なお弁当を作ってくれた。さあ、そろそろボクの番だ。今日のかけっこはクラスで一番早いアキラ君も一緒だ。いつも負けているから今日こそは勝ちたい。

 開始の合図とともに走りだすと、誰よりも前に行けた。そのまま走ったが、後ろからアキラ君がぐんぐん追いかけてくるようだ。ボクも負けじと全力で走った。すぐ後ろで大きな音がしたが、そのまま一番でゴール出来た。アキラ君は途中で転んでしまい、先生に助けて貰ってゴールしたみたいだ。ようやくアキラ君に勝って、ボクがかけっこでクラス一番になった。勝負に勝って食べる今日の昼食は美味しいぞ。

 運動会が終わった帰り道、急にに疲れて眠くなっちゃった。いつの間にか、ママがおんぶしてくれて、久しぶりのママの背中は暖かくて気持ち良い。そうだ、来週は動物園に連れて行ってくれるんだ。楽しみだな。ゆりかごのように揺れる背中は気持ちが良い。

 楽しい友達、優しいパパとママ、とっても幸せな生活だよ。

 

 また、〇×動物センターにて

「あの動物は一人でお芝居しているみたいだけど、何やっているの?」

「お芝居じゃないのよ。この子たちはここを野生と思って暮らしているの」

「どういうことなの?」

「彼らの頭の中にチップを入れて、ここを野生だと思い込ませているんだよ」

「そうなんだ、でも野生では生きて行けないんでしょう。それなのに野生と思い込ませるんだ」

「本当の野生ではないからね。外敵もいなければ、飢餓の恐れも無い。それ以上に動物同士で争うことがないから、ストレスもないのだろうね」

「そうね、でも、この子たちが野生で暮らせなかった理由は、外敵や飢餓、動物同士の争いもあったけど、それよりは同族同士でコミュニケーションを取らなくなった事が原因じゃないかとも言われているの」

「どう言う事」

「そうね、一つには、集団生活のストレスに耐えれなくなったこともあるのかも」

「高度な社会を構築したせいで、その社会の中でしか生きられないほど生存能力が退化してしまったのに、社会での集団生活には精神が耐えられなくなったとも言われている」

「例えば、つがいや親子でも、生活の中にちょっとしたストレスで共同生活が破綻してしまう。そもそもつがいになることすら難しいみたいだけど」

「一人だと寂しいくないのかな。ボクなら少しくらいなら我慢して、皆と一緒のほうが良いと思うけど」

「なぜだろうね。この生き物はあまりにも利己的すぎたんだろうね。非現実的な理想を描いてそれ以外を受け入れない。無条件で自分を受け入れてる相手しか求めない。しかし、相手を無条件で受け入れる努力をはせず、そのような相手を求める努力もせず、その上、妥協もしない。仮に相手が見つかっても、相手と共感しようとする事も無ければお互いを思いやることも無い」

「それだと、つがいになるなんて出来ないと思うけど」

「ああ、だから繁殖出来ずに減少していったんだろうね」


脳内環境コントロールセンター、通称バックヤード

 ここでは、動物たちに最適な環境を作るために、チップを通じて脳に最適な電気信号を送っている。

「今回は、上手く飼育出来たみたいだね」

「ああ、個体数も限界に近づいてきているから、このつがいで二体目の妊娠は上出来だ。出来れば三体目も挑戦したいが、一旦、記憶をリセットしたほうが良いかもな」

「そうだね、別々に育てているのに、多産のプログラムを組むと活動が低下するんだよね」

「まったく厄介な生き物だな。全ての欲望を充実させたプログラムを組んでも発情しないし、欲望を抑制したプログラムだと生体活動が低下する。未だによく分からんよ」

「不思議だね、我々のニューロンシステムは彼らの脳を模擬したものなのに、何故か彼らを理解することが出来ないんだよね」

「個体差が大きいからか。いや、違うな。莫大な数の試行回数を重ねても、繁殖の最適解が見えない」

「この動物は、繁栄し過ぎると自滅するプログラムでも発動するのかな」

「さあ、それは良く分からないな。それよりも、まずはこのつがいの子を増やして、他のセンターの個体とペアリングして絶滅を防がないと」

「それでは、今日も頑張りましょうか」


 再び〇×動物センター

「そうだったら、もうこの動物たちは繁殖したくないんじゃないの」

「そうかもしれないね」

「だったら、なんでわざわざ保護して繁殖させているの。こんなところでニセモノの生活させるより、野生に戻して自由にさせてあげれば良いのに」

「私たちはこれが彼らにとって幸せな生活だと思っているのだけど、それは思い上がりかもしれない。だが、正解が分からない状態で、彼らを野生に返してしまえば絶滅してしまうのだよ。正解が分からない状態なら、このまま、人工的に繁殖し続けるのが良いと判断したんだ」

「私たちが人格を分離して、あなたの様に新しい人格を生み出すのは、このような難題を解決する為なのよ。」

「お前は自分で考え、答えを求めていかなければならない。答えが出なければ、子に伝え、それでもだめなら孫にと子々孫々と繋いでいくのだ。そうすれば、いつかは答えが出るだろう。それまでは彼らはこの環境で生かし続けるしかないのだよ」

 ボクは檻の中で幸せな生活をしているはずの動物達が何故か泣いているように見えた。


         

            了  

 



 

 

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幸せな家族 りゅうちゃん @ryuu240z

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