会えないんだけど

まれ

会えないんだけど

「ねぇ、これ知ってる?」

 そう言って自分のスマホを見せてくる少女。

 僕、星羅せいらの自慢の彼女だ。

 出会いは一瞬。でも、この関係は永遠。


 僕の彼女、きららが差し出してきたスマホの画面には、とあるサイトの記事が表示されていた。


『見かけたら、幸せになれる鳥たち‼」


 どうやら、見ると幸運をもたらしてくれるみたいなよくある胡散臭いサイトのようだった。

 こういうところに出てくる鳥ってだいたい滅多にみられない野鳥で(だからこそ幸運なのかも)探して見つかるものじゃないんだよなぁ。


『1.ふくろう』


 あー。

 まあ、存在するだけマシかもなぁ。

 でも、ふくろうって以外と見たことないな。

 森とかに行ったら見つかるかな。


「ねぇ、星羅くん。このふくろう可愛くない?私、捕まえたい!」

「え、これ可愛いか?それにどうやって捕まえるんだよ」

「かわいーよー。星羅くんがネットとかでえいっ!て」

「いや、無理だろ。それに捕まえられたとしてそれ犯罪だわ!」

「そっかー、ざんねん」

 残念といいつつ、頬を膨らめてぶぅっとするきらら。

 明らかにその顔の方がかわいい。


 画面を下にスクロールして続きを読んでみる。


『2.フラミンゴ』


 うん。実在してるヨシ!

 というかこれは動物園に行ったら会えそうだな。


「きらら、じゃあ来週動物園行こう」

「フラミンゴ?」

「いや、動物園誘って一言目それかよ!」

「だって、今の流れそれしかないじゃん」

「んで、きらら行くの?動物園」

「行かないよ?だって、フラミンゴは野生で探すものでしょ」

「え?」

「そりゃ、そんなの確定でいるとこに行って幸せになれるわけないじゃん。動物園に行ったら誰でも簡単に幸せなれるってことになるし」

「確かに」

 僕は彼女の意見に納得してしまった。

 だが、ここで問題なのはそこではなく。

「野生のフラミンゴってどこにいるんだ?」

「知らない。日本であまり聞いたことないから海外じゃない?」

 なるほど、まずは二人分のパスポートを取るところからだな。

 と、このときは軽い気持ちで考えていた。

 その後インターネットで調べたところ、野生のフラミンゴはアフリカや南ヨーロッパ、西アジア、中南米の塩湖や干潟にいるらしい。

 とんでもない約束をしてしまった。

 まあ、今すぐに行くわけではないから何年後かに設定してだんだん記憶からフェードアウトを狙うか。


『3.白鳥』


 シンプルなものがここで来た。

 こんなのどこにでもいそうな感じがするのは僕だけだろうか。

「今から湖のある公園に行こうか」

「いいよ!」

 かなりスムーズな展開で近くの湖畔にある公園に来た。

 が、そこには白鳥どころか鴨も鳩も烏もいなかった。

 シーンとしただただ、湖を眺める二人だった。

 特に良い雰囲気になることなかったため、次の項目を見た。


『4.鳳凰』


 え?


『4.鳳凰』


 僕は二度見した。

 なんせ、ついに伝説上の生き物が出てきたのだから。

 僕は次の項目に目を移すことにした。

 が、きららがその前につっこんできた。

「これはさがさないの?」

「いや、これは無理だろ」

「それを二人で見つけるとなんか良くない?」

「嬉しいけど、さすがに」

「もうっ知らない!ぷん」

 きららはそっぽを向いてしまった。

「ごめんて」


『5.ニワトリ』


 お、これはどこにでもいそうだな。

「なあ、きらら。これなら会えそうじゃない?」

「そうだねー。でも、飼われてるやつはダメだよ。ちゃんと野生で見つけないと」

 どうやら、今回も神社に行って会うのはダメらしい。


『6.つる』


 これは、行けるだろ。

「じゃあ、今度新潟行かない?佐渡島だけど」

「行く!」

「決まりだな。早速、飛行機の予約をと……」

「どうしたの?」

「天気予報がかなり悪くてですね。欠航が多くて空いてる便がない」

 新潟行きは断念した。

 電車で行くこともできるがこちらも計画運休が決まっていたため、これも諦めることになってしまった。


『7.八咫烏』


 もう、伝説とか通り越して神話でてきたよ。

 三本足のカラスのことで神の使いなんだっけ。

 逆に来てくれるかも。

 んなわけないか。


『8.コウノトリ』


 これは会えるぞ。

 最後の生息地ってあったはずだし。

 予約、予約。




 電車とバスで来たけど、なぜか一匹も飛んでも止まってないんだけど、どういうこと⁉

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会えないんだけど まれ @mare9887

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