第5話

「今まで会議にずっと参加していたじゃないか?」

「そうでした? これだけ出席者がいると、いちいち確認しませんから」

 などといい加減な返事が来る。

 そんなバカな、と眉をひそめる誠二せいじに、同僚たちがさらに追い打ちをかけた。


「このリモート会議は本日で終了です」

「ん?」


「というより、もうとっくに終わっていたんですよ、誠二さん」

「どういうことだ?」


「録画されていると厄介ですので、詳細は控えます。でも、これだけはお伝えします。僕たちは夏帆かほさんに仕事のいろはを教わり、夏帆さんに育ててもらいました。夏帆さんに恩はあっても、誠二さんに恩はありません。誠二さんとは今日でお別れです」


 誠二は問い詰めようと身を乗り出した瞬間、皆が一斉に画面から消えた。


「え……」


 暗黒色の背景に取り残された自分の画像が遺影のようにも見えた。

 事情が理解できず、同僚たちに個別に連絡を試みたが、誰とも言葉を交わすことができなかった。



 誠二はじっとしていられず、翌朝一番の電車で久しぶりに会社に出向いた。そして、入り口に掲げられた「告示書」という貼り紙を見て呆然と立ち尽くしたのだった。


「破産手続きだって……?」


 あまりにも突然で、誠二は目の前の現実を受け止めることができなかった。

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