第3話
「
画面の誰もが緊張した面持ちで誠二を見ている。
「すまない。ちょっと席を外す」
誠二は急いで部屋を出ると、妻もまた血相を変えて台所から飛び出してきた。
居間に息子の姿がない。
嫌な予感しかしなかった。
居間の掃き出し窓からまだ明るい外を覗き見ると、庭の木の下に脚立が横転し、その傍らに息子がぐったりと横たわっていたのだった。
「
誠二は窓を開け、裸足のまま息子に駆け寄り頭に触れると、手に生暖かい液体がねっとりとまとわりついたのが分かった。
すぐ側に転がり落ちている木箱の角に鮮血が付着している。
事態を把握した妻が悲鳴を上げた。
「救急車を呼んでくれ!」
誠二が叫ぶと、妻は慌てて身を翻した。
「望、大丈夫か?」
誠二の言葉に反応はない。
誠二は息子の手を握り、何度も声をかけた。
「今、救急車を呼んでいるからな」
田舎町の道路は信号も車の往来も少ない。遠くから滞りなく近づくサイレンを聞きながら、正方形の木箱を忌々し気に見た。
息子はこの巣箱を木の上に設置しようとしたのだろう。おそらくバランスを崩して転倒したのだ。
いったい誰がこんなものを置いていったのかと誠二は腹立たしくて仕方がなかった。
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