第2話

 パソコンの前に座り、首からタオルを取り外した。パソコン脇に立てかけた小さな鏡で髪が乱れていないかを確認する。

 台所からは夕食の支度をする妻の足音が聞こえてきた。いつもと変わらぬ穏やかな時間だ。


 パソコンの画面に次々と同僚たちが姿を現した。

 全員が集まるまで、時間つぶしに先ほどの巣箱の話題を振ると、後輩が食いつくようにカメラに顔を寄せた。


「それ、コトリバコじゃないっすか?」

「コトリバコ?」


「ネット上で広まった都市伝説ですよ。呪いたい相手に送ると相手が死ぬという木箱です。子を取る、でコトリバコ。一族を根絶やしにするという呪いです」

「え、なに? 俺、誰かに恨まれているの?」


 そんな覚えはないと言わんばかりに大げさに振舞い、誠二せいじは画面の一角に映る夏帆かほから視線を逸らした。


 この会議にいる幾人かは知っている。誠二と彼女の関係を。

 だが、誠二の中ではなかったものにして話を続けようとしたところ、相も変わらずカメラに近づきすぎて圧迫感を与えている同僚が冗談めかして言った。


「知らぬところで恨みを買っているのかもしれませんよ。例えば、僕とかね」

「ヤバいな。でも、君のうちから俺のうちまで片道二時間以上かかるよね? 箱を置いて、どうやって帰ったの? 自家用ジェット?」

「転移魔法っす!」


 皆が笑ったその時だ。

 庭先から派手な金属音が聞こえ、誠二は驚き目を見張った。

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