第39話 幸せそうな喫茶店

医師が言うにはもう帰っていいとのこと。


一は、会計を済ませると皆の集まる場所に向かった。


「おまたせ」


一がそう言うと病院の近くにある喫茶店へと向かった。

喫茶店の名前は【萌萌】。


「いらっしゃいませー」


その声と同時に可愛らしい女の子が一を迎え入れる。

歳は4歳くらいだろうか。


「4番テーブルお願いします」


小学生低学年くらいの男の子がそう言ってテーブルへ案内する。


「えっと……」


一たちは戸惑う。


「あ、すいません」


男性がそう言って一たちに謝る。


「いえ……」


「好きな席に座ってください」


男性がそういうと女の子がうつむく。


「4番テーブル……」


一たちはそのまま4番テーブルに座る。


「わぁ……」


女の子と男の子の目が輝く。


「メニューが決まったらベルを押してください」


女の子と男の子の声がハモる。


すごく笑顔で凄く楽しそうに。


「僕はアイスミルクティーにしようかな」


一が早速注文した。

そしてそれぞれ注文をして、それを男の子がメモを取る。


「あ、お客さん来てる!」


きれいな女性がそう言って現れる。


「おかえり萌。

 町内会の集会、お疲れ様」


「ただいま太郎くん」


「お母さん、僕初めて注文取ったよ!」


「え?」


萌と呼ばれる女性が驚く。


「私もいらっしゃいませしたよ」


女の子がそう言うと萌は嬉しそうにふたりの頭を撫でる。


「お父さんのお手伝いしたの?

 偉いぞ」


「えへへへー」


「と、お客さんははじめましてだよね?

 僕の名前は山田太郎。

 そして、長男の瓜と長女の桃」


「そして妻の萌です。

 この喫茶店はお父さんから引き継いでいるんだ。

 私の名前はお店から来ているらしいんだー

 普通、娘の名前を店につけるとかならわかるけど。

 店の名前を娘につけるとか珍しいよね」


萌はまんざらでもなさそうにそう言って笑った。

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