第36話 罪と罰と……
コロコロ。
コロコロ。
コロコロ。
誰かが僕の背中をコロコロする。
正式名称はわからない。
それはコロコロなのだ。
僕のお父さんは死んだ。
それは僕が小学生の時。
僕のお母さんは死んだ。
それも僕が小学生の時。
僕が小学5年生の時。
ふたりはどうしてもいかなければいけない仕事の出張のため家を出ることになった。
なんの仕事をしているかはわからない。
何度聞いても教えてくれなかった。
なにかの研究者。
知っているのはそれだけ……
死んだ原因はわからない。
ただわかっているのは、僕は誰からも愛されていないってことだけだった。
僕にはジンクスがある。
好きな人は僕以外の人としあわせになる。
それって僕はしあわせになれないってこと?
そしてその好きが消えた時。
好きだった人には不幸が訪れる。
どんな死に方をしたかは、誰も教えてくれない。
でも、知らせてくる人はたくさんいた。
父と母は大勢の前で凌辱され複数人の未成年の男女に嬲り殺された。
最後は父か母の首を吊し上げ。
未成年の男女たちは、どっちが先に失禁するか賭けをしたらしい。
生き残ったのは母だった。
父はそこで命が尽きた。
母は絶望した。
何度も何度も父の名を呼んだ。
呼んだのは父の名だった。
僕の名前は呼ばなかったらしい。
僕は思った。
愛されなかったから僕の名前は呼ばなかったのだろう。
そう思った。
大勢の前で凌辱された父と母。
母はその大勢の人達に無理やり行為をさせられ。
そして殺された。
僕は思った。
思ってしまったからだ。
僕も付いていくと言って駄々をこねたあの日。
「お父さんとお母さんなんて大嫌いだ!」
それが僕と両親の最後の会話。
見送りもしなかった。
僕の父と母を殺した男女たちは無罪になった。
母と行為をした大勢の人も無罪。
無罪ってなんだろう。
罪ってなんだろう。
僕にはわからない。
何もわからない。
僕は涙を流すことしか出来ない。
「誰があの子を引き取るの?」
「私は嫌よ?ジンクス持ちなんて」
「だってあの子のジンクスで死んだんでしょ?」
優しくはない大人たちの声が僕の心に無惨に響いた。
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