第34話 静かなる1年生
そしてやってくるクラブ紹介。
ぶっつけ本番で音を鳴らす?
でも、ボーカルは?
問題が山積みのまま一たちの番がやってきた。
こともあろうに吹奏楽部のあとだ迫力?
負けしか見えないこの戦い。
「さぁ、次は軽音部の番です!」
放送部の女子生徒がノリノリでアナウンスする。
「どうする?
誰が歌う?」
葉月が耳打ちする。
「僕が適当に歌うよ。
部員集めはここでは諦めよう」
「仕方がないわよね。
クラブ紹介のことすっかり忘れてたもの」
峰子がため息交じりで言う。
「はじまりますよ」
蜜柑がそう言ってベースをジャーンと鳴らす。
ドラムの準備とチューニングの時間。
それを除いて5分のクラブ紹介。
一は歌う。
「いいことないかな?
いいことないかな?」
葉月もそのリズムを先読みしてキーボードで音を奏でる。
「でもある日彼女が言うんです」
蜜柑のベースが段々重いテンポになる。
「私と出会えたことはいいことじゃないの?」
峰子のドラムが小刻みに震える。
「だけど僕は思うんです。
そうじゃないんです。
そうじゃないんです。
そういうことじゃないんです」
そしてクライマックス。
「だからあえて言うんです。
いいことないかな?
いいことないかな?
それでもいうんです」
一はギターをゆっくりとジャランと響かせた。
静かなる1年生。
ちらほらと聞こえる失笑。
でも、時間はまだ残っている。
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