第11話 愛し愛されまた巡り合う

桜がまだ咲かぬ夜にて一緒に空を見ることにしました。


「やっと春休みだね」


美姫が嬉しそうに言った。


「そうだね」


一が小さく答える。


「私さ。

 っていうか護となんだけど。

 この春休みに旅行に行くんだ」


「え?」


一は驚く。


「ふふふふ。いいだろー?

 でも、お前は連れて行ってやんないからな!」


護がそういって一の頭をくしゃりと撫でる。


「いや、連れて行けとは言わないけど……

 親に反対されてない?」


「まぁ、親公認だしね」


「そっか」


一は少し動揺する。

なぜなら一は美姫のことが好きだからだ。


一にはジンクスがある。


【自分が好きになった人は別の人としあわせになる】


そのジンクスの重みがつらくなる。


わかってはいた。

付き合っていることも知っていた。

むしろ応援もしていた。


でも少しだけ泣きたくなった。


――数日後


一は、最近みさきといることが多い。

帰り道が一緒どころか。

一の家の前にある。

アパートがみさきの家だった。


そしてふたりはご飯をお裾わけするようになり。

そしてふたりは互いの家に出入りするようになり。


仲が良くなった。


そしてそのまま春休みになった。

一の気持ちが少し揺れていた。


「今日もいい天気ですね」


みさきの言葉に一は喜びを感じる。


「今晩のおかずはなんですか?」


無限に会話できる喜び。

ずっと一緒に入れる感覚。


いろんな気持ちが一の中で揺らぐ。

そして思った。


これが好きって気持ちなんだと。


だから一は、美姫と護の旅行の出発を笑顔で送った。

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