第7話 もしも願いが
「林檎ちゃん元気かな?」
有田 林檎。
その女の子は一の初恋の人だった。
「私ね遠い場所に行くの」
そう言って林檎は一の前から姿を消した。
一は別れの言葉が言えなかったことを今でも後悔している。
泣いてばかりいたあの頃。
一にとって林檎との別れはかなしみでしかなかった。
友達のいないひとりぼっちな世界。
護や美姫と仲良くなったのはそれから暫くたったあとのこと。
「……」
一は誰かの視線を感じる。
でもそれは気のせいだと思うことにした。
もしかしたら数ある視線のうちひとつくらいは林檎からのものであるように……
そう願って――
「久しぶりにギター弾こうかな」
一は自分の部屋に戻るとギターを弾く。
「チューニングしなくちゃだね」
一はそういってギターをベッドに置く。
弦が切れ指も切れた。
――翌日
「指、どうしたんだ?」
ホームルームのあと護が一に尋ねる。
「ギターを弾こうとしたら弦が切れてね」
「そうか」
「うん」
「一のギター、久しぶりに聴きたいなー」
美姫がみさきと共に現れる。
「えー」
一はみさきの方を見る。
「私も聴きたいです」
「う……」
みさきの言葉に一の心が揺らぐ。
「じゃ、授業が終わったら軽音部に集合だね!」
おっとりした声がその場に響く。
「って葉月先輩?」
「えへへー
近くに寄ったから来ちゃった」
そういって笑ったのは1年学年が上の先輩南
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