第17話:ダウナーちゃんに打ち明けていく
―― だから私も同じでさ、健人の笑ってる顔の方が大好きってだけだよ
俺はそんな坂野の言葉を聞いて何だか顔が熱くなっていってしまった。
もちろんそれはいつものように友達として“好き”だよって言ってくれただけだ。それはラブじゃなくてライクなのはもちろんわかっている。それでも……。
(それでもやっぱり……好きな女の子から好きだって言われるのはやっぱり嬉しいよな)
俺は顔を真っ赤にしながらも、何だか心の中はポカポカと暖かくなっていった。だから俺はそんなポカポカとした気持ちをくれた坂野に向かってこう言っていった。
「……あぁ、うん、わかったよ。それじゃあちょっとだけさ、愚痴らせてもらっても良いかな?」
「うん、もちろん良いよ。ふふ、それじゃあ頼りになるこの私が健人の愚痴をたっぷりと聞いてあげるとするかなー」
「はは、そんな気だるそうな感じの顔をしながら頼りになるなんて見えないけどな」
「いやいや、私だって頼りになる時くらいあるからね? って、あぁ、そうだ……それじゃあ、はいこれ」
そう言うと坂野はブレザーのポケットから何かを取り出してきて、それを俺に手渡してきた。
「ん? これって……坂野がいつも飲んでる紙パックのジュースか?」
「うん、そうそう、いつもの私が飲んでる自販機のココアだよ。あ、今日のはちゃんと新品未開封だから安心しなよー?」
「え……あ、いや……! そ、それはその……!」
すると坂野はバレンタインの時の出来事を思い出して笑いながらそんな冗談を言ってきた。
俺はその冗談を聞いて若干慌ててしまったけど、でもすぐに気を取り直して坂野に感謝を伝えていった。
「え、えっと……ま、まぁいいや。うん、ありがとう。あ、お代は幾らだっけ?」
「んー? あー、いーよいーよ。だってどうせもうすぐホワイトデーじゃん? だから今はお代なんて気にしなくて良いよー? どうせ近い内に三倍返しして貰う事になるんだしさ、あはは」
「う……それはその……はい……ちゃんとお返しを考えておきます……」
そっか、そういえばもうすぐホワイトデーだもんな。ちゃんと坂野へのお返しを用意しておかないとだな……。
という事で俺は数週間後のホワイトデーの事を考えつつもパックにストローを挿してココアを飲み始めていった。
そしてそんな俺の様子を見て坂野も一緒になって紙パックのココアを飲み進めていっていた。
「……それで? 結局の所、健人は何でそんな辛そうな感じになってるの?」
「……え? あ、あぁ、うん……いや実は昨日の話なんだけどさ……」
という事で俺は坂野に昨日のファミレスで起きた出来事を説明していった。
◇◇◇◇
「……って事があったんだよ」
「へぇ、そんな事があったんだ。いやそれは中々に災難だったね」
という事で俺達は紙パックのココアを飲みながら教室内でそんな話をしていっていた。
「でもなるほどね、それで健人はそんな死にかけた表情をしてたんだね。あ、体調とかは大丈夫なの? もしかして眠れなかったり食欲不振になったりしてない?」
「え? あぁ、そうだな……昨日は色々とモヤモヤしちゃって全然寝付けなかったし、食欲もあんまり湧かないかもなぁ……」
「そっかそっか。んー、まぁそういうのがメンタルに来ちゃうのはしょうがないんだろうけど、でもあんまり気にし過ぎたら駄目だよ? そういうのはすぐに寝てスッパリと忘れちゃった方が絶対に良いからね?」
「あぁ、うん、まぁそれは自分でもわかってるよ。でもやっぱりなんだか色々と反省しなきゃなって思っちゃうと中々寝付けないんだよな。昨日はそのせいで寝付けなかったわけだしさ……」
「うーん、そっか。でもちゃんと眠れないと明日からも色々な事に支障が出ちゃうから絶対にしんどいよね」
「あぁ、そうだな。せめてちゃんと夜に眠れるようになればいいんだけどなぁ……」
坂野は紙パックのココアをゴクゴクと飲みながらも俺の事を心配しながらそう言ってきてくれた。そして坂野は少しだけ目を瞑りながら何かを考え始めていった。
「うーん、そうだねぇ……何か寝つきが良くなる方法でもあれば……って、あ、そうだっ」
「ん? どうしたよ坂野?」
「あぁ、うん。そういえば私たち人間には“幸せホルモン”ってのが分泌されるらしいんだよ。えっと、確か……オキシトシンだっけかな? まぁそんな感じの名前のホルモンが体内に分泌されてるらしいんだよ」
すると坂野は何やら賢そうな単語を口にしだしてきた。俺は知らない単語だったので詳しく坂野に尋ねてみる事にした。
「幸せホルモン? へぇ、そんなのがあるんだ。実際にそれが体内に分泌されるとどうなるんだよ?」
「うん、それが分泌される事で幸せだなーって気持ちになってストレス解消とかリラックス効果とか、あとは眠りやすくなるとか……まぁ色んな効能があるんだってさ」
「へぇ、そんな凄いホルモンが体内に生成されるんだな。でも何で坂野はそんな事を知ってんだよ?」
「あはは、ちょっと前に見た深夜テレビでそんな内容の話をしてたなーってのを今思い出したんだよ。うんうん、やっぱり深夜テレビの情報も役に立つ時があるって事だねー」
「あぁ、なるほどな。はは、まぁでも坂野こそ毎日夜更かししてないでたまには早く寝た方が良いと思うけどな」
「あはは、そりゃ絶対に無理だねー」
そう言って俺達はそんな軽口を叩き合いながら笑っていった。やっぱり坂野と一緒に話してるのが俺にとって一番楽しい事なのかもしれないな。
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