第8話:ダウナーちゃんとカメラ撮影

「あー、そういえば確かに坂野ってそういう写真結構撮ってるもんな。でも写真とか撮ったりするのが好きなら新しいスマホをそろそろ買ってもいいんじゃね? 最新のスマホの画質めっちゃヤバイだろ?」


 そういえば坂野はご飯とか風景とかの写真をよくスマホで撮っていた事を思い出したので俺はそう言ってみた。


「うーん、でもその為には私もバイトをしないといけないからなぁ……って、え? せっかく新しいスマホを買ったのに健人はまだ何も試しに撮ってみたりしてないの? それは普通に勿体なくない?」

「え? あー、まぁでも俺はあんまり写真とか取らないタイプだからなぁ……」


 ふと坂野は俺に向かってそんな事を言ってきた。まぁ確かに高性能のカメラが付いているのに何も撮らないってのは勿体なくも思えるよな。


 でも俺は元々写真とか全然撮らないタイプだからしょうがないっちゃしょうがないんだけどさ。


「そういえば確かに健人はあんまり写真とか撮らないもんね。うーん、でもせっかくの高性能カメラが付いてるのにそれは何だか勿体ないね……って、あっ、そうだ。それならせっかくだしさ、今からその新しいスマホで今から試しに一枚撮って見せてよ」

「え? あぁ、それは別に構わないけど……でも一体何を撮ればいいんだ?」

「いやそんなの私に決まってるじゃん? いえーい、ぴーすぴーすー」

「え……えっ!?」


(さ、坂野の写真を……撮っても良いのか……?)


 そう言いながら坂野は机に突っ伏した状態のままピースサインを取ってきた。そして俺はそんな提案にビックリとしてしまい息を飲んでしまった。


「うん? どしたの健人? ぼーっとしてるけど何かあった?」

「えっ!? あ、い、いや何でもないよ! え、えっと、それじゃあその……撮ってみるぞ?」

「うん、よろしくー」


―― パシャッ!


 俺は若干緊張した面持ちになりながらもカメラを起動して坂野に目掛けてシャッターを押していった。


「……よし。撮れたぞ」

「うん、ありがと。それじゃあ早速見せてよ」

「あ、あぁ、うん、はいこれ」


 俺はそう言いながら今撮ったスマホの写真を坂野と一緒に見ていった。


「おー、すっごく綺麗に撮れてるね。へぇ、今のスマホってこんなに綺麗に写真が撮れるんだ。うん、これはちょっと私も新しいスマホが買いたくなってきなー」

「あ、あぁ、本当に凄いな……めっちゃ綺麗に撮れてるよな……」


 坂野は満足そうな笑みを浮かべながら俺にそんな感想を伝えてきてくれた。でも俺はというと……。


(……い、いや……やっぱりめっちゃ可愛いよなぁ……)


 俺は坂野の写真を見ながらそんな事を思っていった。好きな女の子の写真を自分のスマホで撮影出来るのって普通に嬉しいよな。


「あ、そうだ、せっかくだし健人も一緒に撮ろうよ?」

「……えっ?」


 俺はそんな事を心の中で思っていると、唐突に坂野がそんな提案をしてきた。


「え、えっと? いや一緒に撮るってどういう事だよ?」

「どういう事って言葉通りの意味だよ? ほら、インカメラにしたから、もっとこっちに寄って寄ってー」

「え……って、えぇっ!? いやそんなに近づかれると……!?」


 そう言うと坂野は俺のスマホを持ちながら俺の方に顔をグイっと急激に近づいてきた。


(ちょっ……え、えっ!? い、いや、めっちゃ良い匂いがするんだけど……!?)


 坂野の身体が物凄く接近してきた事で、坂野の身体からほんのりと淡くて甘い匂いが漂っている事に気がついた。


 こ、これって香水とかボディミストの匂いなのかな……って、いや駄目だ駄目だ!! 女の子の匂いを嗅ぐなんてそんなの変態じゃん!!


「よし、それじゃあ撮るよー、はいポーズ」

「え……えっ!? あ、ちょっ、ちょっと待っ……!?」


―― パシャッ


 俺はそんな感じで滅茶苦茶内心で焦っていると、坂野はそう言いながら写真を撮ってきた。


「うん、撮れたね。それじゃあ早速確認してみよっか。って、おー、健人もバッチリと撮れてるよー。はは、でも何だかビックリとしたような顔してて面白いね」

「そ、それはその……いきなり写真を撮られたらビックリとするに決まってるだろ」

「はは、それもそうだねー。あ、この写真私にも後でLIMEで送ってよー」

「え……あ、あぁ、わかったよ」


 という事で俺は今撮った写真をスマホの無料通話・チャットアプリであるLIMEにて送付していった。


(それにしても……俺の顔……真っ赤過ぎるだろ……)


 俺はその写真を送る前にそこに映し出されている自分の顔をもう一度見てみたんだけど、まぁ当然の事ながら俺の顔はトマトのように真っ赤になってしまっていた。


 でも坂野は俺が顔を真っ赤にしてる理由はわかってないようなので、とりあえずその点だけは俺はホッと安堵した。

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