第7話:ダウナーちゃんとスマホ
週明け月曜日の朝。
「おはよー」
「んー? あぁ、坂野じゃん。おはよ」
俺は自分の席に座りながら新しく購入してきたスマホを弄っていると、横から坂野に声をかけられた。どうやら坂野は今登校してきたようだ。
そして坂野は俺の隣の席なので、そのまま自分の席に座ってから俺の方に顔を向けて喋りかけてきた。
「何だかニヤニヤしてるけどどうしたの? もしかして何か良い事でもあったの?」
「え? あぁ、うん、そうなんだよ。ほら、ちょっとこれ見てくれよ!」
「んー? って、おぉっ」
俺はそう言いながら手に持っていた新型のスマホを坂野の方に見せていった。
「おぉっ、凄いじゃん。これって最新のアールフォンだよね? どしたのこれ? 自分で買ったの?」
「あぁ、うん、そうなんだ。実は前々から使ってたスマホが壊れちゃったからさ、一昨日の土曜日に新しく買ったんだよ」
アールフォンとは日本で一番売れてるスマートフォンの事だ。俺はそのアールフォンの最新機種をこの土曜日に思い切って買ってきたんだ。
だから俺はその最新機種を買えた事が嬉しくてついつい顔を綻ばせてしまっていたというわけだ。
「そうなんだ。でもこれ物凄く高かったでしょ? お金は今までやってたバイト代から出したの?」
「あぁ、うん、そうだよ。いやもう本当に高かったけど凄く満足してるわ。今までバイトを頑張ってきてて良かったよ」
「ふぅん、そっかそっかー。いやでもアールフォンの最新機種をバイト代で買ったって本当に凄い事だと思うよ。うん、本当に今までバイトお疲れさま、健人」
俺が嬉しそうにそんな話をしていくと坂野は労いの言葉を俺に送ってきてくれた。
「うん、ありがとうな。まぁでも数年振りにスマホを買い替えたから凄い高性能過ぎてビックリしちゃってるんだけどさ、あはは」
「まぁ、一気に新しい機種に変えるとそうなっちゃうよねー。でも新しいスマホに買い替えたのは羨ましいよ。ほら、私のスマホなんてもう中学の頃に買ったヤツを未だに使ってるからもうオンボロだからさー」
「あー、確かにそれだけ昔のだと性能的にはしんどいかもな。坂野は新しいスマホとか買い替えたりしないのか?」
「んー? いや私はバイトとかしてないしそんなにお金もないから買い替えとかはいいかなって」
「ふぅん、そうなんだ? ……って、あ、そうだ! それなら良かったら俺のやってるバイトを紹介しようか? 普通のレストランなんだけどさ」
という事で俺はバイト先の店長に言われた通り坂野にバイトをやらないかと尋ねてみた。
「んー、レストランでバイトかぁ……何だかキビキビと動かないと行けなさそうだし大変そうだなぁ……」
「い、いや、そんなにだぞ? まぁ覚える事とかは沢山あるかもだけど……でも覚える事をしっかりと覚えたら後はマニュアル通りに働くだけだし、良かったら坂野もやらないか?」
坂野はあまり乗り気ではない雰囲気を漂わせていたんだけど、それでも俺は困っている店長のために頑張ってバイトのPRをしていった。決して坂野の可愛らしい制服姿が見たいためではない。
「んー、そうだねぇ……ま、考えておく事にするよ」
「そっか、わかった。それじゃあもしも気が変わったら俺にまた教えてくれよ」
「うん、わかったよ」
という事であまり乗り気では無さそうなのはわかっていたので、俺はあまり引き留めるのも良くないだろうと思ってそう言っていった。まぁ、やっぱり自分の時間を大事にしたいんだろうしさ。
「……あ、そうだ。せっかくだしさ、健人の買った新しいスマホもっと近くで見してよ」
「ん? あぁ、もちろん良いぞ。ってか触ったり動かしたりしてくれても全然良いよ。ほら」
「え、いいの? うん、ありがと、健人。それじゃあ……って、おぉっ! 物凄くサクサク動くね! うん、これは確かに凄いよ」
俺が買った最新スマホを坂野に手渡してみると、坂野は凄い凄いと言いながらスマホを操作していっていた。
そしてそれから程なくして坂野は満足そうな笑みを浮かべながら俺にスマホを返してきてくれた。
「いやー、ありがとね、健人。新しいスマホってこんなにも進化してるなんて知らなかったよ」
「あぁ、本当にそうだよな。ネットを見たりアプリを開いたりするのも凄いサクサクだしそれにカメラ機能も進化してるからめっちゃ綺麗な写真とか動画も撮れるようになってるしな。まぁそうはいってもまだスマホ買い替えたばかりだから何にも写真も動画も何も撮ってないんだけどさ、あはは」
「あ、なるほどー、写真とか動画も綺麗に沢山撮れるってのは良いね。私も料理とか風景の写真をよく撮ってるからそれは羨ましいなー」
俺がそう言うと坂野は若干羨ましそうな表情をしながら俺にそう言ってきた。
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