第6話:俺とアルバイト

 それから数日後の金曜日の夕方。


「いらっしゃいませー!」

「あ、すいません、今から二人って入れますか?」

「はい、二名様ですね! それではこちらのお席をお使いください!」


 俺はバイト先のファミレスでウェイターとして働いている最中だった。


 ファミレスのバイトはお昼時とか夕食時にはかなり混雑して大変だけど、それでも俺は接客業が割と好きなのでこのバイトをするのはとても楽しかった。


「榊原君、お疲れさま。バイト交代するよ」

「あ、先輩、お疲れさまです」


 それから程なくして先輩がスタッフルームからやってきて俺と交代するために声をかけてきてくれた。


「はい、わかりました。それじゃあ後はよろしくお願いします!」

「うん、了解ー」


 という事で俺は先輩にそう挨拶してからスタッフルームの方へと戻っていった。


「あ、榊原君、お疲れ様」

「あ、お疲れ様です店長!」


 スタッフルームに戻ると、そこには店長が机に座って居た。どうやら何かの書類仕事をしている最中のようだった。


「榊原君は今日はバイトは上がりだよね? いやー榊原君にはいつも沢山バイトに入って貰って本当に助かってるよ。いつも本当にありがとうね」

「いえ、こちらこそいつも店長や先輩に助けて貰っているので、俺の方こそいつもありがとうございます! 本当に良い職場過ぎて一番最初のバイトにここのファミレスを選んで良かったですよ!」

「はは、そっかそっかー! うんうん、バイトの子達に良い職場だって言って貰えるのは本当に嬉しい限りだよ。ふふ、それじゃあこれからもよろしく頼むよ?」

「はい、もちろんです!」


 俺がそんな事を言うと、店長はとても嬉しそうな表情を浮かべながらそう言ってきた。


「あ、そういえば榊原君ってここのバイトを初めてもうすぐ二年くらいになるよね? ふふ、どうかな、それじゃあバイト代とかは結構溜まってきたのかな?」

「はは、そうっすね。おかげさまでだいぶ貯まってきましたよ。あ、でも今使ってるスマホがもう壊れそうになってるんで、この土曜日に今までの貯めたお金を使って新しいスマホを買いに行こうと思ってるんですよ」

「おー、それは良いね! うんうん、それじゃあ明日はスマホの買い替えを楽しんできてね」

「はい、ありがとうございます!」


 店長は優しく笑みを浮かべながら明日のスマホ購入を楽しんできてねと言ってきてくれた。いやスマホを買い替えるのは久々なので本当にとても楽しみだ。


「……あ、そうだ。あとちょっと榊原君に聞きたい事があるんだけどさ……」

「俺に聞きたい事ですか? はい、一体何ですか?」

「うん、あのさ……榊原君の周りでバイトを探してる子とかっていないかな?」

「え? バイトを探してる子……ですか?」


 すると突然、店長からバイトを探している子が周りにいないかと尋ねられてきた。


「うん、そうそう。これから三月になると卒業のシーズンになってくるよね? だからこの時期からバイトを辞めちゃう子が一気に増えてきちゃうんだよね……」

「あー、なるほど。確かに三月になるとそういう時期になっちゃいますもんね」

「うん、そうなんだよ。それでもしさ、榊原君の方で誰かバイトを探してる子とかいたら良かったら声をかけて貰えると助かるんだけど……」


 店長はしんどそうな顔をしながら俺に向かってそう言ってきた。あぁ、ひょっとしたら今店長が見てた書類は来月からのシフト表だったのかな?


 だから店長はバイトに来れる子がどんどんと減ってきて頭を悩ませている様子だったんだな。


「はい、わかりました。それじゃあ誰かバイトしたい子がいたら声をかけてみますね。でも周りの友達とかはもう既に違うバイトをやってる人が多いから中々いないかもしれないっすけど……」

「あぁ、ありがとう、声をかけて貰えるだけでも十分に助かるよ。週1~2とか少ない時間でも大丈夫だし、他のバイトとの掛け持ちでも大丈夫だからさ……だから気軽にバイトをしたいなって子がいたら是非とも紹介してね」

「はい、わかりました」


 という事で俺は店長のお願いを聞いていく事にした。でも俺が今言ったようにバイトをしたいヤツはもう既に何かしらのバイトをしてるからな……。


(うーん、誰かバイトやりたいって言う人は周りにいるかなぁ……って、あっ)


 俺はその時、ふと坂野の事を頭に思い浮かべていっていた。そういえば坂野はバイトとかしてなかった気がする。


(それに好きな女の子と一緒に同じバイトをするってのは、何だかちょっと楽しそうなシチュエーションだよな……)


 しかもここのファミレスの女子の制服はメイド服っぽい感じの衣装になっていて可愛らしいから、坂野にも凄く似合いそうなんだよなぁ……って、いや違う違う! 俺にはそんな邪な思いなんて一切ないからな!


(ま、まぁでも……せっかくだし週明けにでも坂野にバイトについての話でも振ってみようかな?)


 という事で俺は週明けに坂野にバイトについての話を振ってみる事にしてみた。いやあくまでも店長が困っているから聞いてみるだけだ。決して坂野の可愛らしいバイト制服姿が見たいという訳ではないからな!

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