あなたが、
ねまき
第1話
「お母さんならわかってくれると思ってた」
生まれて初めて母を突き放す言葉を吐いた。ずっと尊敬していた母に、だ。
「私はっ!お母さんが思ってるような強い子じゃないんだよ、?」
酸素が全て二酸化炭素に変わったと思った同時に、鋭利なものが刺さったような心臓の痛みを伴った。こんなはずじゃなかった、こんなこと言うつもりじゃなかった。
母の眼から溢れ出てくる涙で私は死にかけた。
どうしてこうなってしまったのだろう。私は一年間を思い返す。
いつも通りだった、父の仕事で一家転住。古びたカラオケ館に錆びた公園、田舎といえば田舎だけど田んぼや畑はないし電車やバスは十五分に一本はくる、そんな場所だった。
「都会の人からしたらなんも無いじゃろ」
一ミリも思わなかった。精米機も意味の無い広い駐車場も道の先が見えない真っ暗な夜見える星もないにこの場所を、私は田舎とは思わなかった。
「馬鹿にすんな」
だから私が都会人といじめの標的にされるとも思わなかった
"あの福岡から来た転校生"と学校中で噂になり、知らない人が私を見に来て名前を呼ぶ、動物園の動物にでもなったようだった。
雌たちは陰口を言い、雄たちは聞こえる声で罵倒した。移動教室が分からずやっと着いた教室で、授業に遅れるなとボスが怒鳴り散らした時、私は異国の国にでも来てしまったのかと思った。
二週間ほど経ったある日、変化が起きた。知らない子が雌たちに殴られていたのだ。
誰だろうあの子は、戸惑う私に今まで傍観者だった雌が近寄ってきて謝罪した。その頃の私はあまりの汚さにこいつらが同じ人だと思え無くなっていた。
「あの子だれ?」
「荒木さん、家の用事で休んでたらしいよ」
スラッとした脚にスっと通った鼻筋、淡褐色の瞳。荒木アリンは何が楽しいのか痛そうな腹を抑えながら笑っていた。
あなたが、 ねまき @aiueo-12
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