第34話 アルトお前な……。

「はぁ……はぁ……チッ。くそ遅刻じゃん……アリアに謝んないとな……」


 アリアを助けた次の日の昼休憩。

 話の長いてっぺんハゲ教師の面白くもない話のせいで授業が15分も長引いた俺は、急いで教室に戻って授業道具を鞄にしまい、食堂に行く準備をしていた。

 

 チッ……巫山戯んじゃねぇ。

 誰が授業の30分を育毛魔法とかいう俺達の年代が1番興味無い話に使う奴がいるんだよ。

 次も同じ話をしやがったら俺のコネをフル活用して訴えてやる。


 因みに昼休憩は1時間と決まっており、授業が終わってから教室に戻るまでに数分を要したので……既に約3分の1が終わったことになる。

 は、調子のんな。


「———あ、アルト」

「え、レティシア? どうした———おぅ……」


 急いでアリアの待つ食堂に向かおうとした所で、まさかのレティシアにばったり鉢合わせしてしまう。

 それも———2つのお弁当を持ったレティシアに。

 

 ……すぅーーこれって片方は俺のだよな?

 絶対そうだよな?

 …………これって乙女ゲーで合ってる?

 ギャルゲーって言われた方が納得いくんだけど。


 そんな余計な思考に意識を割いて必死に焦りを隠す俺に、レティシアが不思議そうに首を傾げる。


「どうしたの? 汗かいてるけど……」

「い、いやっ、何でもない……ははっ……ははは……ち、因みにその弁当って……」

 

 俺は既に約束の時間に最低15分は遅刻していることと、最悪なタイミングでレティシアに会ってしまったことから起こる焦燥を必死に取り繕うように笑う。

 同時に話を逸らそうと話題を振る。

 するとレティシアはほんのり頬を朱色に染めてもじもじし始める。


「こ、これは……アルトのお弁当よ。私の手作りだから味は他と劣るとは思うけど……あ、安心して! 不味くて食べれないなんてことはないから!」

「そこは特に心配してないんだけど……」


 ……ふっ、こんなことが俺に起きても良いのか?

 非モテ陰キャ道を長年貫いてきたこの俺に?

 

 正直めちゃくちゃ嬉しい。

 どのくらい嬉しいかと聞かれたら、今この場で飛び上がって歓喜の雄叫びを上げたいと即答できるくらい嬉しい。

 


 ———今日じゃなかったら。



 勿論昨日の内に知らせてなかった俺が100%悪いのは承知の上だ。

 レティシアが悪いなんてことは世界がひっくり返ってもあり得ないのだが……如何せんタイミングが悪いんだ。


 ほんと今日以外ならな……ってこれじゃあ俺が、まるで浮気相手に会いに行く時にばったり彼女に会ってサプライズに混乱を極めた塵みたいだな。

 勿論俺はアリアと何もなく、ただ昨日のお礼をして貰うだけなのにな。

 ……なら普通に言った方が軽く済むくない?

 てか弁当も食堂もどっちも食べたらいい話では?


 今更ながらに全く隠す必要がないことに気付いた俺は、今まで焦っていたのが馬鹿らしく感じて肩透かしを食らう。

 何なら隠していてバレた時の方が面倒極まりない状態になる予感がビンビンする。


「あ、あの……レティシア? 伝えないといけないことが……」

「……何?」

「実は———」


 俺がアリアとのことを言おうとした時———。


「———ねぇ、あの首席合格した平民が学園中を走り回ってるらしいよ。それも男を探してるとか」

「そうなの? 第2王子殿下とか軍師様の1人息子のヴァルター様がいながら?」


 俺達の横を2人の女子生徒が通り過ぎる際の会話に思わず言葉を止める。

 同時に物凄い罪悪感に苛まれた。


 ……絶対遅くなった俺を探してるじゃん。

 あの子律儀で優しそうだったし……俺のせいでこんな噂が流されるとか可哀想過ぎるだろ。

 

「———ねぇアルト!」

「はいっ!」

「『実は』……何なの?」

「あ、それなんですが……実は昨日とあ「あ、アルト様っ!!」…………」


 俺はアリアの俺を呼ぶ声が聞こえてきて、段々とレティシアの瞳が冷たくなるのを眺めながら、一気に全身に滝のような汗を流して口を噤む。


 何でこうもタイミングよく見つかるのだろうか。

 もうここまで来たら神が仕組んでいるとしか思えないんだが。


 俺はギギギッ……っと錆び付いた機械の様にぎこちなく顔を声の主の下へと向けると……俺を見つけれて満面の笑みを浮かべたアリアの姿があった。

 しかしアリアの視線が直ぐに俺の隣にいるレティシアの方に移り、ビクッと身体を震わせた後で、今度は気持ちを隠して偽りの仮面で取り繕ったような笑みを浮かべる。


「ご、ごめんなさい……アルト様、レティシア様。私のことはお構い無く御2人で……」

「———ちょっと待ちなさい」


 ぎこちない笑みを浮かべたアリアが帰ろうと踵を切る寸前にレティシアが声を上げたことによってアリアの動きが止まる。


「えっと……」

「貴女はここにいても良いわ。それよりも———」


 レティシアの絶対零度の瞳が俺を射抜き、彼女の黒い笑みに身体が震え、乾いた笑みすら浮かべることが出来なくなった。

 そんな俺の頬に優しく触れたレティシアが耳元に口を近付け———。




「———これがどういうことなのか……しっかりと説明してもらうわよ? 浮気性なア・ル・ト・君?」

「…………はい」




 底冷えした低い声で囁いた。



 スレ民達……俺、何も悪いことしてないのに死んだかもしれない。



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 これからもアルトはやらかしていきますのでよろしくお願いします!!

 

 ここまで読んで下さり、ありがとうございます!!


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