第33話 やらかし王、主人公を助ける(ただでは終わらない)
「———一体どうなるだろうなぁ? 俺がお前らの悪行をレティシアに伝えたら、フリージング公爵家はどうなるか知らんけど……レティシアは間違いなく毛嫌いするだろうなぁ……?」
「ぐっ……」
「そ、そんな……」
俺はなるべく悪人の様な邪悪な笑みを浮かべ、3人の女子生徒を脅す。
それだけで取り巻きっぽい2人は顔を青ざめさせて後ずさるが……親玉みたいな金髪の女子生徒は毅然とした態度で俺を睨み付ける。
「ふ、ふんっ、好きにすればいいですわ! 貴方はあくまでレティシア様の婚約者で侯爵家の私より爵位は低いのですから! それに……私にはフリージング家にも負けないエアリアル家の後ろ盾が———な、なんですの、その気持ちの悪い笑みは……!」
侯爵令嬢らしい女子生徒が俺の顔を見て動揺した様子で叫ぶ。
俺は彼女の指摘で自分が笑っていることに気付いた。
おっと……思わず顔に出てたらしい。
でもなぁ……この口論、完全に俺の勝ちが決まっちゃったからなぁ。
「ごめんな、名も知らぬ少女。実は俺……エアリアル家のゼノン様から一目置かれててな? つい昨日『ウチのセナと結婚しないか?』とまで言われた仲なんだよ。勿論俺にはレティシアがいるから断ったけどな? 勘違いすんなよ??」
勘違いされて詰むのは確実に俺なんだから。
「なっ……!?!?」
遂に侯爵令嬢さんの表情が崩れた。
俺は本格的に焦り始めたらしい侯爵令嬢さんにノリノリで追い打ちをかける。
「更に言えば……俺は国王陛下とララ様とも交流があってな。国王陛下とララ様とは一緒に酒を飲んだ仲でもあるんだ。しかもララ様とは———」
「———な、何が目的なんですの!?」
これ以上は勝てないと悟ったのか、俺の言葉を遮って叫ぶ侯爵令嬢さん。
取り巻き達は完全に反骨心が折れたのか、ブルブルと震えているだけなので放って置いても問題ないだろう。
俺はゆっくりと侯爵令嬢さんの前まで歩いて行くと……倒れているアリアに一瞬視線を向けた後で侯爵令嬢さんを見下ろす。
「———金輪際アリアさんに近付くな。周りにアリアさんの変な噂を流したりも駄目だ。間接的にでもお前らは関わっていると分かったときは……」
俺は【闇のコート】を発動。
同時に俺の全身に膨大な魔力の奔流が発生し、黒よりも濃い漆黒のコートで纏われる。
「———お前らに、地獄を見せてやるよ」
「ひっ———」
魔力と殺気を混ぜた俺の言葉に、遂に侯爵令嬢さんが呆然とした顔で腰を抜かして尻もちを付いた。
俺は魔法を解くと、侯爵令嬢さんに目線を合わせる。
「アンタら、名前は?」
「……え、エリア……ですわ……」
「ら、ライです……」
「え、エリです……」
ふむふむ……直ぐに忘れそうだな。
まぁこいつ等が俺に名前を知られていると自覚してればそれでいっか。
「よし、名前は覚えたからな? 次は容赦せず、問答無用で顔面にドロップキックを決めてやるからもうこんなことすんなよ」
「「「は、はい……!!」」」
そう言って逃げ出す3人から視線を切ると……倒れたまま、呆然とした表情でぼんやりと俺を見ているアリアに目を向ける。
……何て声掛けよう……。
取り敢えず無難に大丈夫でいっか。
「えっと……大丈夫?」
「……え、あ、は、はいっ」
「いやそんなに怖がらなくても……」
原作主人公にさえも恐れられてるってどういうことだよ……。
しかしアリアは慌ててブンブンと首を横に振る。
「そ、そんなことありませんっ! ただ……」
「ただ?」
「みほ———驚いただけですっ!」
その前になにか言ってなかった君?
まぁそれを深堀りしたら地雷臭がするし聞かないけど。
最近は自分が地雷になったせいかどこに地雷が埋まってるか分かるようになってきたんだよなぁ……。
俺が遠い目をしていると、俺の手を借りて立ち上がったアリアが頭を下げる。
「た、助けていただきありがとうございました……!!」
「あー……別に良いよ。それじゃ」
そもそもハンさんのお願いだしな。
てか折角金沢山貰えるんだし、ハンさんとゼンさんに肩代わりしてもらってた1000万マニに利子つけて渡そ。
そんな事を考えながら教室を出ようとした俺の腕をアリアが掴む。
「ま、待ってください! な、何もしないわけにはいきませんっ!! な、何か私に出来ることはありませんか!?」
「いや……あんなのチョロいもんだし本当に良いんだけど……」
律儀な子だなぁ……俺ならお礼だけ言って帰るぞ多分。
でも頼みたいことなぁ……正直俺が頼みたいことって言えば、1週間後に待ってるゼノン様と陛下との対談くらいしかないんだよな。
「何もないかなぁ……」
「で、ですが……な、何でもしますからっ!」
「ぶっ———お、女の子が何でもするなんて言っちゃダメでしょうが!」
その言葉に一体どれだけの男が心揺さぶられると思ってんだ!
しかも、原作主人公であるアリアはお世辞抜きでめちゃくちゃ美人だ。
この世界では珍しい黒髪黒目だが、逆にそれが良い。
そんな美少女から何でもすると言われて断れる男が果たしてどれだけいるだろうか……いやいない、俺以外はな!!
てかレティシアが怖くていかがわしいお願いなんて出来んわ!!
「ほんとに大丈夫だから……あ、そうだ。なら明日の学食奢ってくれん? 俺、超絶貧乏子爵家だから学食食べたことないんだよね」
まぁ本当は学食なんて食っている余裕が無かった、と言ったの方が遥かに正しいが別に嘘ではない。
俺が提案するとアリアがぱーっと笑顔を咲かせる。
「わ、分かりましたっ!! 幾らでも奢りますっ!」
「いや普通に1回で良いから……」
「そ、そうですか……」
俺が1回で良いと断れば、アリアはシュンと露骨に残念そうに落ち込む。
しかし女の子に毎回奢ってもらうって完全に屑……いやもう十分屑だわ。
よし、このまますれ違えば挨拶する程度の友達の関係に落とし込めて見せますか。
そんなことを意気込んでいるとは露知らず、アリアが上目遣いで尋ねてくる。
「え、えっと……明日学食で待っていればいいですか……?」
「うん、俺が学食行くから待ってて」
「わ、分かりましたっ!! あ、この教室は私が片付けますので、先に帰って貰って大丈夫ですっ!」
「お、おう……ありがとう」
俺はアリアに乗せられるままに、確かな達成感と自分もやれば出来るという自信を胸に教室を出た。
「……あ、アルト様……か、かっこいい……」
既にすれ違えば挨拶する程度の関係に落ち着くなど到底不可能であると、アルトは知らない。
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ここまで読んで下さり、ありがとうございます!!
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