第18話 修羅場☆
———い、言ってやったぜ……!
俺は国王陛下とララ様の前で全力の土下座を遂行しながら、内心で誇る。
何で誇ったのかも誰に誇ったのかも俺にも分からないが……もうテンションがおかしくなったとでも思っておいてほしい。
それにしても脳死で返事してたらいけないな……次からはちゃんと話を聞いてからよく考えて言おう。
ふぅ……ただこれで何とかレティシアに怒られないで済みそう———。
「———-別に構いませんよ? 流石に正妻がどちらかは決めないといけませんが」
———なんて甘い考えを抱いていた数秒前の俺を殴ってやりたい。
俺はなんてことないと言わんばかりに言ったララ様の表情を伺うも……本当に何とも思っていなさそうな表情をしていた。
ならララ様を溺愛している国王陛下ならなにか言ってくれるかもというほんの微かな期待を篭めて視線を移すが……普通にニコニコしていたので無理っぽそうだ。
ああ、そう言えばこの世界って乙女ゲーだったね……普通に逆ハーエンドもあるらしいしハーレムだってあるわけか。
さて、どうしようかな……普通に大ピンチなんだが。
俺は何かアドバイスをと思ってヘカテーを探すも……まさかの消えていた。
小さくなるとかではなく、跡形もなく消えていた。
あ、あのクソアマ……いつの間に……!
はぁ……もうこの際だから全部本音で押し通すとするか……。
俺は土下座の状態のままで口を開く。
「え、えっと……申し訳ございませんが……私には2人の女性と結婚するなど出来ません」
「ほう……何故だ? ララは外見内面共に文句なしだと余は思っているが……まさかララでは不服というのか?」
上からほんの僅かに怒りが籠もった声が降ってきたので慌てて訂正する。
「そ、そんなことはありません! ララ様はとても素晴らしいお方だと存じます。ですが……私には2人の女性を幸せにするという器用な真似は出来ません! 1人ですら不安だと言うのに、2人となると間違いなくレティシア様かララ様のどちらかが不幸になってしまいます。そういうことですのでララ様はもっと私より美しくて器の広く、優しい人と結婚したほうが1万倍マシだといいたいのです!!」
うーん……我ながら大分情けないこと言ってるな。
ただ、俺には女2人を幸せにできる器量がないと言ってるわけだし……これは流石に諦めてくれるだろ。
我ながら完璧な言い分だと自負していたその時———俺の頬が何か包まれる。
それがララ様の手だと気付くのに数秒の時間を要した。
え??
ナニコレ……どういうこと??
えぇ??
唐突なことに理解が追い付かずに土下座の状態で固まる俺の頭上から、聖母のようにとても落ち着く声色の声が聞こえてきた。
「頭を上げてください。貴方が頭を下げる必要などありません」
その言葉に、俺は自分でも意識しない内に頭を上げていた。
同時に、目の前で柔らかな笑みを浮かべるララ様の姿目に飛び込む。
「ふふっ……アルト様はお優しいお方ですね」
「そ、そんなことは……」
本当に優しい人は好きでもない人に告白なんてしないんですよ。
それに比べて俺は安価で……あれ?
なんか急に俺がとんでもない屑人間に思えてきたぞ。
これまでやらかしてきたことを思い出して自身がとんでもない屑人間なのでは……と真面目に考えている俺にララ様はゆっくりと首を横に振った。
「いいえ、そんなことあります。ここまで私達女性のことを考えてくださる殿方はとても少ないのですよ?」
「それはそいつ等が救いようのないゴミクズなだけです」
俺がそう断言すると、ララ様が少し目を見張って驚いたように俺を見た。
それと時を同じくして部屋に静寂が再び訪れたかと思うと———。
「———ぷっ。あははははははっ!」
「ら、ララ様……?」
突然ララ様がお腹を抱えて笑い始めるではないか。
そしていきなり豹変したララ様に戸惑いを隠せない俺に、目に浮かんだ涙を拭いながら言った。
「ふふふっ……ごめんなさい。ただ……あまりにもハッキリとおっしゃるのだなと思って……ふふっ」
「……どうせ結婚するならお互い幸せに越したことはないでしょう?」
この考えが貴族としては正しくないような気がしなくも無いが。
しかし、どうやらララ様にとっては正解だったようだ。
ララ様は一頻り笑った後、先程からずっと静かだった国王陛下の方を向いて言う。
「お父様、どうやらお父様はゴミクズらしいですよ?」
「え??」
…………もしかして俺、またやらかしちゃった?
ホントに学習しねぇな俺!?
俺は自身のしでかしたことに更に冷や汗を垂らしまくりながら国王陛下に土下座をしようとする。
「け、決して国王陛下に言ったわけではなくてですね……! えーっと……」
めちゃくちゃに焦る俺は殆ど機能していない頭を必死に働かせて言い訳を考えるも、その前に国王陛下が口を開いた。
「……頭は下げなくてよい。そなたの言う通りだ。確かに余は……何人も妻を娶っておきながら妻達を幸せには出来てないゴミクズかもしれぬ。ふっ……まさか余よりも遥かに年下の子にそれを気付かされるとはな……」
そう言い終わった後の国王陛下は、小さく笑みを浮かべて俺を見た。
「そなたは自分には2人の女性を幸せに出来ないと言っていたが……余にはそうは思えん。そなたならきっとララを幸せにしてくれると感じた」
「そんな……流石に買い被り過ぎですよ……」
俺は謙遜なんかではなく心からそう思って言うが、ララ様が俺の手を取って首を横に振り、微笑を浮かべる。
「そんなことないですよ、アルト様。私は貴方のような殿方と結婚———」
恐らくこの後に「したいです」が続いたはずだったのだろう。
しかし、その言葉が口から出ることはなかった。
「———アルト、助けに来たわ!! 大丈夫…………は?」
なんとこの部屋に、全力で走ってきたのか……髪と息を乱したレティシアが乱入してきたのだ。
奥から何やら「待ってくださいレティシア様!!」とか聞こえてくるが、今はそんなことなどどうでも良かった。
レティシアは、俺と俺の手を握って笑顔を浮かべていたララ様を見て一瞬にして表情を消す。
しかし次の瞬間には憤怒に支配されたように顔を真っ赤にして、眉をピクピクさせながら言った。
「へぇ……私が家を捨てる覚悟で助けに来たのに……対するアンタはララ様とイチャイチャね……」
「は、ははっ……終わった」
絶対零度のような冷たい眼差しを受けた俺は、結構真面目に死を覚悟した。
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ここまで読んで下さり、ありがとうございます!!
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