第13話 その精霊は———。

「———いやぁ……久し振りに元の身体に戻れたなぁ……ありがとね、契約者君」

「「…………」」


 まるで寝起きの人のように欠伸や伸びをする恐らく精霊だろうと思われる謎の美女の姿に、俺もレティシアもポカンと口を半開きにして呆然と眺める。


 え、いや……どんな状況??

 というか何でまだ15時くらいなのにお空に満天の星が浮かんでるの?

 そもそもどんだけ天井に穴開けてんだよ!?

 余裕で森林破壊だよね!?

 そしてもしかしなくてもこれら全部俺のせい……だよな分かってましたよッッ!!


 俺は自分がとんでもないことをやらかしたと分かるや否や……尋常じゃない程の汗が全身から噴き出してきた。

 同時にこの後のことを考えて身震いが止まらない。


 空が暗くなったのは……まだ何とか誤魔化せる。

 というか俺みたいな弱小貴族がやったなんて誰も思わないからそれ自体は大した問題じゃない。 

 いや大した問題ではあるのだが……既にそれ以上にやばいことをしでかしていた。



 ———精霊の森の破壊。



 これは王国の法律において、殺人よりも重い罪に問われる。

 どれだけ軽くても懲役50年又は、無人島に島流しにされ、2度とこの国に立ち入ることを禁止される。

 これはどんなバカでも貧乏でも知っており、過去に王族の1人も島流しにされたという話があるくらいだ。


 は、ははっ……俺、今日で死ぬんかな?


 俺が半ば死を覚悟していると、宙に浮いていた謎の美女が俺の下に飛んできて心配そうに顔を覗き込んできた。

 

「———どうしたんだい、契約者君?」

「……どうしたんだい、だって……?? どうしたも何も、アンタのせいで森林破壊するわ、空がいきなり真っ暗になるわでとんでもないことになってるんだが!? 元に戻せるんだよな!? 頼む、元に戻せるって言ってくれ……」


 俺は涙すら流しながら目の前の謎の美女に懇願する。


 もはや今すぐ証拠隠滅して逃げ隠れるしかない……大丈夫、まだレティシア以外には見られてない。

 レティシアには土下座で口外しないように頼み込もう。

 何なら給料0で一生働いてもいい。


 そんな覚悟まで決めた俺に、謎の美女が無情にも告げた。


「戻せないよ」

「あ、終わった」

「ちょっとぉ……折角ボクがあげた精霊石から出たんだから喜んでよ」


 俺は100万マニ失った時が生易しかったと断言できる程の絶望感に立っていられず、その場に崩れ落ちる。

 視界が霞み、もはや耳鳴りすら聞こえない領域に立ち入ってしまったために、先程美女が戻せないと言った後になにか言っていた気がしたが……ごめん、何も聞き取れんかったわ。


 あぁ、完全に終わった。

 これはもうダメだ。

 ……よし、学園なんてバックレて他国に逃げよう。

 それがいい、それしかない。


 思い立ったが吉日とも言うし、今すぐこの場から逃げ出そうと荷物の入ったカバンを肩に担いで———。


「ちょ、ちょっと! どこに行こうとしているのよ!?」


 歩き出そうとする俺を、レティシアが呼び止める。

 そんなレティシアに俺は(笑顔が作れているかは分からないが)笑顔で首を横に振る。


「止めないでください、レティシア様。俺はもうあの国にいることは出来ません。俺はこれから逃亡生活を送ることに決まったんです」

「ボクは勿論ついていくよー」

「ついてくるな疫病霊め。誰のせいで国を出ないといけないと思ってんだ」

「ちょっと待ちなさい! 何でそんなことするのよ!? これは罪なんて霞むくらいに世紀の大発見よ!?」

「………………え?」


 焦り気味とも興奮気味とも捉えられる程に取り乱して訴えるレティシアの言葉に思わず足を止める。

 そして真横にいる謎の美女(疫病霊)を指差した。


「———この傍迷惑な疫病霊がですか??」

「酷いなぁ……契約者君は」

「なら全部元通りにしやがれ」


 そう毒づく俺に、レティシアが何故かアワアワと顔を青白くして焦り出した。

 突然意味不明に焦り出した彼女の姿に俺が首を傾げていると……謎の美女が少し感心したように呟いた。




「へぇ……彼女は知ってるんだねぇ。このボクが———闇を司る精霊神だってこと」





 …………ごめん、タイム。


 俺の頭で処理出来る限界を超えたので、俺はTのポーズをしたあと、速攻でスレ民達に助けを求めた。








347:名無しの地球人

今頃イッチは何してんのかな


348:名無しの地球人

今頃やらかしているに一票


349:名無しの地球人

ワイもやらかしてるに一票ww

イッチがやらかさないわけがないww


350:元地球人

皆んな泣いて喜べ

ワイはまたやらかしてしまったで

それも過去最高レベルにや


351:名無しの地球人

おおおおおおおおおおおおおおお!!


352:名無しの地球人

よっしゃあああああああああああ!!


353:名無しの地球人

キタキタキタキタ!! 

ワイらのエネルギー補給の時間や!!


354:名無しの地球人

やっぱりかww


355:名無しの地球人

信じてたでイッチ!!


356:名無しの地球人

過去最高レベルってww

今までのでも十分やばいのに今回は何をやらかしたん?ww


357:名無しの地球人

ずっと待っとったでイッチ!!

その過去最高レベルをはよ教えて!!


358:元地球人 

順に説明するで

精霊の森に入ると同時にスマホを閉じる

教えてもらった場所に着いて泉に向かうスイッチをレティシアが押す

泉で20回連続『お前とは合わん。別の奴を呼べ』と言われて契約失敗(100万マニが僅か数分で溶ける)

絶望してたワイは、あの時の店員にオマケしてもらった最後の漆黒の精霊石をヤケクソで投げる

光が洞窟内を満たして天井を派手にブッパ(バレれば最低でも懲役50年か島流し&2度と王国に入れなくなる)し、空が15時なのに満点の星が見える夜空に変化

漆黒の髪と瞳の超絶美女が漆黒のドレスを着て宙に浮かんでいるのを発見

その美女が闇を司る精霊神で、ワイを契約者と言う←今ここ

つまり……助けて皆んな


359:名無しの地球人

wwwwwwwイッチwwwwwww


360:名無しの地球人

普通に過去一のやらかしで草

流石イッチ……ワイの想像超えてきたわww


361:名無しの地球人

過去最高レベルは流石に嘘だと高を括っていたワイ、普通に椅子から転げ落ちるwwwwww

もうイッチはワイらの物差しでは測れん存在なんやな


362:名無しの地球人

もう手が付けられないレベルで草

大人しく精霊神とかいう美女と契約しな


363:名無しの地球人

や、闇を司る精霊神だってええええええええええええええええ!?

主人公の相棒である光を司る精霊神の対となる存在じゃないか!!

ワイらガチ勢達がどれだけ頑張っても見つけられなかったというのに……イッチ、今すぐ写真をうpしろ


364:名無しの地球人

ガチ勢が1番取り乱してて草ww

そんなに凄かったんやな……


365:名無しの地球人

主人公の相棒の対になるって……イッチ乙ww


366:元地球人

そ、そんな……主人公と関わるなんて嫌やあああああああああ!!


367:名無しの地球人

自業自得で草


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 ここまで読んで下さり、ありがとうございます!!


 モチベで執筆スピード変わるので、続きが読みたいと思って下さったら、是非☆☆☆とフォロー宜しくお願いします!

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