第39話 お約束のシャワーシーン(音声のみでお楽しみください)

 218階層へとやってきた。


 岩で構成された洞窟のようになっている。これは上層のダンジョンと同じ光景だ。

 ひさしぶりに、見慣れたダンジョンの姿だった。


 見える先の通路は折れ曲がっている。洞窟内を探索したいところだったが、 制服を着たもりもりさんも、黄金の鎧を着ている私も、ともに泥だらけで真っ茶色だ。


 まずはこの状態をなんとかしたかった。


「さすがにこれは、シャワーを浴びたいですね」


 もりもりさんが不快そうに言う。


「じゃあ、ポーションシャワーを浴びちゃいましょうか。ついでに制服と下着も洗いましょう」


 そう言って、私はポーションを100個ほど実体化させた。


「じゃあ、私は壁を作りますね。ダンジョンとはいえ、プライバシーは確保したいですから」


 もりもりさんは石壁創生クリエイト・ストーンウォールの魔法を唱えた。

 洞窟の前後が壁で完全に塞がれた。


 私はアイテム生成で適当な器を作り、そこに小さな穴をたくさん空けた。


 これを頭上に設置してシャワーとして使うつもりだ。


「では、配信画面を切りましょうか」

「そうですね、ポチッと」


 私の操作で、ライブ配信は音声のみとなった。視聴者に見える画面は真っ黒だ。

 なにもない画面にコメントだけが流れていく。


■画面が真っ黒になった!

■映像を切らなくってもいいじゃないか!

■ひどい! ひどすぎる!

■こんな仕打ちをするなんて!

■俺たちが一体何をしたっていうんだ! 何も悪いことはしてないじゃないか!

■ほら、AIが自動でモザイク入れてくれる機能だってあるんだし!

■画面が真っ暗だああ

■くらいよー

■こわいよー

■なにも、みえないよー

■おねがいだあ 映像をいれてくれー なにもみえないからー、こわいよー

■くらいよー

■こわいよー

■くらすぎだよー

■こわすぎるよー


 私ともりもりさんはコメントを無視して服を脱いでいく。

 私は鎧を脱ぎ、もりもりさんは制服を脱いだ。


 中に着ていた下着も泥だらけだった。少し恥ずかしいけれど、全部を脱いで全裸になる。

 もりもりさんも恥ずかしそうに下着を脱いでいた。


「誰にも見られていないとはいえ、外で下着を脱ぐのは恥ずかしいですね」


 顔を真赤にしながら私に言った。


「そうですね。とんでもなく恥ずかしいですね」


 はたして、私の顔は赤くなっているだろうか?

 確認する必要もなく、それは確実なことだった。


 それにしても、もりもりさんの身体……。


「もりもりさん、すごい綺麗ですね」


 こんなに美しい肌は見たことがない。きめ細やかというのは、このことを言うのだ。


 そして、ものすごく発達した乳房。私の制服が小さかったから気がつかなかったが、脱いだもりもりさんはものすごかった。


 これには誰でも目が釘付けになる。乳房本体の大きさに比べ、控えめに小さい乳首と乳輪。肌の白さと区別がつかないんじゃないかというくらいに淡い桃色をしている。


 あまりに綺麗すぎて、気がつくと私は目を見開き、まばたきを忘れてしまっていた。


「春菜さん……。あんまり見ないでください」


 もりもりさんは恥ずかしそうに胸を腕で隠そうとするが、とても大きいものだからまったく隠しきれていない。


 もじもじしながら、もりもりさんはシャワーの準備を始める。

 穴を開けた器からポーションが流れ出した。


「春菜さん、シャワーみたいになりましたよ!」


 嬉しそうな声をもりもりさんはあげた。


■回復ポーションを100本使うとか言っていたよな? 1本1万円のやつ。

■100万円分のシャワー……

■いや、それ以上の価値がありますわ

■そうそう、音声だけでも楽しめます(泣)

■我々は音だけでがまんであります(号泣)

■100万円分のシャワーを音で楽しむのでございまする……(失望)

■至福であります。音声だけしかありませんが。これは天国なのです(絶望)

■音だけでもあることに、感謝しようじゃありませんか(嗚咽)


 私は少し視聴者にサービスをしてあげることにした。


「しかたないですね。じゃあ、私が実況中継しましょう。今、シャワーの水がもりもりさんの胸の谷間を流れています。美しい滝のような流れです」


 視聴者のコメントはピタリと止まり、私の言葉に耳を傾けているのがわかる。


「ところがなんということでしょう、水はダムのように貯まっています。こんな光景、見たことがありますでしょうか。このダムはなんという貯水量でしょう。ダムを作り出すのは、みごとなまでのたわわな果実」


■ごくり……


「そして水は肌の上を流れていきます。若さゆえ、水は生き物ように跳ねております。胸の上で一度バウンドをし、もう一度胸に戻ってきました。奇跡です。こんなことがあるんですね! 水の粒が下へ落ちることができないなんて!」


 私の実況中継に、もりもりさんは頬をぷくっと膨らませた。


「恥ずかしいので! やめてください!!」


 可愛らしい声で必死に胸を隠そうとする。


「でも、羨ましいです。それだけの大きさ。私なんて、こんなものしかなくて……」


 私は自分の胸元に視線を向けた。


「春菜さんだって、きっと成長しますよ!」


■7xだもんな

■気にしてたんだ

■あれ、ほんとだったの?

■嘘情報

■リビングデッドのでまかせだよ

■でも、誤差は±3センチと見た


 それにしても、もりもりさんの胸はかなりの大きさだ。こんなものを持っていると、それはそれで疲れることはないのだろうか?


「でも、もりもりさん、こんなに大きいと肩が凝りますよね」


「そうなんですよ。肩こりはちょっと悩みで……」


「あ、あの……。少しだけ、少しだけでいいので、触らせていただけませんか? どうしても揉んでみたいので」


「ええ!?」


 もりもりさんは驚愕といった表情で驚いて見せる。


「少し。少しだけです。ほんのちょっと……」


「……」


「お願いです。少しだけ、少しでいいので、揉ませてください」


 もりもりさんは、わずかに考え込む。


「少しですよ……」


■!


 もりもりさんの許可を得て、私は肌に触れる。初めて触った同性の肌。年上の女性の肌はこんな感触なんだと味わってしまう。


「あ、いや……。いやん……。春菜さん……触りすぎ、くすぐったい」


「だって、触りたくなるんですもの。お肌がすべすべで」


 二人でシャワーを浴びながら、私はもりもりさんへの接触を続ける。


「もりもりさん、ここに泥が……」


「春菜さん! それ、違います!」


 泥だと思ったが、勘違いだった。危うく禁断の領域に触れるところだった。


「すべすべのお肌ですね」


「あんまり揉まないでください……あっ」


 もりもりさんが黄色い声を上げた。


「とっても柔らかいです。こんなに柔らかいと思いませんでした。肩こりがひどいと言っていたから、このボリュームだともうすこし硬いのかと思っていました」


「あの……。私、はじめてなんです、こんなに揉まれるの……」


 顔を赤らめ、とても恥ずかしそうにしていた。


「何言っているんですか。まだ軽い力しか入れていません。もう少し、揉みほぐしたいんです。こんな機会、もう二度とないかもしれませんし」


 ソフトタッチから、少しだけ手に力を込める。むにゅっとした弾力が伝わってくる。


「あ、イヤンッ! 春菜さん。揉みすぎじゃないでしょうか……!?」


「そうですか? もっと揉みたいのですが。だめですか?」


「そ、そこまで……。そんなとこまで……。あんっ」


「なんか、柔らかいです。柔らかくなってきました。柔らかいですよお。いい感じです。もっとほぐしたほうがいいですね」


「春菜さんの……。揉み方が上手で……」


「では、もっと揉みほぐしていきますね。いい感触です。どうですか? もっと揉んでいいですか? 揉んでほしいですか?」


「はい……。お願いします。揉んでほしいです。もう、全部おまかせします……。あまりに気持ちよくて……。どうにかなっちゃいそう……。あんっ」


■おい、なにしてんだ

■やばいだろ

■チャンネル登録者には、お子様もいるんだぞ

■自重しろって

■うらやまし、けしからん

■教育上よくないから、もっと感触を詳しく教えなさい

■柔らかさを例えると、どんな感じだい?

■マシュマロとどっちが柔らかい?

■30歳、俺氏。DT。未体験の領域。ハルナっちに先越された。

■映像がないのが、かなしみ

■想像力の限界に絶望

■これって、拷問?


「あの、みなさん、なにか誤解していませんでしょうか」


 私がやっていたのは肩もみだ。

 お兄ちゃんにも、よくやってあげてたから得意なのだ。


「もりもりさんの胸には触っていませんからね。肩を揉んであげてたんですからね。胸が大きすぎて、肩が凝るそうなので。とても重そうなんです。これじゃ、肩も凝りますよね」


 映像がないゆえ、誤解を生んでしまうこともあるようだ。

 さすがの私も、女性の胸を直接触って揉むなんて勇気は持っていない。

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