第25話 謎の研究室を探せ
視聴者によるリビングデッドの解析、および現在私がいるこの空間の解析結果を教わった。
私が見ているこの廊下の前と後ろはつながっている。
空間が歪んで廊下の前後がつながっていたから、いくら歩いても同じ場所で変わらなかった。
27.1828m
それが廊下の正確な長さだ。
50mくらいあったと思ったけれど、空間の歪みがもたらす錯覚で実際の長さより長く感じていた。
フレイムドラゴン・ロードと戦った212〜215層に比べ、この216層はとても狭いことが判明した。
これはダンジョンにおける階層の中でもっとも狭い空間とのことだ。
空間を歪めるためのエネルギーが膨大なため、これ以上の広さを維持できないからだそうだ。
この空間の歪みはリビングデッド、その正体としては
私がいるこの場所こそ、複素数空間の中であり、それはオイラーの公式によって導かれ……フーリエ級数展開がうんたらかんたら……であり、つまり、ここは、ようするに、中学2年生の私でも分かるように説明すると、すなわち不思議空間だということだ。
詳しくはこのダンジョンから脱出し、高校を卒業し、私の将来の志望先である〝けいおー〟大学に入学してから勉強すればいい。まだ、けいおー、とか難しい漢字は書けないけれど、今は中学生だからいいのだ。
……ということで、壁に神王の長剣で傷を入れることで、空間を維持することができなくなり、複素数空間に亀裂が入る……ということはわかった。
中学2年生にもよくわかるように教えてくれてありがとう……。視聴者のみんな……。
それで、どのように壁に亀裂を入れたらいいのかはわかったのだけれど、そのままリビングデッドと戦っても、HPに虚数値を持つモンスターにはダメージを与えることができない。
神王の長剣では実数値のダメージしか与えられないからだ。虚数値のダメージを与える方法を探さなければならなかった。
ここはお城の廊下をイメージして作られている。
どこかに部屋の入口となる扉があるはずなのだ。
そして、そこは魔法の研究室となっている。
人類が死霊と戦うのは初めでではない。77層では
そのときは手探りでダメージを与える方法を模索した。今回はリビングデッドから情報を引き出した。
リビングデッドの正体である
まずはこれが最初のミッションだ。
「つなぎ目はどこにあるのでしょうか?」
廊下の壁を神王の長剣でこつこつ叩きながら歩く。
研究室の入口は、無限廊下となっているつなぎ目にあるはずとのことだった。
そのつなぎ目を探さなければならない。
こつーん、こつーん、と剣を当てていくと、音の周波数が変わっていくため少しずつ高い音に変わる。
そしてある地点を過ぎると今度は低い音へと変化した。
この音の変化の境目に研究室の扉があるはずだった。
慎重に音の変化の境目を探る。こつこつこつ、と剣を壁に当てていたが、ある場所で突然抵抗がなくなり、剣がすっと壁の中に入った。
壁に差し込まれた剣を、鍵穴に差し込んだ鍵を回すイメージで90度捻る。
すると、壁にはまるで突然映像が現れたかのように扉が出現した。
私は扉の取っ手を握り、回しながら手前に引く。
鍵はかかっておらず、そのまま扉は開く。
開いた扉の中へと足を踏み入れると、そこは魔法の研究室といった部屋となっていた。
部屋は10畳ほどの広さで、三方の壁は天井までが本棚となっている。どの本棚も上までびっしりと本が詰まっていた。
中央には机が置かれ、机の上には魔法道具と思われる小物が散乱している。インク壺とペンがあり、書きかけのメモがたくさん散らばっていた。
書かれた文字はどれも読めないし、見たことのない文字だった。
これらのメモから情報を得ることは難しそうだった。
リビングデッドと戦う前に、奴にダメージを与えられる手段を探さなければならない。なんとしても、ここでその方法を見つけなければならなかった。
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