第26話 死霊を倒す方法
かつて人類は77層において
その時も当然苦戦した。問題となったのは、死霊である
方法としては死者による攻撃。
まず選んだのはゾンビやスケルトンなどのアンデッドの召喚だった。
無数のアンデッドを呼び出し、攻撃を行った。
ダンジョンで経験値を得て地上の事務局でレベルを上げると、能力の傾向によりファイター、マジックキャスター、クレリック等のクラスに分かれていく。クラスはLV20以上でないと選べないため、今の私には無縁の話ではある。
アンデッドを呼び出すためにはマジックキャスターの中でも死霊魔術に長けていなければならない。
今回はこの方法が難しそうだった。
別の手段としては、武器に聖属性を付与することだ。
モンスターからは聖水と呼ばれるアイテムが入手できることがある。
また、聖水はアイテム生成で作ることも可能だった。
武器に聖水を垂らすことで一時的にアンデッドへの効果があった。
つまり、即席でつくった聖属性の武器だ。
それでも、効果は一時的であり、攻撃力も高くない。
アンデッドの召喚にせよ、聖属性の武器を使うにせよ、やはり物量戦となり、大人数により戦うことになった。
今は私一人しかいない。
この状況でどうやって戦うのか。
とりあえず神王の長剣は聖水を使用しなければダメージを与えられない。
逆に考えれば、聖水さえあれば……
この部屋には本棚の他に、扉付きの棚があった。その中に探していたものを発見した。
研究室内をくまなく捜索し、やっと見つけた1本の小瓶。まさにそれが聖水だった。
耳にはめているイヤホンから視聴者の声が聞こえてくる。
――やっぱりあったな
――これなら奴にダメージを与えられる
――大量の聖水でリビングデッドを倒そう
「でも、ここには一本しかないですよ」
不安そうに言う私に、イヤホンから聞こえてくる視聴者の声。
――その一本はハルナっちの剣に垂らして聖属性の武器にする
――あとはそれをたくさん作るしかない
――どうやって作るんだ?
――そこが問題だよな
「仮に、聖水がたくさんあったとして、それをリビングデッドにかけるのですか? 瓶を投げつけて割るとか?」
私が問いかけると、
――そうではなくて……
視聴者たちとの相談により、今回は少し変則的な戦い方をすることになった。
真っ向勝負では勝ち目がない。それほどにリビンデッドは強かった。
高い知性を持つ存在。それを逆に利用する。
私に対する間違った知識を与え、リビングデッドをコントロールする。
ここで、フレイムドラゴン・ロード戦で得たアイテムが生きてくることになった。
大量のアイテムはすべて聖水の生成に使ってしまう。
聖水は武器に付与するだけではなく、リビングデッドを聖水に沈めてしまう計画だ。フレイムドラゴン・ロードをマグマの海に沈めたように。
そんな作戦だった。
これがうまくいくのかどうか。
すべては私にかかっていた。
――フレイムドラゴン・ロード戦で得られたアイテムを全部聖水の生成にまわすつもり
「なるほど、大量の聖水でリビングデッドを溶かしてしまおうということですね」
――そうだね
「でも、どうやって? ダンジョンデバイスはリビングデッドが持っているし。聖水を作れるのですか?」
――大丈夫、もうリビングデッドが作りはじめた
なぜリビングデッドが聖水を作るという判断をしたのか。
それはリビングデッドに誤った情報を与えたからだった。
「仮に大量の聖水があったとして、それをどうやって使わせるのでしょう?」
――そこはハルナっち次第
視聴者と打ち合わせをしているときだった。
部屋には異変が起きていた。
私が開けて入ってきた扉、それがいつのまにか消えていた。
「ちょっと待って。扉が……。あれ……?」
――ん?
視聴者はデバイスがないからこの部屋のことは見えていない。
私がもっと早く気づかなければいけなかったのだ。
「扉が消えている……。閉じ込められた!?」
その時、ガシャンという音とともに壁からいくつもの手が生えてきた。
つづけて、西洋の鎧が姿を表す。
壁の四方からたくさんのリビングデッドがこの研究室内へと入ってきた。
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