再鑑定と闇魔法
「そうだ、ノア!鑑定だ!!お前のステータスだ!」
大きな声で叫んだ。
さっきまで撫でられていた手に力がこもり、頭をガシリと掴まれ、ぎりぎりと力を込められる。
だんだん締め付けが強くなってきて命の危険を感じたので、俺は慌てて体を身体強化して手から抜け出す。
そんな俺の格闘にも気づいていない様子で、ケレンさんは俺の頭に手をかざした感じ。さっき鑑定だ、鑑定だと言っていたから、たぶん俺のステータスを見るつもりなんだろう。
ケレンさんの魔力が目に集まっていくのが見えた。多分スキル『魔力制御』のお陰で、俺は魔力を見ることができる。
『
目に動いていた魔力が集まり終えると、ケレンさんはそうつぶやき、じっと目をつぶった。頭の中に流れ込んできた情報を読み解いているようだ。
というかわざわざ鑑定って言うんだね。別に魔力の扱いが云々という問題でもなく、鑑定が使える人なら、言わなくてもできるはずなのだ。
他の魔法とかはどうかわからないけど、鑑定、つまり身体強化に関しては話していることとそれをやっていることはほとんど関係ないからね。
「おおぉ!?ノア、何だこのステータスは!?」
じっと思考にふけっていると、ケレンさんの大きな声が部屋中に響き渡った。
どうやら俺のステータスを見終えたようだ。ステータスは直接鑑定した人の頭に流れ込んでくるので、鑑定した本人以外は見ることはできない。
目を白黒させて、俺の周りを右往左往してい
るので、少し不安になる。
別に魔香以外の人を不安に指せるようなものはないと思うけど。
「ノア!お前本当に2歳児か?!」
誰もが認める正真正銘の2歳児ですよー。
……体だけはね。
というか近頃ケレンさんに疑われることが多い気がする。
「魔力のステータスだけなら、C級冒険者にも匹敵するぞ!っあと、何だ光魔法と闇魔法ってのは!?正反対じゃねえか!!」
どうやら俺のステータスを全部見終わったわけじゃないっぽい。一つずつ読み取っているのか、何度も驚いている。
というかやっぱり光魔法と闇魔法の構成は他人から見てもおかしいんだね。
当たり前のように追加されてるから、疑問に思ってるのは俺だけかと思っていたが違ったっぽい。
ケレンさんが大慌てしていたが、俺の頭に手をかざしたまま、――鑑定を続けてかけていたのだと思う――しばらくすると、だんだんと落ち着きを取り戻してきた。
「お前すげえな!」
そしてニヤッと笑いながら親指を立てた。
いやそんなんでいいのか。思わず心でツッコミを入れてしまった。
…もしかしてケレンさんって脳にまで筋肉が詰まってるとかいう例のアレ…?
遠回し?に失礼なことを考えていると、その事に幸い気づいていない様子のケレンさんが話し始めた。
「ノア、お前の闇魔法って魔香の付属スキルらしいぞ。光魔法はお前の固有属性だな!魔法は貴重だからなあ。お前は運が良い。」
だから光魔法と闇魔法というおかしな構成だったのか。疑問が氷解して、なるほどと思う。
俺が鑑定しても現れなかった結果だ。ケレンさんの鑑定のレベルが高いから、見れたのだろう。
「でも、じゃあ魔法が付属してくる魔香って結構いいんじゃないですか?なんでハズレスキルって?」
その疑問は氷解したが、新たな疑問が浮かび聞く。
魔法が貴重なら、なんで魔香が外れスキル呼ばわりされるのかがわからなかったのだ。
確かに大きなデメリットはあるけど、闇魔法で倒せばいい。普通のスキルくらいの扱いはしてもらってもいいと思う。
「俺もこんな付属スキルがあるとは知らなかったが、あったところで闇魔法は魔獣にほとんど効果がねえし、闇魔法ってのはあまり人族の印象が良くねえんだ。闇は人族の敵、魔族の象徴だからな。」
ケレンさんはその疑問にそう答える。
まあ確かに闇っていうのはあまり印象が良くないのかもしれない。
「えっ、じゃあこれは…」
それなら俺が闇魔法を持ってるってことは…。
「ああ、人に見せないほうがいいな。過激なやつには魔族だと言われて殺されるぞ。」
…絶対隠すことにした。闇魔法スキル持ってるだけで殺されるなんてゴメンだ。俺の記憶では多分人族に決まってるし。
「そうだな、隠すなら隠蔽スキル系がいいかもな。」
真っ青になった俺を見、ケレンさんは神妙にそうつぶやいた。
普通のケレンさんなら笑われそうなのに、妙に神妙なところが不安を掻き立てる。やっぱり過激な人って怖いんだ…。
更に真っ青になった俺をみながら、ケレンさんは、堪えきれないとでも言うように大きく吹き出した。
「ぶははっ、そんなに怖がるな!それについても稽古をつけてやる!」
ケレンさんはそれから思いっきり笑いながら――思いっきり睨まれながら、誰にかは言わなくてもわかるだろう――そう大声でいった。
「よし!!さっきは出鼻をくじかれちまったが、今度こそ稽古を行うぞ!ノア、ついてこい!!」
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